ディズニーチャンネルオリジナルムービー:ディセンダントの今更感想。
第3作の日本放送が間近になったということでとりあげましょう。
特に劇中歌に着目していきます。そしてこの記事はとても長いです。
概要とキャラ紹介はネタバレなし。
シナリオと感想からはネタバレありです。
ディセンダント(2015年、アメリカ)
ディセンダント(Descendants)
- 公開年 2015年
- 製作国 アメリカ
- 監督 ケニー・オルテガ
- 脚本 ジョーサン・マクギボン、サラ・パリオット
- 出演 マル:ダヴ・キャメロン、イヴィ:ソフィア・カーソン、カルロス:キャメロン・ボイス、ジェイ:ブーブー・スチュワート、マレフィセント:クリスティン・チェノウェス
概要
ディズニーチャンネルで制作されたオリジナルムービー。
ディズニーヴィランズ(ディズニー映画に出てくる悪役)の子供たちを主役にした物語。
そのため色んなディズニー映画のキャラクターが登場するファンには嬉しい(?)映画でもあります。
ヴィランの子供が主人公ということで、ファッションも音楽もダークでゴスチックなモチーフが多く非常にかっこいい。それでもシナリオはディズニーらしさ全開なのである意味安心して見られます。
ミュージカル映画ですので、ケニー・オルテガ先生の指導するクールな歌とダンスにも注目しましょう。
あらすじ
おとぎの国オラドンには、数々のディズニー映画で描かれたおとぎ話の登場人物たちが平和に暮らしていました。
その一方、物語のヴィラン(悪役)たちはロスト島に隔離され、魔法を使えないよう封印されひっそりとした生活を強いられています。
そんなヴィランの子供たちを哀れに思ったのがオラドンの王子:ベン。
親が悪人でも子供も同じとは限らないと信じるベンは、ロスト島に住むヴィランの子供たち四人をオラドン高校へ招待します。
それはヴィランである親たちにとって絶好のチャンス。
島から脱出することを企む親から、子供たちはオラドンの魔法の杖を奪うよう指示されます。
オラドンでの新たな生活、親からのプレッシャー、そして自分自身の価値観と、子供たちはどう向き合っていくのでしょうか。
キャラクター
まずはメインキャラクターを紹介。
メインのヴィランズ二世は4人なんですが、主役のマル、親友のイヴィに対して男子2人はオマケ程度かな。
マル(Mal)
眠りの森の美女のヴィラン:マレフィセントの娘。
大物ヴィランであるママの背中を見て育ち、彼女自身も「立派な悪者になること」をアイデンティティとしてきました。
が、やることといえば落書きや子供への意地悪程度。ただのちょっとワルなティーンじゃない?
ワルをよしとしながらもきわめて真面目で責任感が強く、主人公らしい性格だといえます。
魔女の血をひいているためか、四人組の中で唯一魔法を操れます。
紫と緑がモチーフ。マルは紫が大好き。
演じるのはディズニーチャンネルのスター、ダヴ・キャメロン。
「リブとマディ」1。では振り切ったボケをぶん回してましたが、マルは割とシリアスなキャラで雰囲気違いますね。顔芸もなし。
マレフィセント(Maleficent)
眠りの森の美女に呪いをかけた魔女その人。
強大な魔法の力を持ち、島に住むヴィランズの中でも一目置かれている存在です。
娘のマルには悪こそ至高だと常日頃から言い聞かせているようです。ちゃんとかわいがっているようにも見えますが、そこは悪者、娘なんかよりも自分のことが最優先。
非常にお茶目で愛嬌があり存在感バツグン。歌も最高!
イヴィ(Evie)
白雪姫のヴィラン:イーヴル・クイーンの娘。
自分の美しさにうっとりしちゃうのはママ譲り。
クイーンの娘なので一応プリンセスであり、マルよりもレディっぽいコスチューム。
ママから借りた魔法のコンパクトミラーで「鏡よ鏡」と千里眼することができます。
おしゃれをするのが趣味であり特技。メイクと裁縫が達者で、ドレスをデザインして作っちゃうくらい。
マルと違って悪いことをするのにこだわりは持っておらず、美しさの追及が第一。
マルとは一番の親友で、自分を押し殺すタイプのマルに対してイヴィは自分の気持ちにとても素直。
実は「ワル」な部分が非常に少ないキャラだったりします。すごく友達思いだし。
演じるのは脚が長すぎるソフィア・カーソン。
青いロングヘアとティアラは優雅な印象なのに、ダンスはキレキレというギャップがステキです。
イーヴル・クイーン(Evil Queen)
彼女の名称を知ってる人は少ないでしょうが、白雪姫に毒リンゴを食べさせた継母といえば有名中の有名。
アニメからそのまま出てきたみたいな似顔絵にしやすいお顔をなさってます。
マレフィセントとはざっくばらんな親友という雰囲気ですね。
世界で一番美しいのは自分、イヴィはその次くらいかしら。
そこ、「美しい……?」と首をかしげてはいけない。
ジェイ(Jay)
アラジンのヴィラン:ジャファーの息子。
軽やかな身のこなしで島中を駆け回ってモノを盗むのが日課。盗品はパパが売りさばきます。
典型的なティーン男子という感じで、マルみたいに難しいことをごちゃごちゃ考えず、楽しいことやってようぜという単純な脳みそ筋肉っ子です。
背が高く筋肉モリモリなスポーツマンなもんですからオラドンでもモテモテ。
ジャファーは魔法使いで頭脳派のはずなんですがなぜかジェイは肉体派。
演じるのはノースリーブが似合いすぎるブーブー・スチュワート。
彼のあの人懐っこい笑顔はどう見てもワルに見えないぞ。スーサイド・スクワッドのウィル・スミスみたい。
ジャファー(Jafar)
アラジンで王国を乗っ取ろうとしたジャファーその人。
アニメでは怜悧な官吏で非常にクールなキャラなのですが、この映画では冴えないおじさん。
ジェイに盗ませた品々を売って暮らしているようです。
マレフィセントにはいまいち頭があがらない様子。
カルロス(Carlos)
101匹わんちゃんのヴィラン:クルエラの息子。
犬という恐ろしい生き物に怯えるちょっと臆病な男の子。
四人の中では年下なのか、子供らしく素直にお菓子に喜んだりゲームに喜んだり得体のしれないものに怯えたりといった天真爛漫な言動が見て取れます。
ジェイとは仲良しですが男子ノリでからかわれることもある。
普段母親にこきつかわれているため、親を怖がる・嫌がる気持ちは四人の中で一番強いみたい。
一方で自分が何をしたいのかはっきりわかってはいないようです。
演じるのはそばかすがチャーミングなキャメロン・ボイス。
得意の顔芸もしっかり披露してくれます。「ゲーマー伝説」2も好きだった。
【追記】
キャメロンは2019年の7月にご逝去されたそうです。
新たな彼を見られないのは残念ですが、彼が遺したものは多くの人に元気と癒しを与えてくれています。
彼と彼のご家族・ご友人に心より感謝します。
クルエラ(Cruella)
101匹わんちゃんでダルメシアンの毛皮を剥ごうとしたクルエラその人。
息子のカルロスに犬は恐ろしい生き物だという偏見を吹き込み、召使のようにこき使っています。
子供への接し方で言うと四人の中で一番ワルである。
