DEADPOOL TEAM-UP VOL1【マーベルコミック感想】

おもしろいマーベルコミックの紹介です。個人的な感想とおもしろポイントのメモ。

今回はみんな大好きおしゃべりな傭兵ことデッドプールの短編シリーズ:
DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)

もう読んだ人はもちろん、これから読むところという人、予習してから読んでみたいという人も参考にしてみてね。
話のネタバレ部分は折りたたんであります。

デッドプールってなんだっけって人は、キャラ紹介記事がありますのでどうぞ。

※以下、本のタイトルのリンクはAmazonに飛びます。

DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)

概要

DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)」は2009~2011年に発表されたシリーズ。
一部の話は別の単行本で邦訳されてたりしますが、このシリーズ自体は未邦訳。

タイトルの通り、デッドプールがいろんなマーベルヒーローたちとチーム(?)を組んで、様々な事件を解決したりしなかったり状況を悪化させたりする短編シリーズです。
話はデッドプールらしいブラックなコメディばかりで、楽しく読めるのが嬉しいところ。

短編集なのでどこから読んでもよく、デッドプールの基本知識(傭兵だとか超回復能力とかトチ狂ってるとか)さえ知っていれば混乱することなく楽しめるでしょう。
ブラックジョークや吐き気を催す描写が苦手な人は気を付けてね。デッドプールは毎回自傷する勢いです。

話ごとに異なりますが、デッドプールの脳内二重人格(モノローグが黄色と白の二種類の吹き出しで書かれるやつ)も割とよく登場。
掛け合いが面白いだけでなく、ストーリーに組み込まれてるのが秀逸です。

登場するヒーローやヴィランたちは、メジャーどころからファンでも聞いたことないような超マイナーキャラまで非常に幅広い
ドマイナーキャラを登場させて許されるのもデッドプールならではと言おうか。
このシリーズが邦訳されないのは、誰も知らないキャラクターばっかり出てるからかもしれません。
ただその分、どういうキャラなのかが話の中で説明されてるので、逆にわかりやすいかも。

絵も話も毎話で異なる作家さんが書いており、絵柄もストーリーもいろんなテイストを味わえるのがお得です
お気に入りのライターさんやアーティストさんが見つかると、他のシリーズを読んでるときに「あっ、この人!」と思えて嬉しいですよ。
ちなみにどの話も表紙絵はHumberto Ramosさん(ペンシラー)とEdgar Delgadoさん(カラリスト)が描いてます。お気に入りです。

話数

#900~883までの全18話
話数はなぜか「第900話」から始まって数が減っていきます。ややこしい。
第899~883話までは三冊の単行本として刊行されてます。Kindle版もあるよ。
1話単位で好きなキャラが出てくる話だけ買うのもいいですが、全部読んだ方が知見が広がっておもしろいことでしょう。

第900話だけは特別扱いで、上記単行本には含まれてません。
が、邦訳コミックの「デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション(小学館集英社プロダクション)」に含まれ日本でも発表済み。この本に載ってる話については今回は割愛します。おもしろいですが、クセは強めな印象。

背景

このシリーズが発表された時代は、ケーブル&デッドプールのシリーズが終わってデッドプールの個人誌が1年くらい続き、順調に人気を博しているところにあたるんでしょう。
邦訳されてる「デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス(小学館集英社プロダクション)」が2009~2010年なのでほぼ同時代ですね。

マーベルユニバース的には、クロスオーバーである「シージ」事件(ダークアベンジャーズが元気にやってる頃)あたり。
ケーブルはこの頃メサイア・ウォーでホープを連れて未来を逃げてる頃かな。

と言っても軽いノリの短編ばかりなので、時系列を気にする必要はまったくありません
キャラクターさえわかれば……いや、キャラクターも誰も知らないよーなやつらばっかり出てくるので、ある意味前知識が一切なくても楽しめるシリーズかも。

