おもしろいマーベルコミックの紹介です。個人的な感想とおもしろポイントのメモ。
今回はみんな大好きおしゃべりな傭兵ことデッドプールの短編シリーズ:
DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)
もう読んだ人はもちろん、これから読むところという人、予習してから読んでみたいという人も参考にしてみてね。
話のネタバレ部分は折りたたんであります。
デッドプールってなんだっけって人は、キャラ紹介記事がありますのでどうぞ。
※以下、本のタイトルのリンクはAmazonに飛びます。
DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)
概要
「DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)」は2009~2011年に発表されたシリーズ。
一部の話は別の単行本で邦訳されてたりしますが、このシリーズ自体は未邦訳。
タイトルの通り、デッドプールがいろんなマーベルヒーローたちとチーム(?)を組んで、様々な事件を解決したりしなかったり状況を悪化させたりする短編シリーズです。
話はデッドプールらしいブラックなコメディばかりで、楽しく読めるのが嬉しいところ。
短編集なのでどこから読んでもよく、デッドプールの基本知識(傭兵だとか超回復能力とかトチ狂ってるとか)さえ知っていれば混乱することなく楽しめるでしょう。
ブラックジョークや吐き気を催す描写が苦手な人は気を付けてね。デッドプールは毎回自傷する勢いです。
話ごとに異なりますが、デッドプールの脳内二重人格(モノローグが黄色と白の二種類の吹き出しで書かれるやつ)も割とよく登場。
掛け合いが面白いだけでなく、ストーリーに組み込まれてるのが秀逸です。
登場するヒーローやヴィランたちは、メジャーどころからファンでも聞いたことないような超マイナーキャラまで非常に幅広い。
ドマイナーキャラを登場させて許されるのもデッドプールならではと言おうか。
このシリーズが邦訳されないのは、誰も知らないキャラクターばっかり出てるからかもしれません。
ただその分、どういうキャラなのかが話の中で説明されてるので、逆にわかりやすいかも。
絵も話も毎話で異なる作家さんが書いており、絵柄もストーリーもいろんなテイストを味わえるのがお得です。
お気に入りのライターさんやアーティストさんが見つかると、他のシリーズを読んでるときに「あっ、この人!」と思えて嬉しいですよ。
ちなみにどの話も表紙絵はHumberto Ramosさん(ペンシラー)とEdgar Delgadoさん(カラリスト)が描いてます。お気に入りです。
話数
#900~883までの全18話。
話数はなぜか「第900話」から始まって数が減っていきます。ややこしい。
第899~883話までは三冊の単行本として刊行されてます。Kindle版もあるよ。
1話単位で好きなキャラが出てくる話だけ買うのもいいですが、全部読んだ方が知見が広がっておもしろいことでしょう。
第900話だけは特別扱いで、上記単行本には含まれてません。
が、邦訳コミックの「デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション(小学館集英社プロダクション)」に含まれ日本でも発表済み。この本に載ってる話については今回は割愛します。おもしろいですが、クセは強めな印象。
背景
このシリーズが発表された時代は、ケーブル&デッドプールのシリーズが終わってデッドプールの個人誌が1年くらい続き、順調に人気を博しているところにあたるんでしょう。
邦訳されてる「デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス(小学館集英社プロダクション)」が2009~2010年なのでほぼ同時代ですね。
マーベルユニバース的には、クロスオーバーである「シージ」事件(ダークアベンジャーズが元気にやってる頃)あたり。
ケーブルはこの頃メサイア・ウォーでホープを連れて未来を逃げてる頃かな。
と言っても軽いノリの短編ばかりなので、時系列を気にする必要はまったくありません。
キャラクターさえわかれば……いや、キャラクターも誰も知らないよーなやつらばっかり出てくるので、ある意味前知識が一切なくても楽しめるシリーズかも。
VOL 1 GOOD BUDDIES
じゃ、ここから本題。チームアップキャラとストーリーを1話ずつ紹介していきます。
ストーリーはさわりの部分だけとし、結末のネタバレは折りたたんでありますので、読みたい人だけ開いてね。
この記事では単行本1巻「GOOD BUDDIES(良き相棒たち)」に含まれる第899~894話までを紹介。
読みたくなったらAmazonでぽちればいいじゃない。
「Deadpool Team-Up Vol. 1: Good Buddies(MARVEL)」
※Amazonへのリンク画像
ちなみに紙の本は巻末に「MARVEL SPOTLIGHT」のデッドプール特集記事がたくさん載ってておもしろいです。Kindle版には入ってるか不明。
#899 ハーキュリーズ(Hercules)
ストーリーはFred Van Lenteさん、アーティストはDalibor Talajicさん。
割とグロテスクな絵面ながら、プールとハーキュリーズのテキトーな気の合いっぷりがなんか明るいです。
チームアップキャラクター
まずはギリシャの英雄ハーキュリーズ(Hercules)が登場。
英語読みで「ヘラクレス」と言えばイメージ付くでしょうか。ゼウスの息子のヘラクレスその人で、人間として生まれましたが今はオリンポスの神になっています。
「パワーオブプリンス」の名前で知られる、見た目通り豪快で力自慢でもじゃもじゃのヒーロー。
邦訳コミックだと、ケーブル&デッドプールのシビルウォー回(ヴィレッジブックスから出版)で、デッドプールがハーキュリーズを含むキャプテン・アメリカ陣営を襲ったときにちょっと絡んでました。
単行本の表紙絵はこの話の表紙ですね。こてんぱんにされてるウルヴァリンとソーを肴に乾杯!