この映画ではそんなに存在感ないです。唯一普通の人間だしね。
ベン(Ben)
美女と野獣の息子であり、オラドンの王子。
マルたち四人をオラドンに招いたのは次期王としての彼の最初の政策だともいえます。
マルたちが悪人ではないと心の底から信じている、まごうことなきグッドガイ。
嫌味も偏見もなく、おそらくオラドンで唯一一番の善人でしょう。
おもしろみのないキャラと見せかけて突然ファンキーな歌とダンスを繰り出してくるぞ。
演じるミッチェル・ホープは背の高いしゃんとした姿勢も甘いマスクがまさに王子様。
普段の声は意外と渋いですが、歌がうまくて表現力がすごいのです。手足が長いせいか踊るとちょっとおもしろい。
シナリオと感想(ネタバレあり)
シナリオをたどりながら感想をつらつら書いていきましょう。
シナリオ部分は太字、普通の字体は私のコメント。
歌の登場するところは英語歌詞と和訳歌詞の解説も。字幕翻訳では字数の関係で省略されちゃう箇所がありますので、その辺補足もしていきます。
※英語歌詞はGoogle検索から、日本語歌詞は字幕放送からの引用です。
プロローグ:ベン王子の提案
冒頭、マルが世界設定を軽く説明してくれてからベン王子のシーンへ。
ロスト島に親のヴィランズともども閉じ込められた子供たち。
彼らをオラドンに招こうというアイデアを、ベンは両親である美女と野獣(ベルとビースト)に打ち明ける。
懐疑的なビーストに対し、ベルは「あなたも変われたでしょ」と最もな一言。確かに美女と野獣の野獣こそ、bad guyからgood guyに転向した代表キャラだよね。
で、ベンの「特に心配している四人」がクルエラ、ジャファー、イーヴル・クイーン、そしてマレフィセントであるという。何を基準に選んだかは聞いてはいけない。
マレフィセントは最も邪悪だと思われているらしいけど、そんなに悪いことしたっけ?
「子供に罪はない。自由を与えるべき」というベンの強い意志を両親も認め、四人を招くことに決定。
ちなみにベンが何をきっかけにそんなことを思い立ったのかは描かれません。オラドンに同じ考えを持つ人はどうも誰一人いないっぽいので、ベンは本当にgood guy魂の権化だと思われます。
すごく細かい話だけど、この映画(というかディズニー関係全体として)では「ヴィランズ」が一つの言葉として使われてます。だからマレフィセント一人を指してても「ヴィランズ」。うーん違和感。なんで「ヴィラン」っていう言葉にしなかったんだろ。
ヴィランズの子供たち
さて、ベン王子が温かい目で見つめるロスト島では今日も子供たちが悪いことにふけっていました。
紫と緑のクールな衣装に身を包むマルが初登場、お気に入りの落書きは”LONG LIVE EVIL(悪よ永遠なれ)”。
やんちゃな名曲”Rotten To The Core“でつかみはバッチリ!
Rotten To The Core(ロッテン・トゥ・ザ・コア:骨の髄まで腐ってる)
They say I’m trouble They say I’m bad
“悪い子”だとか 人は言うけどThey say I’m evil, and that makes me glad
“邪悪”は うれしい褒め言葉
ワルと呼ばれりゃ喜んじゃう(”that makes me glad”)と歌うのはマル。
人と肩をぶつけても気にしない、ワルですね~。
“makes me XX”っていうのは便利な言い回し。makes me sad, makes me happy, makes me upset…どんな気分になるのか簡単に表現できる。
A dirty no-good Down to the bone
悪にまみれて 骨まで真っ黒Your worst nightmare Can’t take me home
どんな悪夢にもビビるもんか
続いてジェイの登場。さっそく腕の筋肉を見せつけてきます。
梯子の奥の壁にはこっそりレッド・ジーニー(ジャファーの変身した魔人)の落書きが。
“take me home”は「お家に連れて帰る」。ビビッて逃げ帰ったりしないってことですね。ジェイはタフさを主張してます。
So I’ve got some mischief In my blood
この体は悪に染まってるCan you blame me? I never got no love
愛なんて知るはずない
お次はイヴィ、食卓の上をヒールで歩いちゃうイーヴル・プリンセス。
セクシーな歌声と挑発するような身のこなしから目が離せん。
ちなみにイヴィはmischeif(悪さ)からは割と遠いところにいます。いい子なのだ。
“Can you blame me?”は省略されてますが、意味としては「あたしを責められるの?」「あたしが悪いって言うの?」って感じか。
“never got no love”は”never”と”no”で二重否定になってるんですけど、肯定ではなく単なる否定の強調。愛なんてあるわけじゃないじゃないっていう。
They think I’m callous A low-life hood
ただの不良だと思うなよI feel so useless Misunderstood!
そんなヤワじゃない 見くびるな!
最後はカルロス。何気に人のハンカチやリンゴを取り上げてます。
“callous”は「無情な」だけどカルロスの名前と韻を踏んでんのか?
low-lifeもhoodもチンピラとかワルって意味ですね。
“I feel so useless”はちょっと文脈の解釈が必要。「”callous”とか”low-life hood”程度だとしたら”useless”じゃねーか、そんなもんじゃない」ってところかなあ。
ちなみにカルロスは人間らしい感情にあふれてます。”I feel so useless”の方が本音っぽいぞ。
Mirror, mirror on the wall
鏡よ鏡 鏡さんWho’s the baddest of them all
この世で一番 悪いのは誰?Welcome to my wicked world Wicked world
どうぞ いらっしゃい キケンな世界へ
鏡よ鏡はいわずとしれた有名なフレーズ。
“wicked”は言ってみれば”evil”と同じ「悪い」って意味だけどニュアンスの差はあるらしい。ぐぐってください。
でも「ウィケッド・ワールド」って語呂がいいよね。
I’m rotten to the core, core Rotten to the core
根っからのワルさI’m rotten to the core, core Who could ask for more
腐り切ってて 救いようがないI’m nothing like the kid next–like the kid next door
子どもと思って なめるなよI’m rotten to the core, I’m rotten to the core
だって俺たち 体の芯まで――I’m rotten to the core.
腐り切ってる
ここでたいへんクールなサビ。コァ!コァ!
