【ネタバレ感想と歌詞】ディセンダント2

ディズニーチャンネルオリジナルムービー:ディセンダント2の今更感想。
第3作の日本放送が間近になったということでとりあげましょう。
特に劇中歌に着目していきます。そしてこの記事は前回より長いです。

概要とキャラ紹介はネタバレなし。
シナリオと感想以降はネタバレありです。

ディセンダント2(2017年、アメリカ)


ディセンダント2(Descendants2 )

  • 公開年 2017年
  • 製作国 アメリカ
  • 監督  ケニー・オルテガ
  • 脚本  ジョーサン・マクギボン、サラ・パリオット
  • 出演  マル:ダヴ・キャメロン、イヴィ:ソフィア・カーソン、カルロス:キャメロン・ボイス、ジェイ:ブーブー・スチュワート、ウーマ:チャイナ・アン・マックレーン

概要

ディズニーチャンネルで制作されたオリジナルムービー。
ディズニーヴィランズ(ディズニー映画に出てくる悪役)の子供たちを主役にしたディセンダントシリーズの第2作。
前作の敵は主人公たちの親でしたが、今回の敵は同年代のティーン。
ロスト島に残されたヴィランズ二世の中にも”悪”がいるということが分かります。

第2弾ということでファッションも音楽もダンスもパワーアップ。
キャストのみなさんが大きくなってることやロスト島のシーンが多いこともあって、前作のようなおとぎ話感よりはアドベンチャー感が増しています。
ヒットが約束されてるようなものだったので、さらに次作への期待を高めるようなシナリオにもなってますね。

新キャラもみんなクールですが、大人のヴィランズが出てこないのはちょっと残念。

あらすじ

前作でマル、イヴィ、ジェイ、カルロスの四人は「いい人」になることを決意し、おとぎの国オラドンでの生活を続けることにしました。

中でもマルは国王ベンの恋人として認められ、王族の一員としての期待を周囲から受けるようになります。
ひそかに魔法に頼ることでプリンセスにふさわしいファッションやふるまいを必死に身に着けようとするマルでしたが、それは自分の本当の気持ちを押し殺すことに他なりません。

マルがこっそり魔法を使っていたことを知ったベンは、彼女が「楽をするためにズルしてた」のだと責めてしまいます。気持ちを分かってもらえなかったマルは傷つき、オラドンは自分の居場所ではないとロスト島に帰ってしまうのでした。

ベンはイヴィ達と一緒にロスト島へマルを探しに行きますが、そこにオラドン王を狙うタコの魔の手が忍び寄る……。

キャラクター

第1作と同じキャラについては前の記事も参照してください。

マル(Mal)

前作から続けて登場する主人公。眠りの森の美女のヴィラン:マレフィセントの娘
いい人になっても当然、真面目で責任感が強い性格は変わらず。むしろそのせいで周囲からかけられる期待がものすごいストレスになってしまいます。
前作では親からの圧力と自分の心との乖離を克服したマルですが、今回は「いい人」としての圧力が彼女を押しつぶそうとしてきます。

演じるダヴ・キャメロンいわくマルは「複雑・激しい・繊細」。
まさにその通り!マルの最大の敵はマル自身なんでしょう。
今回色んなコスチュームと髪型を見せてくれます。どれも似合うのはさすが。

ちなみにママのマレフィセントは元気にトカゲ生活を送ってます。
他三人の親たちは特に出てこないけど。

イヴィ(Evie)

前作から続けて登場するマルの親友。白雪姫のヴィラン:イーヴル・クイーンの娘
もともと性格的にいい人そのものだったイヴィは、オラドンでの生活にすっかりなじんでいます。ファッションの才能を発揮してデザイナーとして活躍。
一方、ロスト島に残された子供たちには複雑な感情を抱いてしまいます。

演じるソフィア・カーソンいわくイヴィは「自立的・心が広い・大胆」。
前作は意外とキュートなふるまいが多かった彼女ですが、今回は大人っぽくなってお姉さんらしい包容力を発揮してくれます。
今回の歌とダンスも最高だぜ。

ジェイ(Jay)

前作から続けて登場。アラジンのヴィラン:ジャファーの息子
ジェイは前作でチームプレイというものを学び、脳みそ筋肉っ子から頼れる兄貴へと成長を遂げました。
そしたらただのいい男じゃないか! スポーツマンめ!
笑顔がチャーミングなので許しましょう。

今回は乱闘シーンもあって肉体派のジェイには嬉しいですが、全体的には割と控えめな立ち振る舞い。
自分が率先してドン!というより一歩引いてみんなを見守ってるような印象を受けます。

演じるブーブー・スチュワートいわくジェイは「兄貴・守護者・アスリート」。
ジェイがすっかりチームリーダーとして落ち着きを見せてくれてるのはコーチも感慨深いことでしょう。

カルロス(Carlos)

前作から続けて登場。101匹わんちゃんのヴィラン:クルエラの息子
カルロスは前作で恐怖の源だった親も犬も克服することができました。何気にマル以上に成長してたかもしれませんね。
もともと素直で天真爛漫だった彼ですので、桎梏のなくなった今作は心のまま、大事な友達のために手を尽くしてくれます。
カルロスが今回最も戸惑うのは「女の子」だったり。

演じるキャメロン・ボイスいわくカルロスは「誠実・勇敢・陽気」。
臆病なキャラクターというのには内に秘めた大きな勇気があるのです。

キャメロン声変わりしてるし声優さんもそのうち変わっちゃうのかなあ。下田レイさんすごく好きです。

ベン(Ben)

美女と野獣の息子であり、前作の戴冠式を経てオラドンの王となりました。
オラドン人のくせに嫌味も偏見もない「いい人」の権化。
ロスト島で育った子どもたちもチャンスがあればいい人になれると信じています。

前作では誰に対しても終始穏やかな紳士でしたが、今作ではマルが魔法を狡猾に利用していたと思い込みちょっぴり声を荒げてしまいます。
前作でちらりとのぞかせた王座に就くことの不安が、彼にもストレスになっているんでしょうね。まだティーンだもの。

今回はヴィラン流の歌とダンスを習得してノリノリだぞ。

ウーマ(Uma)

うーううーま!ううううーま!

今作の新キャラ、ロスト島に残ったヴィランの子供としてマルたちを追いつめる敵役です。
リトル・マーメイドの声を奪った魔女:アースラの娘
ロスト島でのみじめな生活にうんざりしており、運よく脱出してのし上がったマルのことを骨の髄まで妬み嫉み僻んでいます。マルとは幼馴染でもともとコンプレックスを抱いていたようですね。

彼女自身、言動はヴィランそのもの。
オラドンを乗っ取り自分が支配者となることを望んでいます。

いざというときのために手下たちと力を蓄えていたらしく、今作ロスト島で無防備にうろうろしているベンを見つけたことを好機に叛乱の狼煙を上げるのでした。

演じるのは歌がうますぎるチャイナ・アン・マックレーン。
実は前作のミニアニメシリーズで声優として登場しており、歌1もそのとき披露してくれていました。
敵役にふさわしい迫力がありますが、身長がちっちゃいのがかわいい。

シナリオと感想(ネタバレあり)

シナリオをたどりながら感想をつらつら書いていきましょう。
シナリオ部分は太字、普通の字体は私のコメント。

歌の登場するところは英語歌詞と和訳歌詞の解説も。字幕翻訳では字数の関係で省略されちゃう箇所がありますので、その辺補足もしていきます。
※英語歌詞はGoogle検索から、日本語歌詞は字幕放送からの引用です。

プロローグ:マルの葛藤

映画が始まって突然、怪しげな大鍋で毒リンゴを煮込むマルたち四人。
邪悪なリンゴをばらまきながら悪い顔でヴィランズソングを踊ります。

Ways To Be Wicked(悪の力を呼び覚ませ)

We got all the ways to be W.I.C.K.E.D
悪の力を呼び覚ませ

ここでは”Evil”ではなく”Wicked”という言葉が出てきましたね。
直訳すると「悪になるあらゆる方法を手にした」

Crashing the party, guess they lost my invitation
パーティーの招待状はどこ?