ギリシャ神のハーキュリーズは、北欧神であるソーと友達というかライバルというかな関係。それもあってこの絵です。
ストーリー
悪夢に悩まされているデッドプール。
夢に出てくる紋章を掲げた建物に押し入ってみたところ、内部は奇妙な迷宮だった。
敵に誘い込まれたかと思いきや、そこで出くわした相手はハーキュリーズ。
幻影に誘われてやって来たという彼とともに、デッドプールは悪夢の正体を突き止めようと迷宮を探索する。
感想とメモ
悪夢から始まるダークなストーリー……と見せかけて、プールとハークの態度は割と能天気。結末はさらに陽気。
デッドプールのクレイジーさそのものを取り上げた話でもある。暗いと見せかけて明るいと見せかけた、実はやっぱりダークな話でした。
腕の一、二本ちょんぱされるのはプールの平常営業。
分厚い絵柄がハーキュリーズや迷宮、悪夢のモチーフによく似合います。
ハークがギリシャ神話のキャラってことで、ギリシャ神話のミノタウロスを思わせる迷宮が登場。
プールとハークは初対面ってわけじゃないですが、お互いのオリジンを簡単に説明し合ってくれるので読者に優しい。
苦痛を経て不死身になった二人は、ハークの言う通り割と気が合うのかもしれません。基本明るいところとか、細かいこと気にしないところとか、人の話聞いてないところとか、においがキツそうなところとか。
#898 ザパタ兄弟(Zapata Brothers)
ストーリーはMike Bensonさん、ペンシラーはCarlo Barberiさん。
ミステリー要素のあるカッチリしたエピソード。お前だれやねんなキャラもデッドプールとは相性がいいようです。
ちなみに同じクリエイターさんのコミックは「デッドプール:スーサイド・キングス(小学館集英社プロダクション)」が邦訳されてます。こちらもドラマのようなミステリー/サスペンス色の強い話でおもしろいですよ。
チームアップキャラクター
緑マスクのガス・ザパタ(Guz Zapata)と赤マスクのリコ・ザパタ(Rigo Zapata)でザパタブラザーズ。
誰だよと。
ムーンナイトのシリーズに登場したメキシコ人のプロレスラー兼傭兵らしいです。知らなくても特に問題ないです。フェイスブック好きらしいです。今はTIKTOK好きかもしれません。
ヒーローやヴィランというよりは純粋な傭兵で、デッドプールと似たような立場ですね。
珍しくデッドプールを慕ってくれる感じなので、プールもまんざらじゃなさそうです。
ストーリー
現在:メキシコのギャングのアジト。賞金首を殺してきたと、二人の男がボスの前に生首を差し出す。
その18時間前:夜の墓場を掘るデッドプールが何者かの首を手にしていたが、背後から二人の男に襲われた。
その48時間前:デッドプールはあるチンピラを拷問し、賞金首の男を殺す手はずを整えてあるという情報を入手していた。
感想とメモ
何者かが何者かの首を持ってきた、という結果から始まり、時系列をさかのぼって何が起きたのかを提示していく。ドラマティックな演出が巧みです。
まあ構成を読み解けなくても、絵を眺めてればだいたいの意味は分かるでしょう。
今回のデッドプールはガッツリ殺し屋。コンプライアンスなんてクソくらえ。
軽いノリの殺し屋ってところはザパタ兄弟とも気が合いそうなもんですね。
ギャング映画が好きな人には特にハマるエピソードでしょう。
#897 ゴーストライダーズ(Ghost Riders)
ストーリーはAdam Glassさん、ペンシラーはChris Staggsさん。
まともなヒーローとのチームアップとみせかけて、悪ノリ満載のブラックなエピソード。画は色んな意味で派手です。
チームアップキャラクター
今回登場するのは二人のゴーストライダー。
ジョニー・ブレイズ(Johnny Blaze)とダニー・ケッチ(Danny Ketch)は生き別れた実の兄弟で、それぞれ個別に復讐の精霊の力を得てゴーストライダーになっていました。
なんやかんやで二人で一緒に旅をしているのがこの話での状況。
ドクロ頭をメラメラ燃やしてバイクに乗ったゴーストライダーは、悪党を地獄に叩き落して罪をつぐなわせるのが使命。