ジェイとカルロスのラップの裏でマルとイヴィがメロディラインを歌ってます。ソフィア・カーソンのソロミックスではメロディラインがわかりやすいぞ。
四人が合流して洗濯場で暴れてますね。
水桶に顔突っ込んだダンサーが水しぶきとともに顔を上げるカットはちょっと思わせぶり(2でも冒頭の歌で似たようなシーンが)。
Call me a schemer Call me a freak
“ずる賢い”とか 人は言うけどHow can you say that? I’m just unique
やめてよね 人と違うだけ
“scheme”は悪だくみ、”freak”は奇人変人。
“I’m just… unique”って歌うマルの顔がキュートですね。
What, me? A traitor? Ain’t got your back?
信用ならない 裏切り者だって?Are we not friends? What’s up with that?
友達だろ? そりゃないぜ
“get your back”は背中を預けるってことで、背中を預けられない信用できないやつってこと。
ここで水差しをパクって磨くジェイ。アラジン感を出してます。
So I’m a misfit So I’m a flirt
はみ出し者で 浮気者なのI broke your heart? I made you hurt?
傷ついたなら お気の毒様
男の子に思わせぶりな視線を送るイヴィ。
ナンパキャラを思わせる歌詞ですが、イヴィは意外と硬派なんですよね。
The past is past Forgive, forget
過去のことは水に流せよThe truth is You ain’t seen nothing yet
後悔するのは これからだ!
ここの歌詞はロスト島のヴィラン代表って感じでカッコイイ。
“you ain’t seen nothing yet”は「まだ何にもしてないも同然」=「これからもっとすごいことをしてやる」ってところ。
次の間奏でダンサーたちとストリートでダンス。
マルの悪い表情がたまらんですね。彼女のここまで生き生きした邪悪な顔はここが最初で最後……かも。
っていうかイヴィがあのエレガントな髪型でヘドバンするのよくないですか?ねえねえ。
サビがもっかい来たら終曲。
マルは前髪フッてして決める。
そこに、物騒な音楽とともにマレフィセントが登場して周りの子供たちは逃げていく。
身長低めでお茶目なしゃべり口調のママですが、存在感バツグン。コスチュームは黒ではなく紫を基調にしています。
「意地悪と本当の悪とはちがうの~♪」と軽い口調で重要なことを言ってます。
マレフィセントはマルに自分のような立派な悪者になってほしいと日ごろ言い聞かせているようです。
マレフィセントにオラドン高校に行けと命じられますが、マルたち四人は寮でいいこちゃんたちと暮らすなんてとぶつくさ。
マレフィセントはオラドンでフェアリー・ゴッドマザーの杖を奪えば世界征服できるんだとマルに言いきかせます。
緑の目でにらみ合う母と娘。マルの方が根負けして結局ママの指示に従うことに。
イーヴル・クイーンは立派なお城を手に入れるためにイヴィを行かせる気満々。イヴィは王子様に憧れる顔をここでは見せてますが、はてさて。
一方、クルエラは便利な息子を手放したくない。オラドンにはおっかない犬がいると言ってカルロスを脅します。(カルロスが犬を怖がるのは「何かで読んだ」かららしいけどたぶんママ)
ジャファーもジェイの盗品を糧としてるもんですから行ってほしくない。拾ってきたランプに飛びつく様がなんともみじめである……。
そんな親たちにマレフィセントが一喝(ママの後ろに隠れるカルロスがかわいい)。
仇に報い悪が栄える好機を手にすべく、子供たち四人を送り込むことに決定します。
マレフィセントは妖精の杖を探すための魔法の本をマルに預け、しくじるなと釘を刺すのでした。
ちなみにマレフィセントは「四人で行け」と言ってるものの、どうもマル以外の子供たちには興味ゼロ。視線すらやりません。マルと自分と二人で世界征服しようと言ってるのがおそらく本心で、一緒に住んでる(おもしろい)三人も用済みとなればきっと切り捨てるのでしょう。おお、悪よ。そしてあるいはマルすらも……。
オラドン高校へ
サングラス男が運転するリムジンに乗ってロスト島を出る四人。
車内に用意されたお菓子に男子二人は夢中。それにしてもジェイの髪(たぶんブーブーの地毛)はツヤツヤである。
しょーもないやりとりするジェイとカルロスは癒し担当。
お化粧直ししてくるイヴィを振り払うマルは、一人作戦を練っている。この時点でマルだけは「妖精の杖を奪う」という任務に真剣に取り組んでいるのです。ママの緑の目が見ているから……。
リムジンはロスト島のバリアを抜け、海にかかった魔法の橋を渡ってオラドンへ。
オラドン高校では盛大なお出迎えが待っていました。
校長のフェアリー・ゴッドマザー、王子のベン、そして王子の恋人であるオードリー。
気まずい顔合わせへの態度は四者四様。マイペースなジェイに、チョコまみれできょとんとしてるカルロス、“王子様”のベンにうっとりするイヴィ、そしてターゲットであるフェアリー・ゴッドマザーの様子を探る抜け目のないマル。
ベンは四人に屈託のない握手を求めつつ、どうもマルのことが気になる様子。
オードリーの方は第一印象から既に100%の悪意を表出しています。
何もしゃべってないのに感じる悪意、すごい!