Friendly reminder, got my own kind of persuasion
呼ばれなくても 押しかけるけど

リンゴをジェーンに食べさせて不敵に笑うマル。大人っぽくワルな髪型です。
ロッカーにはお気に入りの落書き「LONG LIVE EVIL(悪よ永遠なれ)」。
パーティーの招待状っていうのは式典に招かれなかったマレフィセントにちなんだ歌詞ですね。

Looks like this place could use a bit of misbehavior
イタズラ心が 足りてないぞ

Happily ever after with a little flavor
ハッピーエンドにちょいと味付け

カルロスはオールバック風に髪型を変えてます。
“Happily ever after”はおとぎ話の決まり文句「いつまでも幸せに暮らしました」のこと。

Bad to the bone with even worse intentions
骨まで真っ黒 心もドス黒い

We’re gonna steal the show and leave ‘em all defenseless
主役は俺たち 脇役は引っ込め

ジェイは前作から背も高かったし、見た目はあんまりイメージ変わってませんね。
ブレイクダンスでリンゴをダグに投げつけます。

A fairy tale life can be oh so overrated
おとぎ話なんて つまらない

So raise your voices and let’s get it activated!
声を上げて動き出すの

イヴィの艶っぽい身のこなしは変わらずさすが。
フェアリー・ゴッドマザーの教室を荒らし、何気にチャドの手を握ったりしてますね。
“overrated”は「もてはやされてるほど大したことない」

Long live, havin’ some fun We take what we want
楽しまなきゃ損 やりたい放題

There’s so many ways to be wicked
悪に染まるんだ

With us evil lives on The right side of wrong
はびこるのは悪 邪悪こそ正義

There’s so many ways to be wicked
悪に染まるんだ

邪悪なリンゴのせいで学校中が大騒ぎ。
“There’s so many ways to be wicked”は直訳だと「悪になる方法はいくらでもある」
はてさて、前作でいい人になると言っていた四人はどこにいっちゃったんでしょうか。

Apple apple Dip dip Wanna try it?
リンゴはいかが? 味見しない?

Tick tick Take a bite C’mon be bold Change the way the story’s told
かじれば ステキなお話になる

“change the way the story’s told”は「おとぎ話のシナリオを変えてやろう」な意味ですね。
ところで前作の”Good is a new bad”って曲もオシャレな曲。

This time the dark is finally getting your attention
闇の誘惑が狙ってる

We’re wicked by the book and class is back in session
悪の授業を始めよう

You like it, steal it, gotta beat ‘em to the treasure
欲しければ奪うだけ

A rite of passage, bad just doesn’t get much better
誰もが通る道 最高さ!

ローニーもチャドもゴッドマザーもジェーンもダグも美女と野獣まで悪に染まっちゃった!
あれ、オードリーは?

Mother always knows the best
ママは正しいよ

Show her, pass every test
認めてほしいの

Hear her voice in my head
声が聞こえる

Evil is the only real way to win
邪悪になれ 勝利への道だ

邪悪だった親たちに認めてほしい、それは前作までの四人じゃないのか!?
クールなダンスとともに視聴者にそんな戸惑いを与えたと思ったら……

現実にいるのは金髪のマル。
マルはヴィランから王家に入った夢の女の子として報道陣に囲まれていました。
さっきのすべてはマルの空想の世界……。

もうすぐ舞踏会があり、マルもベンも大忙し。
マルはイヴィにせっつかれて寮の部屋に戻りドレスの試着をします。

マレフィセントトカゲはガラスケースで大事に飼われているようです。お気に入りの大きな椅子と、糸車と、ロスト島で金庫として使ってた冷蔵庫のミニチュア付き。体色は黒っぽかった気がするけど緑に見える。保護色かな?

寮の部屋も前作は女の子らしいピンクとフリルで飾られていましたが、カーテンもシーツも落ち着いたブルーに代わり、洗練された雰囲気。たくさんのドレスやデザイン画、裁縫道具はイヴィのものですね。

イヴィがドレスの調整に集中する中、マルはハンガーにかけられた昔のレザージャケットを恋しげに見つめます。

マルはもはや一躍有名人。連日ベンとともに王家の社交イベントに追われているようです。
ニュース映像の中でアラジンとジャスミンがちらっと登場。ジャスミンの顔は映らない。マルがアラビア風のドレスを着てるのに一瞬しか映らなくてもったいねえ。

と、魔法を使って教科書の内容を記憶しようとするマルをイヴィが見とがめます。
イヴィが魔法の鏡を手放したように魔法の本から卒業すべきとたしなめますが、マルは魔法を使わないと溶け込めないのだと不安顔。

昔みたいに悪さしたくならないかと言うマルに対して、イヴィは昔のことは忘れようと言い聞かせます。
ここの言い方もストレートじゃないのがマルらしい。「私は昔に戻りたい!」とはっきりとは言わないんですね。
一方のイヴィの方はオラドンで才能を発揮しデザイナーとして成功しています。今が幸せそのものだからこそ、昔の自分を捨てたいと思ってしまっているようです。

舞踏会の準備とそれぞれの学園生活

学校全体が舞踏会に向けて盛り上がっている雰囲気。
女子からモテモテで相手に困らなそうなジェイに対し、カルロスはどうやったらうまく誘えるかとアドバイスを求めます。「俺みたいになれ」って言ってみたいですね。
カルロスが舞踏会に誘いたいのはフェアリー・ゴッドマザーの娘:ジェーン。ジェーンはまたオシャレな髪型になっていて、前作とはうってかわってテキパキとした言動です。

ジェーンは舞踏会を取り仕切る係なのか、飾りつけや小物についてマルの意見を求めます。
どうにも上の空なマルですが、そのうえ舞踏会が結婚式を意味するのだと知ってすっかり狼狽してしまいました。
このシーンのマルのファッションは完全にオラドン風。髪は金髪(毛先が紫のままなのがオシャレ)で、パステルグリーンのワンピースなんか着ちゃってどう見ても無理してる。
おまけに廊下を歩いてくるシーンで、周りのみんなが笑っていても一人だけ焦点の合ってないうつろな顔をしていました。

イヴィはデザイナーとしてみんなに認められ、舞踏会でも女子たちのドレス作りを請け負っていました。
シンデレラの息子:チャドもイヴィにマントのデザインを依頼中。彼はオーロラの娘:オードリーに振られてしまったらしく、彼女を思い出してはぐすぐすと涙目になっています。
イヴィ「あなたのイメージは”王”よ!……あとフェイクファー」

そしてイヴィのそばには白雪姫の小人の息子:ダグがついています。彼は優秀な会計係、そして心の支え。
王子様を捕まえてお城に住むことが夢だったイヴィ、今なら自分の稼ぎでお城を手に入れられる。彼女の自立を理解して称えてくれるダグは実に聡明で心優しい。

浮かない顔のマルに声をかけたベン。サプライズだと言って紫のスクーターをプレゼントしてくれます。
マル「紫大好き!」みんな知ってます。
が、ピクニックのごちそうを作る約束を忘れていたマルは、ベンには忘れてないとごまかしながらも内心大慌て。

そのころ、ジェイとカルロスはフェンシング(っぽい団体競技)のチーム練習。
ジェイはチームリーダーで実力も一番ですが、彼に匹敵する腕の持ち主が登場。

それはムーランの娘:ロニーでした。
彼女はチームに入りたいと言いますが、嫌がるチャドが「『チームに入れるのはキャプテンと8人の男子』ってルールに書いてあるもんね」と拒絶します。ジェイはなぜ女子を嫌がるのか納得できないようでしたが、それでもルールを無視することはできないとやむなく断ります。

前作ちょい役だったロニーが、ムーラン属性を活かしたいいキャラに成長。髪型は黒髪ロングを下ろした無造作な感じです。彼女も前作でマルたちの姿を見て、自分らしくあっていいと思えるようになったのかもね。
しかし「ルールを守らないと」と言うジェイは完全にいい子すぎる。チャドのどや顔を見ろ。
ジェイは普通に男女の固定観念を持ってない感じ。確かに、ヴィランの方がむしろ性別にこだわらない感じがある気がしますね。

カルロスはチアリーダーのジェーンに声をかけ今度こそ舞踏会に誘おうとしますが、やっぱりはっきり言うことができません。おともの犬:デュードにも呆れ顔で見られてしまいます。
ジェーンの成長っぷりにもちょっとついていけん。前作ではコンプレックスの塊な地味っ子で、キレイになりたいがためにとんでもないことをしでかしたんですが、今作は有能な香りしかしない。
着信音芸、好きです。

マルはいい子のふるまいに嫌気がさしているという思いをカルロスにもほのめかしますが(また「懐かしくならない?」と相手に聞く形。マルはこれが癖みたいです)、カルロスはむしろ親に邪険に扱われることのない今の生活に満足しているようでした。
で、ジェーンに思いを伝えたいカルロスは、マルに頼んで本心を話せる魔法のグミを作ってもらいました。
ところが油断した隙にカルロスの犬がグミを食べてしまい、人間の言葉でべらべらしゃべりだします。そういう薬かよ。
なおカルロスとジェイの部屋には高性能の3Dプリンターがあるというのが重要情報。
鍵をパクッて勝手に侵入するチャドはワルすぎるぞ。

ロスト島のウーマ一味

さて華やかなオラドンの生活の一方、ロスト島は今日もチンピラの巣窟。

アースラのダイナーでたむろしているいつものメンツは、フック船長の息子:ハリー、ガストンの息子:ギル、そしてしぶしぶウェイトレスとして働くアースラの娘:ウーマ。
ハリーは見た目通りヴィランらしい意地悪でクールなセクシーガイ、ウーマのことを親分としてちゃんと立ててくれます。ギルはおとぼけでマイペース、ウーマのトラウマをえぐることをつい言っちゃいます。
「アースラのフィッシュ&チップス」ってディズニーリゾートにありそうですね。