VOL 1 GOOD BUDDIES

じゃ、ここから本題。チームアップキャラとストーリーを1話ずつ紹介していきます。
ストーリーはさわりの部分だけとし、結末のネタバレは折りたたんでありますので、読みたい人だけ開いてね。

この記事では単行本1巻「GOOD BUDDIES(良き相棒たち)」に含まれる第899~894話までを紹介。
読みたくなったらAmazonでぽちればいいじゃない。

「Deadpool Team-Up Vol. 1: Good Buddies(MARVEL)」
※Amazonへのリンク画像

ちなみに紙の本は巻末に「MARVEL SPOTLIGHT」のデッドプール特集記事がたくさん載ってておもしろいです。Kindle版には入ってるか不明。

#899 ハーキュリーズ(Hercules)

ストーリーはFred Van Lenteさん、アーティストはDalibor Talajicさん。
割とグロテスクな絵面ながら、プールとハーキュリーズのテキトーな気の合いっぷりがなんか明るいです。

チームアップキャラクター

まずはギリシャの英雄ハーキュリーズ(Hercules)が登場。
英語読みで「ヘラクレス」と言えばイメージ付くでしょうか。ゼウスの息子のヘラクレスその人で、人間として生まれましたが今はオリンポスの神になっています。
「パワーオブプリンス」の名前で知られる、見た目通り豪快で力自慢でもじゃもじゃのヒーロー。

邦訳コミックだと、ケーブル&デッドプールのシビルウォー回(ヴィレッジブックスから出版)で、デッドプールがハーキュリーズを含むキャプテン・アメリカ陣営を襲ったときにちょっと絡んでました。

単行本の表紙絵はこの話の表紙ですね。こてんぱんにされてるウルヴァリンとソーを肴に乾杯!
ギリシャ神のハーキュリーズは、北欧神であるソーと友達というかライバルというかな関係。それもあってこの絵です。

ストーリー

悪夢に悩まされているデッドプール
夢に出てくる紋章を掲げた建物に押し入ってみたところ、内部は奇妙な迷宮だった。
敵に誘い込まれたかと思いきや、そこで出くわした相手はハーキュリーズ
幻影に誘われてやって来たという彼とともに、デッドプールは悪夢の正体を突き止めようと迷宮を探索する。

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デッドプールとハーキュリーズは出口のない迷宮をひたすら進む。

びびる二人をモニター室で眺めているのは二人のヴィラン。
死のトラップを張り巡らせるのが得意なアーケードはデッドプールを憎んでおり、人の最も恐れる悪夢を見せるナイトメアはハーキュリーズに恨みがある。

それぞれの仇に普通の状態ではトラップや悪夢が通じないため、今回は手を組んで仕留めることにした。
アーケードの機械で「右脳と左脳を結合させ」ることで、ナイトメアの能力により潜在意識から最も恐れる悪夢を引き出し、幻として見せることができたのだ。

まんまと罠に誘い込まれたデッドプールハーキュリーズは、自らが最も恐れる悪夢の姿に襲われる。

狂気の化身に殺されそうになったデッドプールは、悪夢から醒めようと自ら頭をブッスリと貫いた。
これにより「右脳と左脳の結合が解除され」、ナイトメアの幻術から醒めることに成功する。
そして自分たちが普通のビルにいて、悪夢ではなく殺人ロボットに襲われているだけだと気づき、ハーキュリーズに壁を破らせて敵のモニター室に押し入った。

ナイトメアには逃げられたものの、アーケードを捕まえてぶちのめし、一件落着。
仲良く祝杯を上げるデッドプールとハーキュリーズだった。

感想とメモ

悪夢から始まるダークなストーリー……と見せかけて、プールとハークの態度は割と能天気。結末はさらに陽気。
デッドプールのクレイジーさそのものを取り上げた話でもある。暗いと見せかけて明るいと見せかけた、実はやっぱりダークな話でした。
腕の一、二本ちょんぱされるのはプールの平常営業。