なにしろオードリーのママは眠れる森の美女のオーロラ。仇であるマレフィセントの娘を温かく受け入れるわけがないんですね。
マルとオードリーのにこやかな嫌味合戦の後で、学校を案内してもらうことに。
嬉しそうにぴょこぴょこついてくイヴィがかわいいのなんの。
学校前の噴水にはビーストが人間に代わる魔法の像がありますが、ベンが言うにはオラドンでも魔法はもう使われていないとのこと。
彼らは普通の人間として普通に暮らしているようです。
で、オードリーの嫌味を見かねたベンは、通りかかったダグに四人の案内を任せました。
地味なメガネ男子のダグは、白雪姫の小人の一人:おとぼけの息子。小人じゃないんだ。
イヴィはダグをちょっとからかう態度を取りますが、何も言わずにマルと一緒に寮の部屋へ。
寮の部屋は日当たりがよくはピンクとフリルを基調にしたプリンセスらしいインテリア。
イヴィは一瞬うっとりしかけますが、「悪趣味」と切り捨てるマルに瞬時に同調。顔芸はやめなさい。
杖のありかを探って
夜になって男子部屋に行けば、カルロスはゲームに、ジェイは盗品のチェックに夢中。
マルは「私たちが悪だってことを親に認めてもらうチャンス」と本来の目的を思い出させ、イヴィの鏡で妖精の杖を探します。
いつものセリフは”mirror mirror on the wall”なんですが、手鏡なので”on the wall”じゃなく”in my hands”。日本語だと関係ないけど。
杖は博物館に飾られていました。マルがマレフィセントの糸車を利用して(呪文を唱えることで相手がつい糸車の針を触る気になっちゃうという仕組みらしい)警備員を眠らせ、魔法で鍵を開けてこっそり忍び込みます。
ロスト島は魔法を無効化するバリアでおおわれてるせいで魔法が使えないので、マルが魔法を使うのもこれが生まれて初めてのはず……ですが使いこなしてるあたりはやっぱり才能なんでしょうか。
もしくはいざというときのために魔法の使い方だけは勉強してたのかも。
階段を上がって通りかかったのはヴィランの展示室。
四人の親たち全盛期の邪悪な姿が人形として飾られていました。
ジェイたちは杖を探しにさっさと立ち去りますが、マルはマレフィセントの人形から目が離せません。
母親が悪であることを改めて目にしたマルの心に迷いが生じたのです。
Evil Like Me(イーヴィル・ライク・ミー:邪悪になりたいでしょ)
Look at you, look at me I don’t know who to be
こんな姿 見習うべき?Mother
お母さんIs it wrong, is it right? Be a thief in the night
夜中に泥棒に入っていいの?Mother
お母さんTell me what to do…
教えてよ
さて、マルの道徳観が何故突然転換した(泥棒に入る=悪いこと)のかは非常に謎ですがそこは突っ込まず。
ともかくマルは自分が何者であるべきか(”who to be”)自信が持てずにいるらしい。
そんな娘をけしかけようとしてか、どういうわけかマレフィセント本人が姿を現しました。
難しく考えないでと笑うマレフィセントが邪悪な歌声を披露します。
I was once like you my child Slightly insecure
私も昔は 悩んだりしたわArgued with my mother too Thought I was mature
偉そうに 母親に口答えしてたBut I put my heart aside And I used my head
大切なのは 心よりも頭よNow I think it’s time you learned What dear old momma said
いい加減 ママの言うことを聞いて
この映画のマレフィセントの生い立ちは不明ですが、マルの気持ちは分かるようです。
“put my heart aside”というフレーズは印象的ですね。脇に置いておくだけのハートはマレフィセントにもちゃんとあったわけです。
が、ここから先は「悪になりたいに決まってる」というボキャブラリーゴリ押しタイム。
Don’t you wanna be evil like me?
邪悪になりたいでしょ?Don’t you wanna be mean?
意地悪にDon’t you wanna make mischief your daily routine?
イケないことを 楽しみにするのWell you can spend your life attending to the poor
人助けなんて つまらないBut when you’re evil doing less is doing more
困ってる人を 見捨てるのよDon’t you wanna be ruthless and rotten and mad?
冷酷で 卑怯になりなさいDon’t you wanna be very, very good at being bad?
最高の悪になるのよ
evil, mean, ruthless, rotten, mad, badと色んな言い方がありますね。
“good at being bad”はgoodとbadをかけた言葉遊び。
しかし杖を使ったダンスが実にお茶目。
I have tried my whole like long to do the worst I can
私は一生をかけて 腕を磨いてきたClawed my way to victory
勝利をつかむため――Built my master plan
計画を練り上げたのNow the time has come my dear for you to take your place
今こそ決行の時よ 役目を果たしなさいPromise me you’ll try to be an absolute disgrace
この場で約束するの ”悪い娘”になると
“master plan”がベン王子がロスト島の子供をオラドンに招くお膳立て――なんだとしたらすごい話だ。そういう話は出てこないから違うと思うけど。
役目を果たしなさい(”take your place”)と杖を突く母親にマルはふらふらと従ってしまいます。
Don’t you wanna be evil like me?
邪悪になりたいでしょ?Don’t you wanna be cruel?
残酷にDon’t you wanna be nasty and brutal and cool?
不愉快で 厳しく冷淡に
最後の”cool”は親指と小指のハンドサインを作ってるのでそのまま「クール(カッコイイ)」な意味でもあるようです。
And when you grab that wand that’s when your reign begins
魔法の杖を手にすればWho wants an evil queen without a sack of sins?
邪悪な女王の誕生よ
“your reign begins”が「あんたの治世が始まる」の意味。
“Who wants~”は「罪のない邪悪な女王になりたいのだーれ?」ってことでマル自身を誘惑してるラインだと思いますが実際は女王になるのはママなのだ。
Don’t you wanna be heartless and hardin’ as stone?
無情に石みたいに 頑固になってDon’t you wanna be finger lickin’ evil to the bone?
指の先まで 悪に浸かるのよ
“finger licking”は「指舐めちゃうくらいおいしい」っていう形容詞なんですけどevilにかけて使ってます。
ちなみに指を舐めるって日本だと金勘定のイメージがあるけどアメリカだとどうなんかね。
This is not for us to ponder
悩んでもムダThis was preordained
運命なのよYou and I shall rule together
世界は2人のものFreedom soon regain
自由は もう目の前Mistress of the universe, powerful and strong
宇宙を支配する 魔力の持ち主Daughter, hear me Help me, join me
娘よ 聞いてWon’t you sing along?
さあ 一緒に歌うのよ
“preordained”は「すでに決められたこと」。
ドラマチックな曲の盛り上がりにマルもつい声を合わせちゃう。
Now we’re gonna be evil it’s true
私たちは本物の悪者Never gonna think twice
情け容赦ないAnd we’re gonna be spiteful
悪意の塊だものYes, spiteful That’s nice
“悪意”って いい響き
“spiteful”はマルの表現。それ、いいね。
In just an hour or two Our futures safe and sure
魔法の杖さえ奪えればThis mother, daughter act is going out on tour
親子でツアーに出発よIf you wanna be evil and awful and free
恐ろしく邪悪に 自由になるならThen you should thank your lucky star
恵まれてるわThat you ware born the girl you are
素敵な星のもとにThe daughter of an evilicious queen Like me!