テレビのニュースに映る”プリンセス”なマルを見てウーマはお怒り顔。ウーマの一声でダイナーに集まるチンピラたちもヤジを飛ばします。
ギルのデリカシーのない説明セリフによれば、ウーマは子供のころマルに”小エビちゃん”と呼ばれ完全にナメられていたらしい。

自分がこんな掃きだめで暮らしているのに、いけすかないマルがオラドン王家に入るなんてとても許せない。
ウーマはマルからオラドンを奪ってやろうと、手下たちとダンスで士気高揚!
曲もダークでカッコよくチャイナの響き渡る歌声がよく似合います。

What’s My Name(ホワッツ・マイ・ネーム:私の名前を言ってみな)

This is all hands on deck
全員 甲板へ

Calling out to lost boys and girls
迷子たちも集合

I’m gettin’ tired of the disrespect We won’t stop ‘till we rule the world
見くびるな 目指すは頂点

It’s our time, we up next! Our sail’s about to be set
主役は私たち 船出の時

They ain’t seen nothing yet Tell ‘em who’s in charge so they don’t forget
勝負はこれから 邪魔はさせない

このダイナーに集まる連中はみんなウーマの仲間というか手下みたいです。客いなくない?
海賊帽から分かる通り、彼女たちは自称海賊団(海にはバリアがあって出られないし)。

ウーマは”disrespect”に耐えてきた分、反動で大きな野望を抱いているようです。マルからだったり、母親からだったりなのかな。
“They ain’t seen nothing yet”は前作にも似た歌詞がありました。「お前らはまだ何も見てない=私たちはまだ何もやっていない」すなわち「これからもっとすごいことをしてやる」ですね。
“Tell ‘em who’s in charge”は直訳だと「誰が支配者か教えてやりな」

What’s my name, what’s my name?
私の名前は?

Say it louder
声高らかに

What’t my name, what’s my name?
私の名前は?

Feel the power
力がみなぎる

No one’s gonna stop us soon the world will be ours
すぐに天下を取ってみせる

What’s my name what’s my name? What’s it, what’s it, say it, say it loud
私の名前は? 言ってみて

うま!
名前を呼ばせたい、自分に注目させたい、というウーマの渇望。ヴィランらしい世界征服欲の話に聞こえつつ、彼女自身の自尊心を守りたいという思いも見えますね。だからウーマかわいい。

ハリーのエスコートするような身のこなしと、ギルのなれなれしい距離感が対象的でおもしろい。

All eyes on me, let me see ‘em
私を見てよ

What’s it, what’s it, say it, say it
私の名前を言って

“let me see ‘em”の歌い方かわいいよね。
ウーマの小柄なボディに長い水色の髪が舞い踊って本当に体の一部みたい。
すっごい踊りづらそう。絡まっちゃってNGがいっぱいありそう。

I’m the queen of this town I call the shots, you know who I am
私はクイーン 命令に従って

I don’t need to wear no fake crown Stand up to me, you don’t stand a chance
偽の王冠なんか必要ない

It’s our time, we up next My crew’s as real as it gets
主役は私たち 仲間も勢ぞろい

The worst is now the best And leaving us here will be their last regret
一発逆転 後悔させてやる

“call the shots”で命令を出すとか仕切るって意味だそうで。
この手下の数を見るに、確かにウーマはなかなかの有力者のようです。アースラとマレフィセントは仲悪かったのかね。アースラ水の中じゃないと活動できないみたいだし、この町ではむしろ大人しくしてたのかも。
マルは一匹狼な感じでしたし、こうやって仲間とつるんでるボスはウーマが唯一なのか?

“the worst is now the best”もディセンダントでよく出てきた表現。badがgoodであるっていう価値観ね。

You know what they say Bad girls have all the fun Never learned how to count ‘cause I’m number one
いつだってワルがナンバー1

Ready here, we come We always get our way It’s a pirate’s life, every single day
あちこちで海賊が大暴れ

She’s the captain, I’m the first mate Enemies seasick can’t see straight
俺は船長の相棒 敵はフラフラ

Call ‘em fish bait, throw ‘em on a hook Uma’s so hot they get burned if they look
ウーマはアツアツ ヤケドに注意

ハリーが脱ぎますねえ。ジェイに対してウーマ側の肉体美担当。
“number one”でウインクするウーマがキュート。

ラップは語数が多いから字幕翻訳には省略されちゃう部分が多くなっちゃいます。ちょいと補足。
“Never learned how to count ‘cause I’m number one”は直訳すると「数の数え方を覚えられない、俺はいつでも一番だから」
“We always get our way”は「俺たちいつもやりたいようにやる」
“seasick”は船酔い、”fish bait”は釣りの餌、海賊っぽい言い回しです。
ウーマの”hot”は私もよく使う意味のホット、つまり「アツい、カッコイイ、セクシー、イケてる」っつーとにかくクールな意味の誉め言葉。クールとホットって似た意味だったりしておもしろい。
「見たらヤケドするぜ(”they get burned if they look”)」でみんな顔をそらす振付がいいね。

It’s all eyes on me, let me see ‘em
私を見てよ

I see your eyes on me boys, hey
視線を感じる

You know what my name is
私を知ってるはず

Say it, say it louder
大きな声で言って

Hook me!
フックして

ウーマがみんなに文字通り持ち上げられる振付がなんか微笑ましい。
「フックして(“hook me”)」はようわからん言葉ですけど、ハリーの手のフックにかけたノリの言葉だと思われます。このセリフの後でハリーが雄叫びを上げたりウーマが笑ってハリーを小突いたりしてるので、「頼りにしてるよ」的な意味じゃないかなあ、ハリーのソロパートの後のセリフだし。

最後は網で捕まえられたギルの足に乗って玉座まで移動。
かっこよく決めましたが、触手だけ伸ばしてきたアースラにさっさと皿洗いしろと怒られちゃう。
アースラは娘がこんな野望を持ってることを知ってるのか知らないのか、興味がないのか本気にしてないのか。ウーマの口ぶりからすると相手にしてないみたいですね。ちなみにもう登場もしません、アララ。

で、またもや小エビちゃん呼ばわりしたギルを廊下に立たせて次のシーンへ。

ベンとマルのピクニック

ベンとマルは湖のほとりの東屋でピクニック。
マルの用意した豪華な料理にベンも心から喜んでくれました。

が、ベンはバスケットの中にマルの魔法の本があるのを見つけてしまいます。
しるしの付いたページに載っているのは、金髪の呪文、速読の呪文、料理の呪文……。
マルが忙しい中で努力してくれたと信じていたベンはショックを受けます。さらにマルが思わず時間を巻き戻す呪文を口にしてしまったせいで、温厚なベンも声を荒げてマルを責めてしまいました。

ベンの「ここはロスト島じゃない」の言葉にマルも本心を言い返します。
マルは、自分は偽物だ、魔法で飾るのをやめた”本当の自分”は王家にふさわしくないのだと言って、立ち去ってしまいます。
その言葉にベンはマルが一人で抱えてきた苦悩を悟るのでした。

ベンが怒鳴るのはこのシーンが初めて。彼自身も王としての重圧に苛まれながらも「マルと一緒だから」と思って頑張ってきたのに、裏切られた気がしてしまったんですね。
ですが切り替えの速さがさすがのミスター・ナイスガイ。マルの言葉を聞いてすぐさま彼女の気持ちを分かっていなかったことを理解し、傷つけてしまったことを後悔しています。
「君もつらかっただろうけど、だからって嘘をつくなんてひどいじゃないか!」っていうことを全く考えてないんですよ。彼には他責の念がなさすぎる。天使か?
ただ、逆にベンがこんなに清廉で優しいからこそマルのつらさも増すんですよね。

寮に帰ったマルは泣きながらいつもの服に着替え、マレフィセントトカゲを箱に入れて連れ出します。
そして魔法の本の力で海を渡り、ロスト島の自分の隠れ家へと帰ってしまいました。
ロスト島上陸時のBGMは前作の”Rotten to the Core”。

その後、ベンの執務室に訪れたイヴィがマルの置手紙と残していった指輪を見せます。
謝るためマルを探しにロスト島に行くというベンに、イヴィも顔を曇らせながら同行すると言うのでした。
ロスト島に行くというときのイヴィの切ない顔。彼女はできることなら戻りたくないんですね。嫌な思い出の場所であるのと同時に、心のどこかで今も島にいる子供たちのことを考えてしまってるんじゃないでしょうか。
ベンもイヴィを心強いと思いながらも、彼女の葛藤をちゃんと感じ取ってあげています。チャドなら素直に「だよな、一緒に来てくれよ、ラッキー!」って喜ぶだけだな。