分厚い絵柄がハーキュリーズや迷宮、悪夢のモチーフによく似合います。
ハークがギリシャ神話のキャラってことで、ギリシャ神話のミノタウロスを思わせる迷宮が登場。

プールとハークは初対面ってわけじゃないですが、お互いのオリジンを簡単に説明し合ってくれるので読者に優しい。
苦痛を経て不死身になった二人は、ハークの言う通り割と気が合うのかもしれません。基本明るいところとか、細かいこと気にしないところとか、人の話聞いてないところとか、においがキツそうなところとか。

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おくち二つのクリーチャー、愛くるしい。肉肉しい質感が絵柄によく合ってる。パンツはデッドプールマーク。

こいつらはデッドプールの狂気の化身であり、「脳内二重人格」の体現。いつも脳内で会話してる黄色と白のキャプションが、姿を持って顕現したわけです。
デッドプールが潜在意識下で最も恐れてる悪夢は、自分の狂気に殺されることだったんですね。ガチですね。

この狂気の化身から言われる言葉がデッドプールらしい。
「(狂気である)俺たちがいなくちゃお前はまともな傭兵だ」「まともな傭兵はいくらでも殺せる」
アーケードやナイトメアも「デッドプールがイカれてて予測不能だから罠にはめられない」と評してましたが、デッドプールの潜在意識もまた、狂気にこそ自分の強さがあると信じていたようです。

で、悪夢から醒めねばと思ったデッドプールは、お得意の「自分の頭ブッスリ」で解決。
冒頭で白キャプションが「目を覚ませ! 自分の頬をつねって……いや、頭を刺す方がいいぞ!」って言ってたのがここで活きるとは。
ブッスリ状態では間延びしたしゃべり方しかできなくなったあげく、最終的にセリフ放棄してました。

ハーキュリーズってガチの不死身なんですね。アスガルド人と違って、オリンポス人は不死身らしい。
彼を襲った悪夢は「ハーキュリーズのせいで成長できずに死んだ息子・娘たち」だそうです。詳細は不明ですが、ともかくハークは自分がゼウスの庇護を受けた不死身の存在にはふさわしくないんじゃないかと恐れていたようです。最初にもそんなこと言ってたね。真面目じゃないか。

ヴィランのナイトメアさんはゴージャスで格好いいです。ハーキュリーズの宿敵ってわけじゃなく、なんか邪魔されたことがあったみたいです。
右脳と左脳がどうこう言ってるのはようわからんですが、とにかくハークには普通に悪夢を見せても通用しないらしく、アーケードと手を組むことにしたと。
アーケードの方はよく知らないですが、小物感がいい味出してます。ナイトメアとの雰囲気のちぐはぐさがおもしろい。

#898 ザパタ兄弟(Zapata Brothers)

ストーリーはMike Bensonさん、ペンシラーはCarlo Barberiさん。
ミステリー要素のあるカッチリしたエピソード。お前だれやねんなキャラもデッドプールとは相性がいいようです。

ちなみに同じクリエイターさんのコミックは「デッドプール:スーサイド・キングス(小学館集英社プロダクション)」が邦訳されてます。こちらもドラマのようなミステリー/サスペンス色の強い話でおもしろいですよ。

チームアップキャラクター

緑マスクのガス・ザパタ(Guz Zapata)と赤マスクのリコ・ザパタ(Rigo Zapata)でザパタブラザーズ。
誰だよと。
ムーンナイトのシリーズに登場したメキシコ人のプロレスラー兼傭兵らしいです。知らなくても特に問題ないです。フェイスブック好きらしいです。今はTIKTOK好きかもしれません。

ヒーローやヴィランというよりは純粋な傭兵で、デッドプールと似たような立場ですね。
珍しくデッドプールを慕ってくれる感じなので、プールもまんざらじゃなさそうです。

ストーリー

現在:メキシコのギャングのアジト。賞金首を殺してきたと、二人の男がボスの前に生首を差し出す。
その18時間前:夜の墓場を掘るデッドプールが何者かの首を手にしていたが、背後から二人の男に襲われた。
その48時間前:デッドプールはあるチンピラを拷問し、賞金首の男を殺す手はずを整えてあるという情報を入手していた。