生まれたあなたは――邪悪な私の娘
“evilicious”はおしゃれな造語です。
娘に再度杖を奪うことを思い出せ、圧巻の歌声を残してマレフィセント退場。
高笑いする母親に目を奪われていたマル。イヴィに呼ばれ我に返ってみれば、そこにいるマレフィセントはやはりただの人形でした。
マルの幻覚だったのか、それともマルの魔法がマレフィセントの魂を呼び寄せたのか。
途中、母親に同調して邪悪な笑顔を見せたマルでしたが、歌の最後は呆然とした表情に戻っていました。
四人は青いバリアに守られた杖をとうとう見つけます。
マルの制止を聞かずに手を伸ばしたジェイがバリアに触れてしまい、警報が鳴り響く中を四人は慌てて逃走。
カルロスの妙な機転で警報は止まり、誤作動ということで事なきを得たようです。
オラドンの学校生活
翌日、四人は仲良く「やさしい道徳」の授業を受けています。
なにげにみんなの衣装もちゃんと替わってる。イヴィのティアラが良く似合う。
杖のことで頭がいっぱいのマルは上の空ですが、「一番つまんなそうなの」が正しい道徳的な行動だとちゃんと分かるようです。
さて、ここから四者四様の学園生活。
マルはフェアリー・ゴッドマザーの娘ジェーンのいかにもコンプレックスの塊ないでたちに目をつけていました。親切に話しかけてくるベンを軽くあしらって、ジェーンに友達になりたいと話しかけます。
キレイになりたいと言うジェーンを懐柔するために魔法を使って髪型を変えてあげるマル。
そしてフェアリー・ゴッドマザーの杖があればもっと望みを叶えてあげられると誘惑します。
ジェーンに寄り添うふりをして思い通りに動かそうとするマルは確かにヴィランっぽい。40分経って初めてヴィランっぽいぞ。
しかし髪型変わったらほんとにダサくなくなった。ヘアメイクさんの力って偉大。
で、髪をおしゃれにしてくれると聞いたムーランの娘:ロニーは50ドル払って魔法を依頼。この話が広がりマルは女子たちの人気を得ていきます。
「絵がうまいんだし美術クラスを取ったら」というベンに対するマルの「落書きだから楽しいの」は実に名言。
ジェイとカルロスはゴッドマザーのすすめで「トーニー」というクリケットっぽい球技に参加してみることに。
運動神経バツグンのジェイは荒っぽいプレイながらも大活躍で、チアリーダーからもコーチからも大人気。
スポーツマンめ、どこの世界でも人気者だな!
コーチはジェイにとても親身になってくれ、闘争心が勝ってしまう脳みそ筋肉なジェイにチームを組むことの大切さを説いてくれます。「俺、拳になるよ!」がかわいめ。
カルロスはベンとトーニーの練習中、犬と初遭遇。
全力で逃げたカルロスでしたが、学校で飼ってる良いわんこだとベンに教えてもらい、さわってみれば確かにおとなしく愛らしい。
わんことたわむれるカルロスを見て、やっぱり悪い子じゃないとベンは安心したようでした。
イヴィの方は化学の授業中、シンデレラの息子であるチャド=王子様に目を奪われていました。
上の空を先生にとがめられ問題を当てられましたが、魔法の鏡でカンニングしつつ堂々と解答。
華麗なイヴィのふるまいにフラッときたチャドは、校庭のグラウンドでデートに誘います。
さりげなく杖のことを聞きだそうとするイヴィでしたが、結果はチャドに宿題を押し付けられただけ。
代わりに登場したダグが、ベンの戴冠式で杖が使われると教えてくれたのでした。
チャドはお花畑なだけじゃなくてクソヤローでしたので安心してください。
さて、ここまで見て既に分かるんですけど、マルたち四人はどう見ても悪い子じゃないんですね。
そしてオラドン高校の生徒たちもどう見ても善人ぞろいとはいいがたい。
どちらも普通のティーンエイジャーなんです。
映画では「人は変われる」というメッセージが直接的に出てきますけど、ベンがチャドにさらりと言った「決めつけるな」の方がテーマとしてふさわしいかもね。
そしてイヴィがすごいかわいい子だということがわかりますよね!
男をもてあそぶ悪女っぽい雰囲気をずっとかもしだしてましたが、彼女の方がチャドにもてあそばれちゃってる。
勉強より裁縫とか料理が得意と言ってはにかんだり、宿題やってと言われて断れなかったり、焦ったときにちょこちょこ早歩きするのがたいへんチャーミング。
ベンの恋人
学校になじみ始めた四人でしたが、杖を奪うという目的は忘れていません。
狙い目はベンの戴冠式。ベンの恋人なら戴冠式で最前列に座れると聞いたマルは、さっそく悪い顔で恋の呪文を探します。
四人で惚れ薬クッキーの製作中、材料に悲しみの涙だけが足りなかったところにやってきたムーランの娘:ロニー。
普通のスイーツづくりだと思ったロニーは、ママに作ってもらうクッキーみたいにチョコチップを入れればとアドバイス。が、マルたち四人が親からクッキーどころかまともな愛情を向けられてこなかったと知ったロニーは、思わず涙を浮かべました。
それいただき!
マルたちの辛さを悟って涙を流せるロニーが悪い子じゃないということがよく分かります。ただの図々しい女じゃなかった。彼女が次作でけっこうな出世を果たすのもうなずける。
イヴィは悲しみの涙と生理的な涙ではホルモンが含まれるかに違いがあるという科学的な講釈をちらり。料理も得意だと言っていた彼女には実は科学の知識が豊富なのかも?
トーニーの試合の前、マルはベンを言葉巧みに操って惚れ薬クッキーを食べさせることに成功。
どうやら薬が効いたらしいベンを見守りつつ、マルとイヴィは試合観戦。
ジェイはカルロスと一緒に試合に出たいんだとコーチに頼み、自信なさげなカルロスを励ましながら試合開始。
ジェイとカルロス、ベンにチャドもちゃんと含めたチームプレイが冴えわたる。
ベン王子のシュートで見事勝利を収めたと思ったら、ベンが何やらマイクを手にしてみんなに言いたいことがあると宣言。
王子、どうした!
お気に入りの歌の時間です。
Did I Mention(ディッド・アイ・メンション:好きだって言ったっけ?)
Did I mention, that I’m in love with you?
好きだと言ったっけ?And did I mention, there’s nothing I can do?
どうにも止められないAnd did I happen to say, I dream of you everyday?
毎晩 夢に見てしまうBut let me shout it out loud, if that’s okay?
この気持ち 叫んでも構わないかなIf that’s okay
いいだろ?
試合の勝利ムードにふさわしいアゲアゲな一曲。
上品なお坊ちゃまに見えたベンがこんな歌踊りだしたら尋常じゃない気がするんですがみんなもノリノリ。
「毎晩夢に見てしまう」ってのはひっかかりポイント。
単なる歌詞のノリかもしれませんが、「毎晩」って言葉はクッキーを食べる前からじゃないと出てこないような。
I met this girl that rocked my world like it’s never been rocked
出会って 生き返った気分And now I’m living just for her and I won’t ever stop
寝ても覚めても 夢中なんだ
隣で踊るカルロスがキュート。
“rock”はよく出てくる言葉だけど邦訳が難しい、ピンとくる言葉がない。
“We will rock you”と同じ意味だと感じとれ。
I never thought that it could happen to a guy like me
こんな僕って 想定外But now look at what you’ve done You got me down on my knees
彼女の魅力に もう完敗
韻を踏んでやがる!
一行目は直訳すると「こんなことが僕みたいなやつに起こるなんて思ってもみなかった」。
Because my love for you is ridiculous
この恋 半端じゃないI never knew (who knew?) That it could be like this
こんな想い 初めてだよMy love for you is ridiculous
この恋 半端じゃないMy love is R-I-D-I-C-U-L-O-U-S
もう完全に 半端じゃないよIt’s (ridiculous) Just (ridiculous)
そうさ もうAnd I would give my kingdom for just one kiss
王国を捨てても キスしたい
りでぃっきゅらす! りでぃっきゅらす!