ロスト島の小さな美容師

ロスト島に帰ってきたマルがまず向かった先は「トレメイン夫人の美容室」。
トレメイン夫人はシンデレラの意地悪な継母ですね。

色とりどりの染料で飾られたというか汚れたというかな店内を掃除するのは、アバンギャルドなファッションのメガネちびっこ。
彼女はディジー・トレメイン。意地悪な姉の一人:ドリゼラ・トレメインの娘です。
ディジーはマルを見るなり顔を輝かせ、イヴィも一緒かと尋ねます。
この無邪気な笑顔の通り、彼女はとってもいい子。ファッション仲間であるイヴィを特に慕っているのです。
演じるアンナ・カスカートちゃんはダヴたちの大ファンでもある新人女優さん。憧れのスターたちとの共演に一所懸命取り組んでますね。
ディジーが聴いてた曲は”Rather Be With You(あなたと一緒なら)”、サントラにちゃんと入ってます。あなたと一緒なら悪いことが起きても全然平気っていう歌。

ディジーは見習いながらもヘアメイクの腕はイヴィが認めるほど。
マルに変な金髪を「私らしく邪悪にして」と依頼され、ディジーは喜んで腕を振るいます。
ディジー「顔と髪の毛の境目もわかんない!」割と毒舌ですね。
染め染め、チョキチョキ、巻き巻きで、ヴィランらしいクールなマルが帰ってきた!
色は前よりもピンクに近いパープル。シンプルなストレートに美しいお顔立ちが引き立っていらっしゃる。

お代をもらって喜ぶディジーのもとに海賊ハリーが登場。
美容室の儲けを巻き上げたついでにマルの帰還を知り、ウーマに言いつけに行くようです。
ハリーのやってることは使いっぱしりそのものなんですが、妙に上品でセクシーな立ち振る舞いが小物感を消してますね、不思議。マルへの色目も様になってる。
演じるトーマス・ドハーティ君はゴスなメイクがものすごく似合います。勝手にヘルストームと呼びたい。

ベンのロスト島上陸

ベンを連れてロスト島に向かうイヴィ、ジェイ、カルロス。
目立たないようベンにもヴィランっぽい鋲付きレザージャケットとニット帽を着せてます。

前作で四人が来たときに乗ってきたリムジンを使って海を渡り、ロスト島に上陸。
警備どうなってんだって感じですけど、まあオラドンから島に渡ろうなんて人はまずいないってことでしょう。

リムジンを隠してマルを探しに町の中へ。
イヴィは財布をすろうとしてきた子供たちを捕まえますが、責めることができずそのまま財布を渡しました。
自分がオラドンで夢をかなえたからこそ、島で未来を奪われた子供たちに心を痛めずにはいられないんですね。

さて、服装だけヴィランっぽいベンですが、にこやかで愛想のいい振る舞いは目立ってしょうがない。
イヴィたちはベンにヴィラン流の身のこなしを伝授します。
劇中歌としては初のイヴィメイン曲なんですけどマジチリン。

Chillin’ Like A Villain(チリン・ライク・ア・ヴィラン:クールなワルに)

Let me tell you something you can really trust
いいこと教えてあげる

Everybody’s got a wicked side
誰でもワルになれる

I know you think that you can never be like us
私たちに憧れちゃう?

Watch and learn so you can get it right
よく見て勉強して

ここでイヴィの笑顔がやっと見られます。マルがいなくなってからずっと思いつめた顔で美しかったんですが、ダンス中の妖艶な表情も美しいですね。

三行目は直訳だと「あなた、私たちみたいになれるわけないと思ってるんでしょ」
みんなであごしゃくるのがかわいい。

You need to drag your feet
足を引きずり

You need to nod your head
首を振って

You need to lean back
重心は後ろ

Slip through the cracks
人目を避け

首を振るときのイヴィが艶っぽすぎる。
“slip through the cracks”は直訳だと「裂け目を滑りぬける」、裏道をこっそり通るイメージ?

You need to not care
素っ気なく

Uh, you need to not stare
ジロジロ見るな

You need a whole lot of help
練習しなきゃ

You need to not be yourself
そのままじゃダメ

さらっとベンの財布をすってにっこりのジェイ。ブーブーにはクリス・ヘムズワースのようなキュートさを感じる。

“you need a whole lot of help”は直訳だと「あなたにはしっかり手助けしないとダメね」
“you need to not be yourself”は象徴的なフレーズ。これまでのテーマは「自分らしくあれ(Be yourself)」だったんですがここでは「自分らしくあっちゃダメ(Not be yourself)」なわけ。

このシーン、シナリオ的には単にマルを探すのに目立たなくふるまおうっていうだけなんですけど、歌詞を読んでるともっと深い意味を感じますよね。
マルは自分を殺して「いい人」のふるまいをしてた。ベンはそのつらさに気付かずマルを傷つけてしまった。そんで今度はベンが自分を殺して「ワル」のふるまいを身に着けようとするというわけで。
尺が許したらベンが本当に「ワルになろうとする」エピソードもあったんじゃないかなーと勝手に思ってます。こういう考察がファンフィクションを生む。

You wanna be cool?
クールになりたい?

Let me show you how
教えてあげる

You don’t break the rules
ルールを破って

I can show you how
教えてあげる

興味をひかれてるベンの無邪気な表情がいい。
魔女に誘惑されてる王子様みたいだ。

“you don’t break the rules”は「あなたはルールを破らない(だから教えてあげる)」
“break the rules”の高音が気持ちいいぞ。

二行目と四行目はちょっとニュアンスが違うのだね。
“Let me show you how”は「私に教えさせて」
“I can show you how”は「私なら教えられる」

And once you catch this feeling
体で覚えて

And once you catch this feeling You’ll be chillin’, chillin’
覚えればクールになれる

Chillin’ like a villain
ヴィランズみたいに

Cillin’
クールに

“Chill”はけだるい若者が言いそうな言葉のイメージ。
ここでは「クール」「カッコイイ」の動詞ですね。
辞書的な意味は「冷たい」なんですがそこから派生して色んな意味が。
アイアンフィストが”chill out, dude”と言うときは「落ち着けよ、兄弟」。

チリンな振付をベンもぎくしゃくと練習。カルロス、前は自分がトーニーを教えてもらってたからベンに教えるのがちょっと嬉しそうですね。
きびきび踊る二人に対してジェイだけなんか楽しそうなのがいい。

You get attention when you act like that
そういう態度は人目を引く

Let us teach you how to disappear
存在感を消して

練習できたところでいざ通りに出てみましょう。
怪しいおじさんに興味を示すベンをたしなめるイヴィ。

ここはさっきマルが髪を染めてもらってたディジーの美容室前ですね。
夜だけどまだ開店してないっぽい。

You look like you would lose a fight to an alley cat
それじゃ野良猫にも勝てない

You gotta be wrong to get it right ‘round here
生き抜けるのはワルだけ

にゃーん。
“you gotta be wrong to get it right around here”は「ここじゃ正しくする方が間違い」ですかね。

おーっと、後ろに”HADES SOUVLAKI”の看板が。”SOUVLAKI”ってことはギリシャ料理のお店でしょうか。”HADES”といえばギリシャ神話のハデス、映画ヘラクラスのディズニーヴィランですねー。
彼の登場は第3作を待ちましょう。

You need to watch your back
背後に注意

You need to creep around
足音を忍ばせ

You need to slide real smooth
スムーズに

Don’t make a sound
音を立てず

And if you want it, take it
欲しけりゃ奪え

And if you can’t take it, break it
奪えなきゃ壊せ

If you care about your health
自分を守れ

Seriously, you need to not be yourself
そのままじゃダメ

まさかヒールであの幅で踊ってるのかと思ったけど若干踊りやすそうな靴……かな?
コケたベンをカルロスがさりげなく助け起こしてあげてます。

「欲しけりゃ奪え 奪えなきゃ壊せ」はこれぞヴィランってフレーズ。
一番の悪は「奪った上で壊す」かもね。

ベンもだんだんとヴィラン流を身に着けてきました。
同じ振りでもイヴィはセクシーに男子はクールに印象が変わるのがすごいよね、今更ですけど。

I really wanna be bad a lot And I’m giving it my best shot
これでもワルを目指してる

But it’s hard being what I’m not
でも難しいよ

Well if you don’t you’re gonna get us caught
やらなきゃ捕まるぞ

He’s right, we gotta stay low-key
身を潜めなきゃ

Now show us how bad you can be
やってみて

Like this?
こう?

Like this?
どうかな?

“low-key”のkeyは音のキーと同じ意味みたい。
「控えめな」って感じの口語表現ですね。

無邪気に踊ってたベンでしたがしっかり学んだようです。
抱きついたフリしてジェイたちからしっかり物をすってました。ナイスバッドガイ!