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18時間前のその後
墓場で襲われたデッドプールが目を覚ますと、棺桶に入れられ埋められていた。
無理やり地上に脱出し、おじさんから借りたロバに乗って一番近くにあるというトップレスバー「エマージェンシールーム」に向かう。

その頃エマージェンシールームでは、ザパタ兄弟がくつろいでいた。
二人もデッドプールと同じ賞金首を狙っており、バーにやって来た代理人に生首を渡そうとしたが、途中で気が変わる。
ザパタ兄弟は代理人から聞き出した本当の依頼者のもとへ直接おもむき、中抜きなしの報酬をいただくことにした。

朝になってバーを出たザパタ兄弟デッドプールに出くわし、ファンだと言ってはしゃぎはじめる。
自分たちが墓場で襲った男がデッドプールだったと気づいていなかったらしく、デッドプール本人に「あれ俺」と指摘されて目を丸くする。
デッドプールが「許してやるから賞金首の頭よこせ」と言うと、二人は協力すると言い出した。

そして現在
「賞金首の頭」をギャングのボスに差し出したザパタ兄弟だったが、追加の報酬など当然もらえず追い返される。
二人はおとなしく帰ることにして、「賞金首の頭以外を入れてある」棺桶を渡してきた。

実は棺桶の中に納められていたのは、賞金首ではなくデッドプールだった。
切られた頭がくっついたところで飛び出し、周りのギャングたちを殺し金を奪って逃げだした。
ギャングたちに追いかけられるデッドプールを外で待機していたザパタ兄弟が銃火器で援護し、トロイの木馬作戦は大成功。

ごきげんのデッドプールは、他の賞金首も一緒に狙おうかと二人を誘うのだった。

感想とメモ

何者かが何者かの首を持ってきた、という結果から始まり、時系列をさかのぼって何が起きたのかを提示していく。ドラマティックな演出が巧みです。
まあ構成を読み解けなくても、絵を眺めてればだいたいの意味は分かるでしょう。

今回のデッドプールはガッツリ殺し屋。コンプライアンスなんてクソくらえ。
軽いノリの殺し屋ってところはザパタ兄弟とも気が合いそうなもんですね。
ギャング映画が好きな人には特にハマるエピソードでしょう。

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地中の棺桶の中で目を覚ましたデッドプール。ライアン・レイノルズの映画「リミット(Buried)」をほうふつとさせますが、映画の方が後なんでパロディではないのかな。

ザパタ兄弟はやたら仲良しで微笑ましいですね。
バーで最初にしゃべってるのはスマホ談議でした。
リコ「iPhoneの方がいいじゃん。カメラがすげーんだよ」
ガス「カメラのためのスマホかよ。ブラックベリーならどこのプロバイダでも使えるんだぜ、リモート爆弾の信号見失ったりしないだろうが」
ブラックベリーって最近はどうなの?

で、デッドプールに会うと「うわっ、こいつかよ…」って顔する人の方が圧倒的に多い中、ザパタ兄弟はまさかの大喜び。
デッドプールの方は平静を装ってますが、こころなしか嬉しそうに見えますね。

最初に会ったときにリコはすぐ本物だと気づいてましたが、ガスは「コスプレ用のマスクかぶってるだけだろ」と懐疑的でした。
ガス「本物のデッドプールだってんなら、宿敵は誰か言ってみろよ」
デッドプール「え、知らね……タイガーシャーク?」
ガス「違ぇよ、タスクマスターだ! 死ね、偽物」
デッドプール「もう一問! もう一問出して!」
仲良いな。

たっぷり殺しておきながら無邪気な顔してるザパタ兄弟、プールとはノリが合ってますね。
まあ、この二人他に見かけたことないけど。

#897 ゴーストライダーズ(Ghost Riders)