「ばかばかしい」っていうような意味。
単語を一文字ずつ歌詞にするっていうのもよくありますよね。これも邦訳するには難しそう。
「王国を捨てても」ってのはノリっぽいけど何気に洒落になってない。
ヴィランの娘であるマルを愛しちゃったら王子でいられなくなるかもしれないんだから…。
何気にチャドも踊ってくれてますね。
I gotta know which way to go Come on give me a sign
OKなら合図を送ってYou gotta show me that you’re only ever gonna be mine
僕だけを見ると誓ってDon’t wanna go another minute livin’ without you
今すぐ君が欲しいんだ‘Cause if your heart just isn’t in it I don’t know what I’d do
もし振られたら再起不能
ここで思い出す、彼は自分を好きかどうかもわからない女子に対して歌っているんだと。
マルは「計画通り」だからよかったけど、そうじゃなかったらドン引きのリスクが。
“heart is in it”は慣用句ですかね。興味がある、その気がある、みたいな。
チームもチアリーダーも客席もノリノリで超ごきげんなのがいいよね。
ジェイもカルロスもみんな楽しそう。
客席で腕組んで見てるマルも、本気っぽい呆れ顔がチャーミング。
客席ダイブしてマルのもとにやってきたベン、キラキラおめめでマルの肩を抱き、一緒に戴冠式に出てくれと誘いました。
計画通りですが顔には出さず、あたかも喜んでる顔でOKするマル。
で、みんなの前で盛大に別れを告げられたオードリーですが、ひるがえしかたの早いこと。いつのまにかチャドを捕まえていて「チャドと付き合うからあなたはもう必要ない」とベンに向かってマウントを取り立ち去りました。
オードリーはけっこうひどいことをされてることになりますよね? ところがこの場の全員ベンとマルのお祝いムードでオードリーをガン無視。マルがヘアメイク魔法で人気を勝ち取っていたこともあるんでしょうが、オードリーがもともと誰からも好かれてなかったんだとした思えない。だって王族の恋人ってすごく重要な立場なのでは?
一方、お花畑チャドがオードリーと連れ立って行く様を見てイヴィは失恋。
何も言わず表情だけを曇らせるイヴィを見て、マルは「王子と付き合うことで自分を飾る必要なんかない。あなたにはメイクも縫物も才能があるんだから」という意味の言葉をさりげなくかけます。
ひねくれてるマルは慰めの言葉もストレートではないんですね。
そんでイヴィはチャドやオードリーへの思いを怒りではなく悲しみに変えている。かつそれを他人にはぶつけず一人でひっそりと傷つくんでしょう。ほら、いい子。
そんなイヴィを支えてくれるのはダグでした。
チャドにチクられたせいで魔法の鏡を没収され、退学だと言われてしまうイヴィ。
ダグのフォローのおかげで自力でテストに合格したら大目に見てもらうことになり、イヴィは初めて自分の力でテストに取り込み見事に合格。
チャンスと自信を与えてくれたダグにイヴィは心から感謝します。
と、イヴィを探してマルが登場(このときのマルの衣装がなんかセクシー)。
ベンにデートに誘われてしまったと聞いてイヴィはいそいそと支度にとりかかります。
ベンとマルのデート
マルのメイクを甲斐甲斐しくキメるイヴィは本当にお姉さんみたい。
寄り添ってくれるイヴィに対し、マルはママからの期待に応えたいという思いをちょっぴり素直に話します。
マルは迎えに来たベンに連れられ、バイクに二人乗りして森の中へ。
橋をフラフラ歩くマルはかわいらしい。そしてミドルネームが「バーサ」というらしい。っていうかファミリーネームは?
ベンとの会話はざっくばらんで素直に楽しそう。
湖のほとりの幻想的な東屋でフルーツとお菓子を楽しむ二人。
ベンは自分が王にふさわしいのかという不安をちらりと打ち明け、親が悪者の代表であってもマルが悪い子とは思えないのだと伝えます。
ここでのベンのふるまいはクッキー食べた直後の最高にハイな状態と異なりますよね。
いつも通りの紳士で、実はちょっとお茶目で、マルのことを信じている。
無邪気に湖で泳ぐベンを見つめながら、マルは自分の素直な気持ちに向き合います。
If Only(イフ・オンリー:もしも…)
A million thoughts in my head Should I let my heart keep listenin’?
いくつもの考えが 心を締めつける
直訳すると「頭に浮かぶ考えをこのまま心に聴かせていていいの?」
マレフィセントの歌っていたEvil Like Meの「心より頭を使うの(”put my hear aside and use my head”)」というフレーズが思い出されます。
‘Cause up till now I’ve walked the line Nothing lost but something missing
迷わずに来たけど 満たされないの
“walked the line”はママの引いたラインに沿って歩いてきたこと。
それで失ったものはなくても、何か足りないものはある。
I can’t decide what’s wrong what’s right
正しいとか 間違ってるとかWhich way should I go?
もう何も分からない
マルは最初から分かってはいなかった。
頭を使って一度は目的第一に動けたけれど、ベンと二人で話したことでまた心が動いてしまった。
If only I knew what my heart was telling me
心の声に素直でいたらDon’t know what I’m feeling
どうなっていたの?Is this just a dream?
そんなのは夢?If only I could read the signs in front of me
ちゃんと気づいていればI could find the way to who I’m meant to be
なれていたの 本当の姿に?If only
そうなの?
ここでマルが歌っている「本当の姿」とは何を指してるのか。
たぶん彼女自身、それがなんなのかははっきりとわかっていないはず(ベンに恋してるとかそういう話はしてないです)。
ただ頭と心に引き裂かれている現状があって、もし「心」に従っていたら自分の信念を持つことができたかも、こんなふうに迷わずにいられない自分ではなかったかも、というIf Only(だったらよかったのに)な感情を歌っている……という解釈。
イヴィとの会話の中でも、マルはイヴィのまっすぐなところを尊敬してるように見えました。
イヴィには好きなものも得意なものもあって芯が通っているのに自分は……というコンプレックスがちょっとあるのかも。
Am I crazy?
おかしいかな?Maybe we could happen
2人が上手くいくなんてWill you still be with me
一緒にいてくれる?When the magic’s all run out?