Oh yeah, I think I got this Let’s go, I’m ready to rock this
コツはつかんだぞ さあ いってみよう

And I ain’t gonna thank you for your help I think I found the worst in myself
礼は言わない ワルだから

“I think I found the worst in myself”は「こんなにワルになったのは初めてだ」
その気になってきたワルのキングベン。
四人で肩を並べて進みます。

歌はここまで。全員の動きがカッコイイしかわいらしいから何度も見てしまう。

ベンももうバッチリ、一人前にワルにふるまえそうだと拍手で送りだしたんですけども。

そこに登場、アホだけど勘の良い子ギル。
ベンを呼び止めどっかで見た顔だなあと眺めてたら、後ろに貼ってあるオラドン王のポスターと似てることに気づいちゃった。
ベンじゃーんと指さされてベンたちは慌てて退散。
ギルはウーマに知らせなきゃとウキウキ立ち去ります。

ギルの父ガストンは美女と野獣でベルに強引なアプローチをしたヴィラン。脳みそ筋肉のアホ成分がギルにもよく出てますね。
なので美女と野獣の息子であるベンとは因縁があるっちゃーあるんですけど、まったく屈託なしでしたね。
彼はウーマの仲間ではあるんですが、あんまり人の好き嫌いはなさそうです。
正直だからウーマに対してもつい言っちゃいけないこと言っちゃうのが持ち芸。
演じるディラン・プレイフェア君は、この役ではふんにゃふにゃしてますがキリっとした顔をすればなかなかハードな印象に。ボディも実はキレキレです。

ベンはイヴィたちの案内でマルの隠れ家にやってきました。
倉庫のような生活感のない広い部屋には、マルとイヴィの趣味のものがたくさん。
ベンは壁に絵を描くマルに声をかけ、責めてしまったことを謝り指輪を再び渡そうとします。
オラドンのみんなも自分もマルが好きだ、戻ってきてほしいと訴えるベンでしたが、マルは拒否します。
マルは自分の存在がベンのこともオラドンのことも「悪」に導いてしまうと思わずにいられないのでした。

「自分はいるべきでない」と言うマルに対してベンは「君の気持ちは?」と返しますが、マルは答えることができませんでした。前作と同じ、マルは頭と心が別の言葉を語ることに苦しめられています。
友達と一緒にいたい、ベンと一緒にいたい、いたずらしたい、ルールを破りたい、自由でいたい、いい人でいたい、というアンビバレントな気持ちを好き勝手に叫ぶのが心。それらを「これは採用」「これは捨てる」と仕分けようとするのが頭。
頭の統制が強すぎると心に対する抑圧も強くなる。ぎゅーっと押しつぶされた心は苦しさに耐えかねて動くのをやめるか、逃げて閉じこもることしかできなくなってしまいます。

マルの強い態度にベンも返す言葉がなく、うつむいて立ち去ることしかできませんでした。

そしてイヴィたちがマルに気を取られている間に、ベンが姿を消してしまいます。
代わりに現れたハリーは、ベンを返してほしかったらマルに一人でウーマの店に来るよう要求しました。
マルはイヴィたちに事情を聞き、一人でウーマの元に向かいます。

ウーマの条件

ウーマ(が働く)の店にやってきたマル。
挑発的な態度でベンの居場所を聞くマルに、ウーマは取引をしようと腕相撲勝負を仕掛けます。
「条件出すのは母親そっくり」

客たちが注目する中、軽口を叩きつけながら睨み合う二人。
ウーマの条件では、マルが勝ったらベンを解放する。
だがウーマが勝ったら、フェアリー・ゴッドマザーの魔法の杖をもらうという。
魔法の杖という言葉を聞いて戸惑うマルの一瞬の隙をついて、ウーマが腕相撲に勝利。

ウーマは明日の正午に魔法の杖とベンを交換してやると言って勝ち誇った笑みを浮かべます。

腕相撲でマルの目が光るのはクールなんですが、魔法の杖と聞いた瞬間に負けちゃうほど驚いたのはなぜ?
ウーマがそこまでスケールの大きい要求をしてくると思ってなかったのかも。マルにとってはしょせん小エビちゃんだったわけだし。
ウーマもしぶしぶウェイトレスをやって客に怒鳴られたり、今のところあのダンスほど大物っぽい属性は見受けられないんだよね。
マルを嫌ってるのもちょっと憧れが入ってるんじゃないかと思わせる。誰かに対抗意識をもってこだわるのは、その人に認めてほしいって思いの裏返しでもあるんですから。

ベン奪還作戦

戻ってきたマルはイヴィ達と作戦会議。
寮の男子部屋にあった3Dプリンターで偽物の杖を作り、ウーマ達の気を引いている隙にベンを助け出そうと考えます。
気を引くには煙玉。煙玉は美容室にある化学薬品で作れる……というわけのわからない論理によって、マルとイヴィはディジーの美容室にやってきました。

ディジーは戻ってきたイヴィを見て大喜び。
昔のデザインブックを見せてもらったイヴィは、自分が今作っているデザインが昔のインスピレーションに基づいているものだと気づきます。

「島を離れても島の心いつまでも」
ディジーの言葉がイヴィの心に何かを生んだようです。

イヴィが気に入ってくれたお手製のアクセサリーを、ディジーは「オラドンに持って帰って」とたくさんプレゼントします。
目的の煙玉をこしらえたマルは帰ろうとしますが、イヴィはディジーの才能がこのまま島で埋もれてしまうのが切なく、名残惜しさを隠せませんでした。

一方、カルロスとジェイは島を出て寮に戻ってきたのですが、部屋に勝手に入ったチャドが3Dプリンターを使っていました。
チャドは相手にせず杖を作ろうとしますが、正直な犬が口を滑らせてベンが捕まったことを大声で話してしまいます。ベンがいなくなったら自分が王様だと夢想するチャドはさておき、廊下を通りかかったローニーが話を聞いていたことにカルロスとジェイは気づきませんでした。

マルとイヴィ 2人の距離

美容室からの帰り、マルとイヴィはたわいのないおしゃべり。
その合間、イヴィはマルの本心を尋ねます。

オラドンに戻る気はないと言うマル。マルが残るなら自分もと言うイヴィでしたが、マルはそれを望んでいません。イヴィはオラドンでこそ輝くことができるとマルは理解していたのでした。
前作、女の子らしいインテリアの寮に部屋を見てイヴィが顔芸するほど喜んでたのをマルはちゃんと知ってたんですね。知っててけなしてた、さすが悪い子。

マルを放っておけないイヴィ、イヴィを自由にしてあげたいマル。
相手を想い合うために相いれない気持ちが美しい歌に載って響きます。歌謡曲の紹介みたいになっちゃった。

Space Between(スペース・ビトウィーン:別れた世界の交わる場所で)

I didn’t know what you were going through
悩んでたこと 知らなかった

I thought that you were fine Why did you have to hide?
大丈夫そうだった なぜ隠してたの?

I didn’t want to let you down but the truth is out
期待を裏切れない 無理だったけど

It’s tearing me apart not listening to my heart
苦しかったの 心を無視するのは

前作から二人は一緒に行動していたもののずっと仲が良く、言い争うこともありませんでした。お互い弱音を吐くこともできる本当の友達だったんです。
でも今回はマルは悩みをストレートに言わなかったし、イヴィも自分が順風満帆だったためにマルの様子に気付けませんでした。

I really had to go
帰るしかなかった

And I would never stop you
止めなかったよ

Even though it changes
変わったよね

Nothing has to change
変わらないで

このへんはちょっぴり言い争いチックな歌詞なんですが、本心を言い合うことで同時に和解もしてる。

“even though it changes nothing has to change”は「何が変わっても変わらないといけないものなんてない」でしょうか。変わらないのは二人のお互いに対する想いだね。

And you can find me in the space between Where two worlds come to meet
2つの世界が交わる場所で

I’ll never be out of reach
待ってるから

“space between”もイメージは分かるのにしっくりくる日本語がないですね。
“you can find me in the space between”は文字通り「別れた世界の間に私はいる」
“I’ll never be out of reach”は「手の届かない場所にはいかない」

二人のハーモニーが美しいですね。

‘Cause you’re a part of me So you can find me in the space between
私たちは1つ また会えるよ

You’ll never be alone No matter where you go
独りじゃない どこにいても

We can meet in the space between
必ず導かれる

前作の思い出のシーンが続きます。二人ともかわいいね、2年経ってだいぶ大人になったのがよく分かる。

最後は「導かれる」という言葉を使ってます。運命的な意味がどこかにあるのかな。”can”だからかな。

映画では省略ですが、2番のイヴィがマルに向けた歌詞が素敵です。
Be proud of all the scars They make you who you are
傷を負ったマルはきっと他人の痛みも知ることができる。島に残ったからと言って彼女は「悪」に戻るわけではないのです。

There are no words left to say
何も言わないわ

We know you’ve got to find your place
居場所があるのね

But this is not the end
終わらないよ

You’re part of who I am
私たちは1つだから

Even if we’re worlds apart You’re still in my heart
世界が違っても 心でつながる

It will always be You and me, yeah
いつまでも友情は続く

“you’re part of who I am”は”you’re part of me”より深いイメージ。
あなたがいたから今の私がある、という感じでしょうか。

額を合わせる二人はほんとにかわいい。

二人はお互いの生きる道を認め合いながらも、心は今までと変わらずつながっていることを確かめる歌でした。
マルとイヴィの関係は実に尊い。くだらない意味ではなく字義通りの”divine”です。

一方そのころ、男子二人はお昼寝中。お前らもちょっとは感傷的にならんのかい。
が、魔法の杖の偽物を作れたのはお手柄!