ストーリーはAdam Glassさん、ペンシラーはChris Staggsさん。
まともなヒーローとのチームアップとみせかけて、悪ノリ満載のブラックなエピソード。画は色んな意味で派手です。

チームアップキャラクター

今回登場するのは二人のゴーストライダー。
ジョニー・ブレイズ(Johnny Blaze)ダニー・ケッチ(Danny Ketch)は生き別れた実の兄弟で、それぞれ個別に復讐の精霊の力を得てゴーストライダーになっていました。
なんやかんやで二人で一緒に旅をしているのがこの話での状況。

ドクロ頭をメラメラ燃やしてバイクに乗ったゴーストライダーは、悪党を地獄に叩き落して罪をつぐなわせるのが使命。
一人でも派手で強いのに、二人いたらもう大変ですね。

ストーリー

フリークショーで虐待されているから助けてほしいと依頼されたデッドプール。美人のヒゲ女に鼻の下を伸ばし、ショーの支配人であるロブスターボーイの殺しを請け負った。
ショーが開催されるお祭りを楽しむデッドプールは、ゴーストライダー兄弟:ジョニーダニーにばったり出くわす。

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デッドプールはショーを進行するロブスターボーイの眉間を打ち抜いた。
だが彼は死なず、悪魔の顔を露わにすると、虜にしたフリークたちを操り暴れ始める。

そこに居合わせたのはゴーストライダー兄弟。二人はロブスターボーイに憑りついた悪魔グザファン(XAPHAN)を狩りに来ていた。
宿主を殺さず悪魔だけを外に出さねばならないと言うゴーストライダーたちに、デッドプールは作戦を提案する。

得意の「自分の足ちょんぱ」でフリークに扮し、サーカスのテントに潜入したデッドプールグザファンに見つかる。
ヒーリングファクターに目をつけたグザファンは、作戦通り、ロブスターボーイの体を捨ててデッドプールに憑りついてくれた。

デッドプールのイカれた頭をグザファンが支配しきることはできない。
デッドプールの合図によって、ゴーストライダーズが放った鎖がグザファンを地獄に連れ戻した。

再生したデッドプールは、無事に生き延びフリークたちを怒鳴りつけているロブスターボーイを改めて殺して仕事完了。
後はヒゲ女ちゃんと熱い夜を過ごすだけ。

感想とメモ

フリークショーと悪魔が登場するダークなお話。今回もプールは殺し屋です。
罪なき人を守り悪魔を退治するのが目的のゴーストライダーズに対して、プールはやりたい放題。
マイペースなデッドプールに首を突っ込まれ、ゴーストライダーたちのみならず悪魔もタジタジでした。
やっぱりクレイジープール最強説。

ジョニーとダニーのゴーストライダー兄弟は格好いいですね。スーパーナチュラル。
長髪のダニーの方が短気で、金髪のジョニーの方が落ち着いてる感じ。レザージャケットとロングコートが似合うこと似合うこと。

そんでゴーストライダーに変身すると実に絵になる。炎の赤・オレンジ・黄色が画面に躍るのがキレイです。二人もいるとむしろ絵面がうるさい。
バイクのデザインや炎の色は二人ともちゃんと違うんですね。
プールはジョニーの後ろに乗せてもらってました。頭、熱くないのかな。

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プールは今回もやりたい放題ですね。
ヒゲ女ちゃんのためにパワハラ男のロブスターボーイをぶち殺し、おとなげなく射的の景品を独り占め。

今回の話って、前回を意識して作ってるんでしょうかね? チームアップ相手は兄弟だし、トロイの木馬作戦も似てる。
なのにデッドプールに対する扱いが正反対ってのがおもしろいです。

ゴーストライダーズは、罪なき人は傷つけたくない。今回も「宿主を殺すことなく」悪魔だけを攻撃したかった。
ってことで途中で始めた兄弟ゲンカは、「さっさと悪魔を倒さないと犠牲者が増える」とはやるダニーを、「考えなしに突入したらそれこそ犠牲者が増えるぞ」といさめるジョニーって感じ。