魔法が解けたとしても
それ大声で歌うとベンに聞こえるよ、と言うのは野暮だぞ。
ここの歌詞はかわいいですね。魔法が解けて見捨てられるのが怖い、という不安が見える。
魔法が解ける、というのは直接的な恋の魔法の話だけじゃなくて、マルが「本当の自分を見せる」ことの比喩でもある。
歌い終わっても上がってこないベンを心配して、泳げないのに川に飛び込んだマル。
けろりとしてるベンにすねるびしょ濡れのマルを、ベンはいとおし気に見つめました。
「好きとかよく分からないの……」
「教えてあげるよ」
なぜとは言わないがここで場面転換すんな。
初めて食べるイチゴに夢中なマルはかわいかったです。
ファミリーデー
また別の日。
次の日曜日は家族が集まる日だからと言って気を利かせてくれたフェアリー・ゴッドマザーは、ロスト島のマレフィセントたちとテレビ電話をつないでくれました。
久しぶりの親たちとの再会ですが、オラドンの生活になじんだ四人にとって、ヴィランの親たちとの会話は決して快いものではありませんでした。
いつ「帰ってくるのか」とプレッシャーをかけるマレフィセントに、マルは「戴冠式の後には」と答えます。
犬を抱いたカルロスがクルエラに口答えしたところから言い争いになる親たち。
見かねたジェイは通話を切断し、ゴッドマザーに「気を遣ってくれてありがとう」と笑いかけました。いい男か。
四人が変わったということを視聴者も本人も悟ると同時に、ヴィランは感じ悪いということを思い出す場面。
親たちの恐ろしさを思い出した四人は、落ち込みながらも戴冠式で杖を奪取する作戦会議。
マルはベンにかけた恋の魔法を解くつもりだという。杖の奪取に成功すればオラドンを悪が征服しベン達は捕らえられるのに、まだマルを愛していたら「残酷だから」と……。
ところで四人のファッションからもレザー成分が減ってるのは夏だから?
ファミリーデー当日、オラドン校生の歌が家族を迎えます。
ベン王子、オードリー、チャド、ダグ、ロニーと勢ぞろい。
ジェーンは歌わないみたい。
Be Our Guest(ひとりぼっちの晩餐会)
Ma cherie Mademoiselle,
大切なお客様It is with deepest pride and greatest pleasure
誇りと喜びをもって――That we welcome you tonight
お迎えしますAnd now, we invite you to relax
おくつろぎをLet us pull up a chair
さあ お席にAs the dining room proudly presents Your dinner!
自慢の料理を召し上がれ
「マシェリ・マドモアゼル」はフランス語だね。なぜ?
どう見ても昼だけどディナーらしい。きっと夕方なんでしょう。
Be our guest Be our guest Put our service to the test
ご期待ください 最高のおもてなしTie your napkin ‘round your neck, cherie And we’ll provide the rest
ナプキンをしたら 食事の始まりSoup du jour Hot hors d’oeuvres Why, we only live to serve
まずは前菜に 本日のスープTry the grey stuff It’s delicious! Don’t believe me? Ask the dishes
味は抜群 お皿に聞けば分かります
ローニーはムーランの娘だけあってちょっとエキゾチックなドレス。ショッキングカラーだけど。
衣装が全体的にパステルカラーなのはマルたちと対比的。
ダグが何気に一番キレキレに踊ってます。
「シェリー(cherie)」とか「本日の(du jour)」とか「オードブル(hors d’oeuvres)」もみんなフランス語。
They can sing, sing sing They can dance dance dance After all, Miss, this is France
皿まで歌い踊る ここはフランス流And the dinner here is never second best
一流の料理をお試しあれGo on, unfold your menu
メニューを開いてTake a glance and then you’ll
お選びくださいBe our guest Be our guest
どうぞ お客様 お気に召すままに
やっぱりフランス流だって。
ダグがさりげなくビートボックスをやってます。
ゴッドマザーはノリノリですが、ジェーンはいまいちなじめない感じ。
We tell jokes I do tricks With my fellow candlesticks
ろうそくの手品が 食卓に花を添えるAnd it’s all in perfect taste That you can bet
並んだ料理は ごちそうばかりCome on and lift your glass
さあ グラスをあげYou’ve won your own free pass
お客様に乾杯To be our guest If you’re stressed It’s fine dining we suggest
素敵な食事で 笑顔を見せてBe our guest Be our guest Be our guest
どうそ お客様 お気に召すままに
マルたち四人もパーティらしくおめかしして登場。
そんな服を持ってきた(そもそも持ってた)と思えないし、たぶんイヴィのお手製ですね。
さっそくお気に入りのイチゴをほおばるマル。
イヴィはカルロスがチョコフォンデュをむさぼれるように犬を預かってあげます。犬、いつも一緒ですね。
ベンは両親と写真撮影の際、新しいガールフレンドができたと告げます。
ママのベルは「オードリーは自分のことしか考えてないって感じだったものね」とチクリ。これを聞いたベンの複雑な顔がなんとも。
マルを紹介された美女と野獣は明らかにひきつったお顔ながらも、ベンの友達ならと受け入れてあげます。
わきあいあいと遊びに興じていたマルたちでしたが、オーロラの母であるリア王妃がマルを見かけたのをきっかけに状況が一変。
ヴィランズのしたことを忘れたかと声を荒げるリア王妃に、同調したチャドがマルやジェイ、イヴィを侮辱します。カルロスのことは何も言わないね。たぶん眼中に入ってない。
怒ったイヴィはチャドに眠りの香水を吹きかけると、マルたちを連れてその場を立ち去りました。
チャドは息を吹き返し、ベンは必死にフォローするものの、ヴィランズの子供が騒ぎを起こしたとすっかり険悪なムード。
オードリーたちに嘲り笑われたマルは、魔法をかけたジェーンの髪を元に戻し、次は髪だけじゃないと脅して追っ払います。
ジェーンがなぜか急に腰巾着になってる。
自分たちははみ出し者なのだと思い出させられた四人は、杖を奪って帰るのだと改めて決意するのでした。
ここは嫌なシーンですね。ディズニーにありがち。
ベンの戴冠式
戴冠式の日、ロスト島ではマレフィセントたちがテレビ中継を見ていました。
続編の様子からすると、ロスト島でも普段からオラドンのテレビは映るみたいです。
レポーターの白雪姫はなかなか美人ですがいい感じに軽ーい嫌な女。ファンに怒られるぞ。
出席するみんなはいつもと違う正装で、チャドもちゃんと王子に見える。
馬車に乗って登場するベンの隣にはドレス姿のマルが。ドレスはもちろんイヴィ製作。
マルは恋の魔法を解く魔法のケーキを「後で食べて」と渡しますが、ベンは待ちきれないとすぐに食べてしまいます。が、ベンはそもそも恋の魔法のことを知っており(マルが恋心から魔法をかけたと思っていますが)、効果も湖でのデートのときに解けたのだと言うことでした。
ベンは正気で戻ってもなお、マルに指輪を渡したいと思っていたのです。
ベン本人が言うには湖の水で魔法が流れ落ちたとのこと。彼が湖に入ったタイミングなのか、どうでしょうね。