パチモンの魔法の杖を持ち、しゃべるワンコは置いて再びリムジンに急ぐカルロスとジェイ。
ばったり会ったダグを無理のある言い訳でごまかしたところで、今度は剣を持ったロニーと遭遇。
どうやら戦の血に目覚めたロニーはベンを助けに行く気満々。
ゴッドマザーには黙っててやるからと脅され、二人はやむなくロニーを連れて島に急ぎます。

ウーマ一味と対峙

ベンはウーマたちがアジトにしている海賊船でマストに縛られていました。
マルが来るのを待つ中、脅されながらも動じていないベンはウーマと話をします。
君も一緒にオラドンに行こうと誘うベンでしたが、ウーマは今更聞く耳を持ちません。
そんなウーマの態度を見て、ベンは自分が選ばなかった他の子どもたちを傷つけていたと悟ります。
真摯なベンの言葉にウーマの瞳がわずかに揺れますが、いい人になろうという誘いはやはり撥ねつけられました。
ウーマは母親のネックレスの力で何か企んでいるようです。

ここのベンはまったく他意がないんだと思いますが、たぶらしてるようにも見えちゃう。「君のことが知りたい」っていうのはただ本当に「知らずに悪と決めつけたくない」っていう本心だと思います。
無邪気すぎる人って本心を話してるのにお世辞だとかぶりっこだとか思われちゃうのである。
イヴィを悩ませていたこと、「島に残されたマルたち以外の子ども」の存在をベンも改めて認識します。
ウーマが今こんなにひねくれてしまったのは自分でなくマルが選ばれたからなんだとすると、前作でもしウーマ・ハリー・ギルが選ばれていたらというIFが気になってきますね。

ハリーはベンを吊るしたくてたまらないようですが、ウーマの方はベンにあまり悪意がないようです。
ベンはウーマに寄り添おうとしますが、ウーマは「あたしは独りでいい」。彼女はハリーたちのことも仲間だとは思えないんでしょうか、いや、そうとは思えない。

その頃、カルロスとジェイ、ロニー、ついでにしゃべるワンコ:デュードも再び島に到着していました。
クルマを停めていた場所でベンが気にしていた丸い通路は、ウーマの船着き場につながっていたようです。

マルたちとウーマたちが正面から対峙しラップ対決だ! 文字数が多いぞ!

It’s Going Down(イッツ・ゴーイング・ダウン:決闘のとき)

Huh, let’s get this party started I swear I’m cold-hearted
パーティーを始めよう

There’s no negotiation I’m not here for debatin’
交渉の余地はない

You need some motivation? Just look at Ben’s face
いとしの王を救いたい?

Then ask yourself how long you think I’ll remain patient
私は我慢の限界

I’ll throw him overboard and let him swim with killer sharks
サメに食わせようか

You either hand over the wand or he’ll be ripped apart
もしくは杖と交換だ

チャイナのハスキーな声はラップによく似合う。
直訳っぽく全部の言葉を訳すとこんな感じ。

パーティーを始めよう あたしは冷酷な女
交渉なんてしない おしゃべりにしに来たんじゃない
その気になれないならベンの顔を見るがいい
あたしがどれだけ辛抱してやるか考えてみな
船の外に投げ出して 人食いザメと泳がせてやろうか
嫌なら杖を渡しな さもなきゃベンは八つ裂きだ

“you need some motivation?”のところ、”motivation”は何かをやろうっていう動機ですね。
ベンが人質なのをお忘れなくってフレーズ。

この感じでもう、杖を渡したからといって大人しく帰してもらえるわけがないと分かりますね。
戦いの前のピリピリした空気をかもしだす、今作のアクション色を代表する曲。

Now, let’s all just be smart Although for you that must be hard
もっと頭を使えば?

You’ll get your wand No one has to come to any harm
杖はあげる 乱暴はやめて

Don’t try to intimidate Your bark is much worse than your bite
吠えてもムダ

Who’s the baddest of them all? I guess we’re finding out tonight
今夜が決着のとき

多勢に無勢、不利な状況であるもののマルは挑発的なラップで応戦。
人質をとられてるからといって下手に出る気はありません。

もっと頭を使えば? あんたには難しいだろうけど
杖はあげる 戦いに来たわけじゃない
威嚇してるつもりだろうけど 噛もうが吠えようが怖くない
一番のワルが誰なのか 今夜が決着のとき

“your bark is much worse than your bite”はそのままだと「あんたが吠えるのは噛みつく以上にひどい」、何言ってもこっちはびびらないよっていう挑発ですね。
“who’s the baddest of them all”は前作の代表曲”Rotten to the Core”からのフレーズ。結局マルたちも戦う気満々だと言ってます。

Let’s go, bring it on Better give us what we want
モタモタするな 早く渡せ

It’s the wand for the crown If you don’t, it’s going down
杖をよこさなきゃ決闘だ

ウーマ達の要求、王(“crown”)を返してほしくば先に杖(“wand”)を渡せ。

“bring it on”はよく聞くフレーズですね。さっさとしろ、かかってこい、とにかく挑戦を受けるぞという威勢のいい呼びかけ。
“It’s going down”は曲名でもある。これもフワっとした意味で適切な日本語が難しいんですけど、「今にも勃発しそう」っていう一触即発なイメージだと思います。

Let’s go, make your move Peace or war, it’s up to you
モタモタするな 早く選べ

Give him up and do it now If you don’t, it’s going down
王を返さなきゃ決闘だ

マル達の要求、大人しく帰ってほしかったらまずベンを渡せ。

“peace or war, it’s up to you”は「平和的解決かケンカするか、お前たち次第」
交換条件は飲んでやるといいながらも、あくまで主導権は自分たちがとろうとしています。
ケンカになったらこっちが勝つぞと。

ロニーの力強いダンスがカッコイイ。彼女もヴィラン風になじんでますね。

We want the wand Or else the king is gone
杖をよこせ 王が危ないぞ

Your time is running out You should really watch your mouth
もうすぐ時間切れ

Let’s go, pound for pound We’re prepared to stand our ground
モタモタするな かかってこい

Put your swords up, put ‘em up It’s going down
剣を構えろ 決闘だ

Oh, oh, oh, make the trade
交換するか

Oh, oh, oh, or walk the plank
海に落ちるか

マルの生意気な言葉にウーマ達は強硬な態度を見せつけます。

“You should really watch your mouth”は「言葉に気をつけな」
“pound for pound”はまたニュアンスで判断だ。言葉の意味としては「比較する」で、「ベンか杖か選べ」の意味にとれます。ただ次に続く言葉が”we’re prepared to stand our ground(こっちは退く気はない)”なので、「戦力じゃそっちに負けてない」って意味にもとれる?
“walk the plank”はフック船長のお得意、「板の上を歩け」ですね。

Okay, look, this is not a conversation It’s a do-or-die situation
これは生きるか死ぬかの勝負

If you don’t give me back the king I’ll have no hesitation
彼を返してもらう

I’ll serve you right here And I don’t need a reservation
相手になってあげる

That way your whole pirate crew can have a demonstration
海賊たちに出番をあげる

Release him now, and we can go our separate ways
さっさと彼を解放して

Unless you wanna deal with me and the VKs
それとも勝負を挑む?

マルもまだまだケンカ腰。韻を踏んで返します。

分かった 話してもムダってことね これは生きるか死ぬかの勝負
彼を返さないなら容赦はしない
予約なしでも相手してあげる
そしたらあんたの海賊仲間にも出番ができる
さっさと彼を解放するなら立ち去ってあげる
それとも私たちに勝負を挑む?

“do-or-die”は「やるかやられるか」って感じ。
“reservation”は”serve”とかけて使ってる言葉なんだと思います。たぶんそんなに意味はない。
“deal with”もよく出てくるニュアンスの言葉、「やりあう」って感じか。別の意味だけど勝負の約束とか契約したときに”deal!”って言うのもドラマでよくありますね。
“VK”はディセンダント用語、”Villain Kids(ヴィランズの子供たち)”の略。ロニーは違うけど。

So that’s your big speech, huh? An empty ultimatum?
宣戦布告のつもり?