デッドプール「なんだよ、兄弟みたいにケンカしちゃって」
ジョニー「兄弟だ!」

そこでデッドプールの体に憑りつかせることで、デッドプールごと攻撃したれという作戦をプール本人が提案。
本来そうすると宿主は死んじゃうんですが、デッドプールなら回復するから大丈夫と。
悪魔グザファンに殺されたら永遠に地獄で苦しみ続けることになる、とゴーストライダーズに警告されましたが、プールは「白バイ野郎」の妄想に気を取られて聞いてなかったようです。

で、プールはあんよをちょんぎることでフリークとしてテントに潜入。一話一欠損ってノルマでもあんのか。

デッドプールに憑りついた悪魔が、デッドプールの精神に話しかけられて戸惑うのがかわいいですね。
どうもデッドプールの精神をのっとったり操ったりすることは誰にもできないみたいです。
半分は支配できたとしても、もう半分にはデッドプールが残っちゃう。
「デッドプールには自分自身と戦わせとけ」っていうナイトメアの方針は正しかったようです。

ジョニー「勇敢な行いだったぞ」
デッドプール「だろ」
ダニー「言ってろ」

#896 US エース(US Ace)

ストーリーはStuart Mooreさん、アーティストはShawn Crystalさん。
迫真の顔のユリシーズをデッドプールがひたすら邪魔します。すごく好き。

チームアップキャラクター

USエース(US Ace)ことユリシーズ・ソロモン・アーチャー(Ulysses Solomon Archer)が登場!
誰だよ!
知らないよ!

その昔、個人誌として登場したトラックドライバーのキャラクターだそうです。
兄のジェフに陥れられて事故ったところを宇宙人に救われ、頭を改造されて特殊なラジオ派を受け取ることができるようになったと。
宇宙で結婚して幸せに暮らしてたんですが、なんやかんやで地球に戻る羽目になり、ひとりぼっちで再びトラックドライバーとして生活してるのが今の状況。かわいそうに。

表紙絵で頭の中に金属があるのをちゃんと描写してくれてますね。それ描かないと特徴がないからかな。

ストーリー

宇宙に家族を残して一人地球で働く、USエースことユリシーズ・ソロモン・アーチャー
邪悪な兄のジェフから請け負ったトラック輸送の仕事のパートナーは、よりによってデッドプールだった。
憧れのトラック野郎になってウキウキのデッドプールに、ユリシーズは文字通り頭を痛める。
そんな二人が運ぶ荷物を、毛むくじゃらの刺客が狙っていた。

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ユリシーズの宇宙人に改造された頭はラジオ波を受け取ってしまうため、隣のトラックで無線に向かってしゃべりまくるデッドプールの声があまりにもうっとうしい。
我慢しながらトラックを走らせていると、突如、銃器で武装したアライグマに襲われた。

アライグマを振り切ろうとする二人だが、巨大なアライグマの運転するトラックとデッドプールのトラックが衝突。
荷物の様子を見に行ったユリシーズは、それが宇宙への移動装置(Hyperspace Combustion Manifold)だと知る。
これを車に取り付ければ宇宙にいる家族のもとに行けると期待するが、デッドプールがマッチの火を点けたせいでトラックも荷物も爆発してしまった。

兄のジェフがあのアライグマを雇い、強盗による保険金を狙っていたのだとユリシーズは悟る。その過程で弟が死のうとジェフには構わなかったのだ。

ユリシーズジェフに詰め寄るが、兄は涼しい顔で別の仕事を提示してきた。
そこにデッドプールが「こんなやつの仕事より、俺と一緒にトラック野郎として楽しくやっていこうぜ!」と口を挟む。
ユリシーズは速攻で兄の仕事を選んだ。