一人でも派手で強いのに、二人いたらもう大変ですね。
ストーリー
フリークショーで虐待されているから助けてほしいと依頼されたデッドプール。美人のヒゲ女に鼻の下を伸ばし、ショーの支配人であるロブスターボーイの殺しを請け負った。
ショーが開催されるお祭りを楽しむデッドプールは、ゴーストライダー兄弟:ジョニーとダニーにばったり出くわす。
感想とメモ
フリークショーと悪魔が登場するダークなお話。今回もプールは殺し屋です。
罪なき人を守り悪魔を退治するのが目的のゴーストライダーズに対して、プールはやりたい放題。
マイペースなデッドプールに首を突っ込まれ、ゴーストライダーたちのみならず悪魔もタジタジでした。
やっぱりクレイジープール最強説。
ジョニーとダニーのゴーストライダー兄弟は格好いいですね。スーパーナチュラル。
長髪のダニーの方が短気で、金髪のジョニーの方が落ち着いてる感じ。レザージャケットとロングコートが似合うこと似合うこと。
そんでゴーストライダーに変身すると実に絵になる。炎の赤・オレンジ・黄色が画面に躍るのがキレイです。二人もいるとむしろ絵面がうるさい。
バイクのデザインや炎の色は二人ともちゃんと違うんですね。
プールはジョニーの後ろに乗せてもらってました。頭、熱くないのかな。
#896 US エース(US Ace)
ストーリーはStuart Mooreさん、アーティストはShawn Crystalさん。
迫真の顔のユリシーズをデッドプールがひたすら邪魔します。すごく好き。
チームアップキャラクター
USエース(US Ace)ことユリシーズ・ソロモン・アーチャー(Ulysses Solomon Archer)が登場!
誰だよ!
知らないよ!
その昔、個人誌として登場したトラックドライバーのキャラクターだそうです。
兄のジェフに陥れられて事故ったところを宇宙人に救われ、頭を改造されて特殊なラジオ派を受け取ることができるようになったと。
宇宙で結婚して幸せに暮らしてたんですが、なんやかんやで地球に戻る羽目になり、ひとりぼっちで再びトラックドライバーとして生活してるのが今の状況。かわいそうに。
表紙絵で頭の中に金属があるのをちゃんと描写してくれてますね。それ描かないと特徴がないからかな。
ストーリー
宇宙に家族を残して一人地球で働く、USエースことユリシーズ・ソロモン・アーチャー。
邪悪な兄のジェフから請け負ったトラック輸送の仕事のパートナーは、よりによってデッドプールだった。
憧れのトラック野郎になってウキウキのデッドプールに、ユリシーズは文字通り頭を痛める。
そんな二人が運ぶ荷物を、毛むくじゃらの刺客が狙っていた。
感想とメモ
今回はユリシーズが主役。そこにデッドプールが割り込んで来てひっかきまわされて不憫だな~という話。
やさぐれたユリシーズに絵柄がぴったり似合っててすごく好き。
USのことはUSと呼べばいいのかユリシーズと呼べばいいのか、どっちでもいいのか。
彼は宇宙に愛する家族がいるものの、なぜか地球に来た今は孤独な毎日。金欠のようで、嫌いな兄貴に仕事をもらわないとどうしようもないみたいです。
愛車のトラックには色んな武装や仕掛けが内蔵されてるらしい。目玉に羽の生き物がモチーフのようで、帽子やトラックのあちこちについてます。
兄のハイウェイマン(Highway-Man)ことジェフは、もともと弟の方が宇宙人から認められていることにコンプレックスを抱いており、悪魔サタンと契約して邪悪な力を手に入れたらしいです。だから顔もちょっと悪魔っぽくてクール。
今回の話だと、弟のことは嫌いだけど憎んでるってほどではなく、いじめて楽しんでる感じですね。
疲れ気味のユリシーズをよそに、デッドプールが遠慮ゼロではしゃぎまくるのがひどいもんだ。
今回のプールは終始テンション高くてうっぜぇですね。トラック野郎に憧れがあったらしい。無線用語も楽しそうに繰り出してきます。
なんかユリシーズのことも大好きみたいでコミュニケーション過剰です。ブロマンスを期待すんな。
ただでさえ薄幸な状況のユリシーズが、よりによってプールに好かれる様は不憫でおもしろい。
#895 その名もリビング・コロッサス(It! The Living Colossus)