All it takes is one swing and I’ll humiliate him
ナメるなよ

Matter of fact, make one wrong move and I’ll debilitate him
甘く見るなよ

And if he even starts to slip, I’ll eliminate him
怒らせるなよ

All it takes is one long look and I’ll…
ケンカ売るなよ

Harry! We get it, chill
ハリー もう分かった

生意気なマルにハリーが色々言い返しますがウーマになだめられます。

大口は終わり? 中身のない最後通牒
殴ってみろよ あいつを辱める
変な動きをしてみろ あいつを弱らせる
ジェイが動いても あいつは終わり
じろじろ見るのも許さない あいつを……
ハリー! 分かったから落ち着きな

ハリーパートは難しい。ノリ重視でぴったり合う日本語がない。
“all it takes”は「それだけで充分」
“swing”はパンチだと思うんだけど。
“And if he even~”はの”he”はジェイを指しながら言ってる。
“humiliate””debilitate””eliminate”は韻だよね。ひどい目に遭わせるってこと。
最後の投げキッスがセクシー。

ウーマの最後の”chill”は「落ち着け」

ところでギルは歌わないですね。にこにこ楽しそうに踊ってるからいいか。

一触即発ムードの中、とうとう杖(の偽物)を取り出してウーマのもとに向かうマル。
そこに、板の端に追いつめられたベンが声を上げます。

Hey, we don’t have to choose We don’t have to light the fuse
待て 選ばなくていい 戦わなくていい

Mal, whatever you do, it’s gonna be a lose-lose There’s gotta be a better way
マル こんなのダメだ 他に方法がある

Uma, I promise I’ll give you your chance You’ll have your say
ウーマ チャンスを与える 話を聞くよ

Silly king! You? Give me? Your’re gonna give me a chance?
王様がチャンスをくれるって?

Well, not a chance
そんなのお断り

サメに食わされそうな状況でも勇敢なベン。
ベンは杖や自分がどうこうよりも、マルとウーマが火花を散らす状況を止めようとしています。
戦いよりも平和的な話し合いの道を示しますが、やはりベンの言葉は届きません。

“light the fuse”は「導火線に火をつける」
“whatever you do, it’s gonna be a lose-lose”は「どうするにせよこれじゃ誰も得しない」
“lose-lose”は”win-win”の反対ですね。

歌はここまで。
橋の上、杖を持ったマルにウーマが近づきます。

杖が本物か証明しろと迫るウーマに、マルはたまたまついてきちゃってたカルロスの犬に魔法をかけたフリをします。
もともと魔法がかかってたことなど知らず、しゃべる犬を見て杖の力を信じたウーマたち。
用済みのベンをちゃんと解放してあげます。
ギル「ガストンからって伝えといて、お袋さんによろしく、オヤジさんにお前なんかさっさとやっつけとけばよかったって」彼は癒し担当。
っていうか島のバリア今ないの? バリアがあると魔法使えないって忘れてるだけ?

ベンを無事に取り戻したはいいものの、さっそく杖を使おうとしたウーマにすぐさま偽物だとバレてしまいました。
剣を掲げて乱闘開始!

人数が明らかに違うんですが、一人に対して複数同時に斬りかからないという騎士道精神にあふれた海賊らしく、マルたちも互角以上にやりあいます。
マルとイヴィも剣術が達者なんですね。マルはウーマと一対一で戦ったら優勢。
ハリーはジェイに対抗意識を持ってるようですが、フックを取られて海にポイされちゃう。
迷わずに海に飛び込んでフックを拾ってきたハリー、桟に上がろうとしたときウーマが手を貸してくれて嬉しそうでした。
ロニーはものすごく生き生きと戦ってました。華麗かつ強い。

煙玉でかく乱した隙に抜け道に飛び込んだマルたち。
追ってこられないよう橋を落として、リムジンに乗りこみ逃げおおせました。
だが逃げる途中、マルは魔法の本を落としてきてしまいます。

オラドンへの帰還 三人の成長

車内で再び顔を合わせたマルとベン。
ベンは自分のせいだと謝りながらも、島に来たのはいい経験だったと言います。
ウーマを憎んでおらず、オラドンに来たころのマルと似ていると言うベンに、マルは複雑な思いでした。

オラドン高校ではみんないつもの昼下がりを過ごしています。
やってきたジェーンが、ベンに今夜の舞踏会で披露するステンドグラスのデザインを確認します。
舞踏会のことを思い出し顔を曇らせるマルに、ベンは君の好きにしていいとだけ言い残して立ち去りました。
ジェーン、ベンの服にノーコメント?

マルと二人だけで話をしようするイヴィを、カルロスが呼び止めました。
女子トークで除け者にされたくない、自分たちも仲間だから一緒に話したいと率直な思いを伝えます。

マルは泣きそうな顔で自分はオラドンのプリンセスになれないという不安を口にしました。
ベンが運命の人なら本当の姿を受け入れてくれる、彼にチャンスをあげようと勇気づけるカルロス。
ロスト島で育ってきた自分を認めてあげていい、オラドンの子と違っててもいいと励ますイヴィ。
ジェイは女子トークの雰囲気に居心地悪そうでしたが、ダメだったら帰ればいいんだとマルの不安を受け止めてあげます。
四人がそろって真面目な話するのは前作のクライマックス以来ですよね。最初は末っ子みたいだったカルロスがみんなをまとめるなんて成長を感じさせるシーン。ジェイのさっぱりしたフォローがまたいい。
イヴィも島にいた自分を捨てずに受け止めてあげることができるようになったみたいです。

マルは今夜の舞踏会に来るんでしょうか。

さて、ジェイはフェンシングチームに重大発表。
「チームを構成するのはキャプテンと8人の男子」のルールに従い、ロニーを新キャプテンとしてチームに迎えることに! チャドもこれには言い返せませんでした。
チャドを足蹴にするロニーすてきです。

マルのためにドレスを手直ししていたイヴィの部屋に飛び込んできたのはダグ。
昨夜カルロスとジェイがイヴィの居場所をごまかしたせいで、誰かとデートしてたんじゃないかと不安になっていたようです。
いつになく激しいダグの剣幕にイヴィは呆れ顔で「おとぼけさんね」。本当の事情を教えてあげてほっぺにチュー。

イヴィは自分がチャンスをもらえたように他の誰かにもチャンスをあげたいと話しました。
ダグはごきげんの息子をライバル視してるらしい。

そしてカルロス。さっきマルにびしっと言ったように、今度こそジェーンをびしっと舞踏会に誘う……だけじゃなくて愛の告白もしてしまいました。
喜んでハグを返してくれたジェーンにカルロスも「やった!」。勇気づけてくれたデュードのおかげ。
ジェーンの電話の相手に全部筒抜けだったと思うけどね。

ついでにチャド。またもカルロス達の部屋に勝手に入り、イヴィがあつらえてくれたマントによく似合う王冠を3Dプリンターでこしらえて悦に入っていました。
これでオードリーに振り向いてもらえると思ってたら、なんとオードリーから電話が!
辺境までタイヤのパンクを直しに来てと言われて喜んで駆け出すお花畑君でした。
チャドも着信音芸をしやがる。

舞踏会の夜

その夜、船の上で舞踏会が開かれました。
人気デザイナーのイヴィが、囲み取材でヘアアクセを作ったのはロスト島のディジーだと言ってくれてディジー大喜び。
イヴィはどんなにエレガントなドレスでも赤いレザー手袋を離さないのがロックですね。

みんなもおめかししてノリノリです。
ジェーンはカルロスがパートナーだとフェアリー・ゴッドマザーに紹介しました。ママも感激してビビディバビディ!
カルロスの親指のリングかっこいい。牙の形?
イヴィはダグと、ジェイはロニーとパートナーとして来ているようです。

そしてマルも勇気を出して来ていました。王家を示す黄色と青のドレスをまとい、紫の髪を上品に編み込みにしています。緊張した面持ちながら、ベンの両親やイヴィたちに励まされなんとか笑っています。
このとき紹介してくれたおじさんはルミエール、美女と野獣に出てくるキャンドルさんですね。

そこにベン王も登場。マルを見つけたベンはうやうやしくお辞儀をしたと思ったら……

続けて現れたのはドレスを着たウーマ。
ベンはウーマの手をとり、彼女の指にはめられたリングにキスをします。
ウーマはマルたちがバリアを解除した隙に海に飛び込み、泳いできたのだと言います。
マルのおかげで”本当の運命の相手”に巡り合えたと礼を言ってくるウーマとベン。
ベンに捨てられたことがマルには信じられません。ひどいシーンだ。
ウーマが無邪気に喜んでるようでいてチラチラと悪い表情をのぞかせるのがいい。

幸せそうに踊りだすベンとウーマ。
おかしいと思ったジェーンは、ルミエールに言ってベンの「大切な人への贈り物」を披露してもらいます。
ステンドグラスに掲げられているのはウーマではない、マルとベンの肖像でした。
マルの髪はキレイな紫。ベンは金髪のマルではなく、紫の髪の本当のマルを見てくれていたのです。
でもここで披露するんなら、冒頭でジェーンがベンに相談するときは髪とドレスの色なしにした方がよくなかった?

思わず声を荒げるウーマに促されたベンは、ウーマのためにロスト島のバリアを完全になくすと宣言しました。
戸惑うフェアリー・ゴッドマザーやビーストに命令だと怒鳴りつけるベン。
明らかにおかしいベンの様子に、マルは自分が落とした本を使ってウーマが魔法をかけたのだと気づきます。

ベンに自分の本当の気持ちを語りかけるマル。
マルの真実の愛のキスが、ベンの魔法を解きました。
このときのイヴィの感無量な表情が美しいよね。ロスト島で”Space Between”を歌う前のシーン、マルとイヴィは「真実の愛のキスは効果抜群」という女子トークをしていたのです。ここでフラグ回収。

悪事が露呈し追いつめられたウーマ。マルはウーマにも悪以外の心があるはずと説得を試みます。
が、ウーマはネックレスの輝きとともに海に飛び込び、アースラのごとく下半身タコの巨大モンスターに変身しました。
昂ったマルも魔力が制御できないというようにマレフィセントと同じ巨大ドラゴンに変身。
怪獣大戦争だ!