感想とメモ

今回はユリシーズが主役。そこにデッドプールが割り込んで来てひっかきまわされて不憫だな~という話。
やさぐれたユリシーズに絵柄がぴったり似合っててすごく好き。

USのことはUSと呼べばいいのかユリシーズと呼べばいいのか、どっちでもいいのか。
彼は宇宙に愛する家族がいるものの、なぜか地球に来た今は孤独な毎日。金欠のようで、嫌いな兄貴に仕事をもらわないとどうしようもないみたいです。
愛車のトラックには色んな武装や仕掛けが内蔵されてるらしい。目玉に羽の生き物がモチーフのようで、帽子やトラックのあちこちについてます。

兄のハイウェイマン(Highway-Man)ことジェフは、もともと弟の方が宇宙人から認められていることにコンプレックスを抱いており、悪魔サタンと契約して邪悪な力を手に入れたらしいです。だから顔もちょっと悪魔っぽくてクール。
今回の話だと、弟のことは嫌いだけど憎んでるってほどではなく、いじめて楽しんでる感じですね。

疲れ気味のユリシーズをよそに、デッドプールが遠慮ゼロではしゃぎまくるのがひどいもんだ。
今回のプールは終始テンション高くてうっぜぇですね。トラック野郎に憧れがあったらしい。無線用語も楽しそうに繰り出してきます。
なんかユリシーズのことも大好きみたいでコミュニケーション過剰です。ブロマンスを期待すんな。
ただでさえ薄幸な状況のユリシーズが、よりによってプールに好かれる様は不憫でおもしろい。

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表紙絵にも出てる武装したアライグマたちは、ロケットラクーンと同じ遺伝子操作で作られた生き物らしい。ユリシーズはロケットに会ったことがあるらしいです。
USエースってのは宇宙ヒーローに分類されるんですね、今回地球に引きずりもどされてかわいそうだけど。

ジェフもひどいことをするもんで、ユリシーズが使いたがるだろう宇宙への転送装置の部品をわざわざ運ばせたわけです。中身を見ることは予想してたんでしょうね。でもそれをアライグマギャングに奪わせてしまおうと。
せっかくアライグマを追い払ったんですが、デッドプールがマッチの火を点けたせいで、車も機械も爆発。
ユリシーズは腕を折っちゃってもう散々な結果です。

デッドプールを仕事の相棒にして死ぬほど一つもいいことなかったね。チームアップってなんだっけ。
US「巨大なアライグマが俺を襲った」
プール「俺もね」
US「事故の保険金のために俺が死んでもかまわなかったんだな」
プール「俺もね」
プールうるさい。

デッドプールが冒頭の方で持ってるのは「THE TOTALLY WICKED BOOK OF C.B. SLANG(超イケてるアマチュア無線用語集)」。
今の時代、同じものがWikipediaで読めるぞ。勉強になるね。

  • Breaker!:初めて通信するときの掛け声。
  • What’s your twenty?:「そちらの現在地は?」って意味。「10-20」という用語から来てるみたいです。
  • What’s your handle?:「handle」はハンドルネームのこと。
  • Will you be my Facebook friend?:無線は関係ないです。

最後にデッドプールが歌ってるのは「またUSエースに会いたけりゃ、GirnerとAlonsoにメールしな~♪」
ガーナーさんとアロンゾさんはデッドプール個人誌の編集者。
メールはなかったみたいです、残念。

#895 その名もリビング・コロッサス(It! The Living Colossus)

ストーリーはChristopher Longさん、アーティストはDlibor Talajicさん。
表紙の絵だけ見たら顔色の悪いシングかと思った。

チームアップキャラクター

Itことリビング・コロッサス(The Living Colossus It)は、とりあえずでっかい彫像です。
ロシアの彫刻家が作った像で、宇宙人に回路を埋め込まれて動くようになったらしい。
展覧会のためにアメリカに運ばれてきて、宇宙人に操られて暴れ出したのを、特殊効果技師のボブ・オブライエンによってなんやかんや鎮められた。
その後ボブはリビングコロッサスと何らかのリンクを持ったらしく、像を操ることができるようになったとか。