ただ、マルが魔法をかけることがなければ、オードリーがいる限りベンがマルを誘うことはなかったんじゃないかと思いますけど。きっかけになったっていうのは充分「魔法のせい」と言えるようななんともかんとも。
ファミリーデーの後初めて顔を合わせたであろうマルとベンの両親ですが、母親のベルはマルに温かい目を向けてくれます。オードリーとは違うってことがちゃんと分かってるんでしょう。
さて、戴冠式の始まり。厳かな雰囲気の中を堂々と歩くベン。
ベンを王に任ずるフェアリー・ゴッドマザーの手から杖を奪い取ったのは……ジェーンでした。
マルの仕込んだキレイになりたいという強迫観念がここに来て効いちゃったあたり、さすがマル悪い子。
突然奪われた杖は制御を失い、魔法を暴発させてロスト島を覆うバリアを破ってしまいます。
魔法を放ちながら暴走する杖に振り回されるジェーン。
そこにマルが飛び出し、ジェーンから杖を取り上げます。
イヴィ達も駆けつけますが、マルは杖を掲げたまま動けなくなりました。
ベンが近づき、杖を返してと説得します。
「きみはいい人だ。僕のハートがそう言ってる」というベンの言葉に、マルも自分のハートに従うことを選びます。
自分たちは親とは違う。悪が支配する世界など望んでいない。ただ幸せに暮らしたい。
マルのこの告白を何より嬉しそうに聞いてるイヴィがステキです。
四人はいい人になるとベンの前で誓い合いました。
親が一番怖いのはやっぱりカルロス。
めでたしめでたし……とはいかず、マレフィセントが満を持して登場。
ジェーンが杖を奪ったときにバリアが破られ島から飛んでくることができたのです。
マレフィセントは魔法で時を止め、ゴッドマザーからあっさりと杖を奪ってしまいました。
ここぞとばかりに好き放題動き回るマレフィセントがお茶目すぎる。
時止めはどうやらただのストップモーションなので役者さんたちがんばってる。
が、マルも魔法を発動して不意打ちで杖を奪い返すことに成功。
反抗的な娘たちをこらしめようと、マレフィセントは巨大なドラゴンへと姿を変え襲い掛かります。
友達を守ろうとドラゴンの前に立ちはだかるマル。
悪を滅ぼす呪文を唱え、邪悪な母の緑の目と睨み合う。
勝利したのはマル。
マレフィセントドラゴンは自分自身の持つ愛情と同じ姿に――小さな小さなトカゲへと姿を変えました。
ゴッドマザーによれば愛を学ぶと元に戻れるらしいです。
ゴッドマザーが時止め魔法を解き、ハッピーエンドへまっしぐら。
マルはジェーンにあなたはそのままでキレイだと伝え、オードリーとも目配せで仲直り?
エピローグ:物語の始まり
ラストダンスでパーッと騒いでおしまいです!
……ロスト島のバリアはまだ解けたまま?
Set It Off(セット・イット・オフ:始めよう)
Let’s set it off!
始めよう!You can make it happen
奇跡を起こすの
おーえーおーえーへい!
ラストはみんななんのわだかまりもなくノリノリダンスしちゃってます。
“set X off”は「Xを始める」っていう慣用句ですね。抽象的なitが入って「いっちょやるか」って感じ?
Kings and queens it’s our time to rise Write the book, story of our lives
僕たちの物語を 始める時がきたThis is us taking back the night
記念すべき この夜に
チャドが楽しそうにしてて何より。
戴冠式にてベンはいまや王様です。
Break the spell, we were born this way Be yourself, forget the DNA
生まれなんて 関係がないよEverybody raise your hands and say
さあ 手を上げよう
“break the spell”は「呪文を解く」。持って生まれたものに縛られる必要なんてない。
“Be yourself”=「自分らしく」がやっぱり一番。
Sound the alarm get on your feet Let’s set it off and rock this beat
自分の足で立ち 大地を鳴らすのDance till your heart is wild and free
心のままに踊ろうFeelin’ the power, let it all out Like what you see in the mirror, shout
鏡に映るのは 力あふれる姿We got the keys, the kingdom’s ours
王国は腕の中
文化系なダグもダンスは上手。実はイヴィとインテリコンビだったり。
しかしイヴィはすごい靴で踊っておる。
Let’s set it off!
始めよう!Start a chain reaction and never let it stop
みんなの想い 広がっていけLet’s set it off!
始めよう!You can make it happen with everything you got
奇跡を起こすのは 自分自身なんだ
この曲に対してあんまりコメントないなと思いました。
お気に入りキャラのダンスをゆっくり鑑賞しましょう。
It’s time to set this thing off Let’s make it happen now
待つのはやめて 立ち上がるんだI’mma make my own future, ignore all the rumors Show ‘em how passion sound
本気になれば 未来は君のものThey all told me I should back down Judgin’ me ‘cause of my background
誰が何と言おうと 気にしなくていいThinkin’ ‘bout changin’ my path now Nah, I ain’t goin’ out like that now
自分を信じて 突き進めばいい
落ち込むジェーンの手を取る紳士二人がかわいい。
カルロスの半ズボン燕尾服風がカッコイイデザインですね。
やってきたオードリーはジェイとダンス。ジェイはただのブーブーにしか見えないぞ。
かたくなにキスはしないマルとベンを中心にめでたしめでたし。
こんな結末、予想は……正直できました。
最後に
ディズニーらしい青春ミュージカルでした。安心のハッピーエンド。
「ヴィランズが良い人になれるのか?」というよりは「ヴィランズの子供はヴィランズなのか?」というテーマ。
マルたちってまったく少しもヴィランズじゃないんですよね。オラドンズの方もちっとも善人に見えない人もいる。
環境によって外から自分のありかたを決めつけられる中で、何を目指して生きていくのかという模索の話。
まあ最後のSet It Offの歌詞がすべてを物語ってるからいいか。
モチーフがヴィランっていうのは新鮮だしカッコイイけど、シナリオ的には非常にオーソドックスなのである。
マルがベンとくっつかなかったらもっと斬新だったなーと思いますけどしょうがないね。
カルロスとジェイが誰かと安易にくっつかなかったのには非常に好感が持てる。
イヴィはもともと王子様を求めてたから、”王子様”じゃなく本当に信頼できるメガネ君と出会えたのは微笑ましかった。
何しろ曲がカッコイイもんだからサントラをつい買っちゃいます。
映画に出てこない曲やリミックスバージョンもあるのです。
特にソフィア・カーソンがソロで歌う”Rotten to the Core”は最高にバッドです。
ちなみに「ディセンダント キケンな世界」というオラドンの学園生活を描いた短いCGアニメシリーズがあって、ディセンダントのDVDに収録されてるみたいです。
子供向けなのでおもしろいかどうかは人によりますが、オードリーのキャラがちゃんとしてるのは確か。
さて、次はディセンダント2なんですけどまたなげー記事になりそうだ。
今回の記事はここまで。
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