【ネタバレ感想】口裂け女 VS カシマさん

ホラー系映画の簡単な紹介と感想です。
よりによって一つ目にこの邦画をチョイス。パッケージ怖いので注意。

口裂け女 VS カシマさん(2016年、日本)

映画概要

口裂け女 VS カシマさん

  • 公開年 2016年
  • 製作国 日本
  • 監督  浅沼直也
  • 出演  八重子:永尾まりや
    省吾 :根岸拓哉
    口裂け女 :たけうち亜美
    カシマさん:古里友美
    殺される少女 :星野音羽, 影澤里南
    殺される男  :カラス

独断による評価

恐怖度    ★☆☆☆☆
嫌悪度    ★★★★★
耽美度    ★☆☆☆☆
愉快度    ★★☆☆☆
深読み度   ★★★★☆
また観たい度 ☆☆☆☆☆

「口裂け女さんのスマートで健気な頑張りを楽しもう」

ネタバレあらすじ

別れたカップル・八重子と省吾が未練がましく話をしているそのとき、二人の現在の恋人からそれぞれに助けを求める電話がかかってくる。
不審に思いながら各々様子を見に行ったところ、二人とも惨殺されていた。

犯人と思われるのは鎌を持った赤い服の女と、下半身がなく這いずり回る女。
二体の化け物は何の説明もなく八重子と省吾に襲いかかってきた。
追われたからととにかく逃げる二人。
もう無理と諦めたりやっぱり頑張ろうと思い直したりしながら、いつしか恋人だったころの想いを取り戻していく。

ビルの屋上に追い詰められた夜明け、二体の化け物は互いに殺し合い、消滅したかのように思われた。
直後、化け物の意志が取り憑いたかのように戦いを始める八重子と省吾。
そしてロマンティックなキッスを交わす。

愚痴&ツッコミ&深読み

独断による評価の通り、「鑑賞中にうわあ…と死にたくなった感情を、深読みすることで理屈づけてとりあえず処理した。でも二度と見ない」という感じです。

恐怖度:化け物としての造形を見せてくれない

パッケージはえらい怖い感じですが、劇中ではこんなに顔が映りません。
そのためビジュアル的な怖さがいまいち分からない。

口裂け女*1さんは挙動不審の女としては確かに怖いですが、口が裂けてるところがあまり映らないので、お化けというより鎌を使うただの殺人鬼のように思えます。
「ワタシキレイ?」というおなじみの問答も一切ないので、タイトルを知らないと口裂け女と判別できるかどうか怪しいです。

カシマさん*2に至っては下半身がないのが一番のビジュアル的な怖さなのに、予算の関係なのか下半身が「映らない」せいで、やっぱりどのへんがお化けなのかよく分からない。
そしてカリスマ的にもフィジカル的にも、口裂け女さんとタメを張るには少々役が大きい気がします。
ぶっちゃけ出てこなくても話的にはほぼ困りません。

嫌悪度:排他的な恋愛脳がうっとうしい

私は元々恋愛映画が苦手です。
感情移入ができないので、他人のよく知らない内輪ネタを見せられているような気がして「どうでもいいんですけど」と思うんです。

そんな私の思うところ、これは実はホラー映画ではなく恋愛映画です。
間違いない。それはもう典型的な。今日、恋を始めます的な。

恋愛というのは当事者二人の関係性であり、基本的には当事者以外が首を突っ込むものではないとされていますよね。

八重子と省吾はまさにそんな、「二人だけの世界」を創り出しました。
この物語は八重子と省吾が恋人の絆を取り戻していくドラマ。
二人を襲う化け物や変態、犠牲になった友人や他人は、二人の恋愛ドラマを盛り上げるためにお膳立てしてくれたのです。
(詳細は「深読み度」で後述)

ところが主人公の二人は、「二人の恋愛関係」以外のキャラクターを何にも持ってません。
浅はかな行動を繰り返すために魅力もありません。
よって恋愛感情に共感できる人であっても、この恋愛ドラマは見るに堪えないはずです。