ストーリーはChristopher Longさん、アーティストはDlibor Talajicさん。
表紙の絵だけ見たら顔色の悪いシングかと思った。
チームアップキャラクター
Itことリビング・コロッサス(The Living Colossus It)は、とりあえずでっかい彫像です。
ロシアの彫刻家が作った像で、宇宙人に回路を埋め込まれて動くようになったらしい。
展覧会のためにアメリカに運ばれてきて、宇宙人に操られて暴れ出したのを、特殊効果技師のボブ・オブライエンによってなんやかんや鎮められた。
その後ボブはリビングコロッサスと何らかのリンクを持ったらしく、像を操ることができるようになったとか。
「リビング」というものの、像自身に人格があるわけじゃないです。
ストーリー
デッドプールを雇った美女。彼女は、ドクター・ドゥームとの戦いで植物状態となってしまったおじのボブを助けるため、潜水艦で海へ潜るという。
海中に沈んでいたのは巨大な像、リビングコロッサスだった。
感想とメモ
今回はヴィジュアル重視のアクション回。だからあんまり書くことはない。
海中でのサメっぽい怪物と巨大なリビングコロッサスとのバトルが見どころです。
プールは美人の姪ちゃんにつられて、まんまとめんどくさい仕事を引き受けちゃったようですね。
リビングコロッサスがなんなのかはさっぱり分かりませんが(微妙に説明入れてくれるけど)、話は単純なので問題ないですね。
#894 フランケンキャッスル(Franken Castle)
ストーリーはIvan Brandonさん、ペンシラーはSanford Greeneさん。
フランケンパニッシャーおよびモンスター連合とのチームアップ。キレイなオチがつく話。
チームアップキャラクター
フランケンキャッスルは、フランケン状態のフランク・キャッスル(Frank Castle)。ドクロがトレードマークの私刑執行人パニッシャーですね。ヒーローに分類されるものの、悪党を容赦なくぶち殺す危険な男。紹介記事があるよ。
ひょんなことから殺されたんですが、モービウスとモンスター連合によってフランケン状態で生き返らせてもらったらしいです。で、フランケン状態でモンスター連合と活動してるのがこの話での状況。
デッドプールとパニッシャーはお互い「この人殺しめ」と思ってる感じで、仲良くはありません。
上の方に書いた「デッドプール:スーサイド・キングス」では、プールがパニッシャーに殺人容疑をかけられ命を狙われてました。
ストーリー
パニッシャーことフランク・キャッスルに夫を殺されたと言う美しき未亡人。
やつの顔を見てしまったせいで自分も狙われていると涙する彼女を、デッドプールは自分が守ってやると約束した。
が、デッドプールはキャッスルが既に死んだらしいと聞いていた。死んだ証拠を持って行ってあげれば彼女も安心するだろうと思って下水道を探索し、怪物たちのたまり場に行きつく。
そこにいたのはフランケンシュタインと化したキャッスルだった。
感想とメモ
今回も美女にデレデレして仕事を引き受けるデッドプール。
下水道に怪物大集合というとおどろおどろしそうですが、みんなお茶目な顔しててなんだか愛らしいです。
デッドプールの軽々しいノリによる捜査と、オチで「ありゃりゃ」と終わるのが楽しいお話。
黄色と白のキャプションたちが元気にしゃべり合ってます。プールを黙らせてもキャプションたちがうるさい。
最後に
殺し屋稼業を楽しむデッドプールのマイペースな日常でした。
意味不明なセリフは飛ばして読んでもいいけど、時間があったら調べてみるとだいたいおもしろいこと言ってます。
アメコミだから、英語だからといってすべてを理解しようとせず、「なんやかんやそうなったのね」と一旦飲み込むのが大事です。
めちゃくちゃ複雑な背景があれば理解するだけで大変ですし、そもそも背景なんてなく、急に設定がぶちこまれてるだけってこともありますので。
軽い気持ちでただ楽しむっていうのにぴったりなのがこのシリーズです。
原語コミックを読んでみたいってかたはぜひ手に取ってみてください。
第二巻もマイナーキャラたちが目白押しでおもしろいよ。