……と思われたところで、雄叫びを上げたベンが海に飛び込みます。
野獣に変身するかと思ったよね。
二体のモンスターの間に割って入ったベンは、無益な争いをやめ歩み寄ろうと説得します。
大事なのはロスト島の未来だ、一緒に変えて行こうとウーマに手を差し伸べるベン。
その言葉に感じ入った表情を見せたウーマはベンにもらった指輪を返しましたが、そのまま何も言わずに姿を消しました。

ドラゴンからもとに戻ったマルのドレスは、マルらしい紫色に変わっていました。こっちの方が断然似合う!

エピローグ

助けてくれたみんなにお礼がしたいというベンに、イヴィのおねだり。
ロスト島に残された他の子もオラドンに呼びたいと言われ、ベンは快くOKします。
一方、マルはウーマが置いていった魔法の本を手放すことを決めました。もう魔法に頼らないというマルの言葉に、ベンも嬉しそうに笑います。

これで全部解決。
水をかぶってびしょびしょの船上でエンディングダンスの時間です。

You And Me(ユー・アンド・ミー:みんな一緒に)

Looking back at yesterday I thought I gave it everything
振り返ると努力の足跡

But still there’s so much road ahead of me
長い道が続く

When I looked into your eyes I guess I didn’t recognize
あなたの目を見て 初めて気づく

Who we are and all that we can be
今の私たち これからの姿

字幕に入りきってない言葉があるのでちょっぴり補足。

過去を振り返れば 一生懸命やってきたと思える
でもまだ目の前には 長い道が続いてる
あなたの目を見ると 自分が分かってなかったと気づく
私たちが何者で 何者になれるのか

未来への希望を感じさせる歌詞です。
ベンもまだまだ自分にできることがあると決意を新たにしてるんでしょう。君はすでに充分立派だぞ。

Sometimes it’s hard to find yourself But it’s worth it in the end
自分を見つけ 未来へ踏み出す

‘Cause in your heart is where it all begins
心こそがすべて

自分と向き合うのがつらいときもあるけれど 最後にはそれでよかったと思える
だってすべては心から始まるんだから

“it’s worth”のitは”to find yourself”のことだと。
“hard to find yourself”は「自分を見つけるのは難しい」より「自分と向き合うのはつらい」の方がマルの気持ちに合ってる表現な気がする。
「心こそがすべて」は前作マレフィセントが言ってた「心より頭」に相反する価値観ですね。

We gotta be bold We gotta be brave We gotta be free
大胆に勇敢に そして自由に

We gotta get loud Making that change You gotta believe
声を上げよう 信じることが大切

We’ll look deep inside And we’ll rise up and shine
心を磨いて 思い切り輝こう

We can be bold We can be brave Let everyone see
大胆に勇敢に みんな一緒に

It starts with you and me
さあ始めよう

水しぶきを立てるダンスが大胆で勇敢で自由だ。めちゃめちゃ踊りにくそうだけどいい画です。

二行目は「声を上げれば変化を起こせると信じよう」
“look deep inside”を「心を磨く」って言うのがおしゃれ。直訳は「心を深くのぞき込む」
“let everyone see”は「みんなに見せてやろう」
“you and me”は「二人で」じゃなくて「みんなで」だね。

There’s something special that I’ve learned It’s together we can change the world
世界は必ず変えられる

Everybody’s got something that they can bring
力を合わせるんだ

When you take a look inside yourself Do you wish that you were something else?
本当の自分を しっかり見つめ

But who you are is who you need to be
いつも自分らしく

カルロスとイヴィ、マルとジェイのツーショットは新鮮で微笑ましい。
ここまでほとんど女子組男子組で別れてたからね。
なんとなく、カルロスとイヴィはかわいいもので盛り上がってマルとジェイはいたずらで盛り上がりそう。

パートナーにかかわらずみんなで手を取り合って踊る姿はとてもいい。

We all can do a part We know that it can be the start
みんな集まれば 始められる

To bring about the difference that we need
個性を生かして

I promise we can work this out I promise we can see it through
きっとうまくいく やり遂げられる

Don’t you know it’s up to me It’s up to me and you
すべて自分次第だよ

自分はこうだと自信を持って行動する、それで世界を変えられる。
前作と同様、エンディングソングは「これから向かう先」がテーマになって希望が見える。

最後のパートナーダンスがみんなキュートである。
ブレイクダンスで全身びしょ濡れのカルロスはお茶目なジェーンを背負って退場。
アスリートなジェイとロニーは美しいコンビネーション技。
手を差し伸べるイヴィの元に王子様ポーズで滑り寄るダグ。
そしてはしゃいで水をかけあうマルとベン。

ようやくベンがマルに再び指輪をはめてあげることができました。

クラブ風ミックスでノリノリのスタッフロールへ。
いやーみんな寒そう。

最後、ディジーがオラドン高校に正式な招待を受けて終了!

……と見せかけて、
ヴィランらしい思わせぶりなセリフを残すウーマが入って今度こそおしまい。

最後に

子ども向けっぽいおとぎ話色の強かった前作に対して、マルたちと同様ちょっと大人びたテイストに。
みんな成長して前以上に魅力的になってるからキャラクターを見てるだけで楽しいんですよね。だからこの記事はこんなにも長い2

アイテムも一つ一つ凝ってて、特にロスト島はどのシーンも止めて観察したくなってしまう。
ちょっとしか出ないモブでもカッコイイ衣装着てたりする。

歌とダンスは前作よりさらにクールです。イヴィファンとしてはChillin’ Like a Villainがたまらん。

敵役のウーマ、ハリー、ギルも全員良いキャラで登場シーンが少なく感じるくらい。ドロンボーじゃないぞ。
ウーマは自分が一番って言ってるけどハリーとギルのこともちゃんと大事に思ってるのがちょっぴり見える。映画では「最強の敵」とか言われてたけどどう見ても根っからのワルに見えないよね。続編ではピンチに駆けつけてくれると予想。どや。……3じゃなくてもっと先かも。
ハリーはウーマのことが大好き。変な意味じゃなくて本当に慕ってるんだろうなって感じ。フック船長の息子なんだし自分が船長になりたがるようにも思えるけど、ずっとウーマのこと立ててるんだから。
ギルはセリフ少ないのに全部おもしろいのがすごい。画面の端にうつるとだいたいにっこにこしておもしろいことしてる。もっといろんなシーンにこっそりひそんでてほしい。
三人のこれまでの生活が描かれたらもっといろいろ説得力ができてたかもね。

よし、これでこころおきなく3の公開を待てる。数日後だけど。

……ところで箱に入れて持って行ったマレフィセントトカゲはどこに?

余談:一番好きなディズニーヴィラン?

みなさん一番好きなディズニーヴィランは誰ですか?

マレフィセントは前作ディセンダントに出てきたキャラであれば私もかなり好きです。
けど、アンジェリーナ・ジョリーの映画とか見ちゃうと彼女を「ヴィラン」と呼ぶのは微妙な感じですよね。
個人的に更生しそうなタイプのヴィランが好きじゃないもんですから。

ジャファーはやっぱり人気が高い。
あの見るからに狡猾な顔がいい。陛下こいつどう見ても悪い奴ですよって言いたくなる。
キャメロン・ボイス君も蛇になるところが怖いくて好きだと言ってました。
前作ディセンダントではそうとう残念な感じでしたけど!

最近見た「プリンセスと魔法のキス」のファシリエはかっこよかった。
オシャレで歌がうまくて、影を使った立ち振る舞いがクール。最後にひどい目に遭うのもいい。

ブーブー・スチュアート君はラプンツェルのママがなぜか好きだって言ってましたけど同感。
なぜか好きです。それほど着飾ってるわけでもないのに上品で美しいんだよね。ラプンツェルへの屈折した愛情が感じられるのもいい。

ナイトメア・ビフォア・クリスマスのブギーもいいですよね。
なんせおもしろい。出てきただけでおもしろいことが起きると期待できます。あとあの見た目で妙に歌がうまい。

でも私が一番好きなヴィランはノートルダムの鐘のフロロー
なぜか? なぜだろう。彼には非常に愛らしいものを感じます。結局彼も自分の心と頭の乖離に苛まれてるんですよね。どうしても自分で自分を苛んでしまって絶対に幸せになれない感じ。あどーらぶる。

はいはい、今回の記事はここまで。

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  1. “Night Is Young”という曲。
  2. 余計な説明を脚注に入れればもっと短くなったんじゃないですか?と思いますけど直さないもんね。

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