つまり、何が嫌悪かというと、「口裂け女さんとカシマさんをおめーらのどうでもいい恋愛ドラマのために利用すんなや!」と思っちゃうということなのでした。

そういう嫌悪感をかき立てると言う意味では確かにホラーと言える……のか……

耽美度:でもうっとおしい

ファストフード的なC級ホラーのため、芸術性を芯とはしていません。
一応、ラストシーンで戦う二人と血まみれのキッスのあたりの演出はロマンティックさを感じました。

愉快度:口裂け女さんの頑張り

必見シーンは中盤の口裂け女さんとの柱コント
思わずふふっと笑いがこぼれます。

そしてまともに戦えば負けると思えない*3のに、空気を呼んでカシマさんと相討ちになってあげる口裂け女さんマジ天使。

深読み度:これはホラーじゃないのだ

この物語は八重子と省吾が幸せにヨリを戻す恋愛ドラマであり、化け物と人間とシチュエーションはドラマを盛り上げるために都合良く利用されている」という説を私は強く推します。
無理矢理の根拠もあるもんね!

  • 化け物に殺されるのは二人の今カノ・今カレ
    まず事件の始まりが恋敵の惨殺なのです。説明するまでもなく、やつらは八重子と省吾がヨリを戻すためには邪魔な存在ですからね。
  • 口裂け女とカシマさんは理由もなく二人をずっと追い続けてくれる
    通常、都市伝説の化け物って何らかの基準でターゲットを選んでいるはず*4なのですが、これに登場する口裂け女とカシマさんは多くを語らず、とにかく八重子と省吾を狙ってきます。
    それというのも、「化け物に追われている」という非日常かつ危機的状況が、互いの大切さを改めて感じるきっかけになるからでしょう。
  • 八重子と省吾はどんなに追い詰められても絶対殺されない
    殺されません。一度完全に追いつかれて捕まってたくせに、何か知らないですが口裂け女さんは二人を見逃します。完全に居場所が分かっているだろうと思われる状況でも、とどめは刺さずに柱コントに応じてくれます。そもそもものすごい速さで追ってきてるはずなのに、ガチの徒競走状態になると一向に追いつきません。口裂け女さんが速度を調整している姿が目に浮かびます。
    それはもちろん、主人公たちが「幸せに」ヨリを戻すのが目的だからです。死ぬわけありません。
  • 性的関係を意識させるために突然登場する通りすがりの変態
    中盤、助けてくれたと思った車の運転手が実は変態で、八重子を襲いますが、もちろん助かって再び逃げ出します。この間、口裂け女さんとカシマさんは画面外で待機してくれていました。
    この事件に必然性があるとしたら、省吾に「八重子も女なんだ、守らないと」と思わせ、八重子に「やっぱりあたし一人じゃダメ」と思わせることでしょう。
  • 突然キッスするラストシーン
    物議を醸すラストシーン。
    ですがこれを恋愛映画だとみればまったくもって自然な終わりです。二人は障害を乗り切り、互いにぶつかり合い、そして幸せになったのです。よかったですね。

また観たい度:……。

どう考えても他の映画を見ます。

ただし、私は監督も脚本家も役者も憎みません。
憎むとしたら八重子と省吾です。お前らうっとおしいぞ!

今回の記事はここまで。


*1:子供時代の私が最も恐れていたのが彼女でした。マスクをかけ、問答をして、すごい速さで追いかけ鎌で襲ってくるという都市伝説のお化け。よく考えるとお化けじゃなく殺人鬼である可能性は充分にあります。

*2:自分の下半身がないため、人の脚を奪っていくとされる都市伝説のお化け。私が知ってるカシマさんは兵隊のおじさんなのですが、ぬ~べ~に登場するみんなのトラウマ「てけてけ」とイメージが混ざったのか、カシマレイコという女の子だとも言われるようです。つまり結構新参のお化け。

*3:カシマさんは背が低いので通常攻撃が当たらない可能性があります。こちらからの攻撃手段が下段攻撃に限られると考えれば、意外と厄介かもしれませんね。

*4:噂を聞いちゃったとか、質問に間違った答えをしたとか

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