「リビング」というものの、像自身に人格があるわけじゃないです。

ストーリー

デッドプールを雇った美女。彼女は、ドクター・ドゥームとの戦いで植物状態となってしまったおじのボブを助けるため、潜水艦で海へ潜るという。
海中に沈んでいたのは巨大な像、リビングコロッサスだった。

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ボブはかつてリビングコロッサスと意識をリンクさせ、操ることができた。
だからそばにいればボブが意識を取り戻すのではないかと望みをかけ、デッドプールとともに潜水艦内でじっと待つ。

そこに巨大な海中生物が襲いかかってきた。
慌てふためくデッドプールは、ボブの体を動かすとリビングコロッサスも動くことに気付く、
像を操ってなんとか怪物に応戦するが、潜水艦は浸水し始める。

と、ボブが意識を取り戻し、リビングコロッサスと精神をリンクさせることに成功する。
リビングコロッサスは残りの怪物たちを退治し、潜水艦を抱えて海上に戻った。

三人とも無事で一件落着。
美しいともっと深い関係になりたいと誘ってみるデッドプールだったが、マスクの下は見せない方が良かったね。

感想とメモ

今回はヴィジュアル重視のアクション回。だからあんまり書くことはない。
海中でのサメっぽい怪物と巨大なリビングコロッサスとのバトルが見どころです。
プールは美人の姪ちゃんにつられて、まんまとめんどくさい仕事を引き受けちゃったようですね。

リビングコロッサスがなんなのかはさっぱり分かりませんが(微妙に説明入れてくれるけど)、話は単純なので問題ないですね。

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ボブとリビングコロッサスはなんらかの精神的リンクがあるらしい。
ボブ本人が無意識でも体を動かすとリビングコロッサスも動いちゃうというわけわからん状況。
姪ちゃんのガイドとプールの操作でなんとか怪物に応戦する。マリオパーティーかよ。

姪ちゃんも特に宛てがあるわけじゃないのに、とりあえず近くに行けば何か起こるんじゃねーかと海中に潜るってのはすごい度胸です。
デッドプールは大量の刀を持ち込んだけど、巨大海中生物には役に立たんじゃないかい。

海中でプールが脳内で言ってたジョークの意味は、下品なので各自で調べてください。
『クジラの割礼するのに必要なのは何人?』
『スキンダイバーが四人!(フォー・スキンダイバー)』
『Foreskin(フォースキン)ってことね!』

結局、海底で潜水艦が浸水して死にそうっていう、想像しただけでもぞっとする状況に。
プールは回復能力はあるけど、溺れるのは回復も何も関係ないよな。脳に酸素がいかなくなったら死ぬのかな。

で、彼女はいったいなんでまたデッドプールを雇ったのか、謎は深まるばかり。
求人を出してたらたまたまプールが来ちゃったのかもしれません。いまいち役に立ったかどうか不明だし。

顔を見られて盛大に嘔吐されるってオチはお約束。

#894 フランケンキャッスル(Franken Castle)

ストーリーはIvan Brandonさん、ペンシラーはSanford Greeneさん。
フランケンパニッシャーおよびモンスター連合とのチームアップ。キレイなオチがつく話。

チームアップキャラクター

フランケンキャッスルは、フランケン状態のフランク・キャッスル(Frank Castle)。ドクロがトレードマークの私刑執行人パニッシャーですね。ヒーローに分類されるものの、悪党を容赦なくぶち殺す危険な男。紹介記事があるよ。
ひょんなことから殺されたんですが、モービウスとモンスター連合によってフランケン状態で生き返らせてもらったらしいです。で、フランケン状態でモンスター連合と活動してるのがこの話での状況。

デッドプールとパニッシャーはお互い「この人殺しめ」と思ってる感じで、仲良くはありません。
上の方に書いた「デッドプール:スーサイド・キングス」では、プールがパニッシャーに殺人容疑をかけられ命を狙われてました。

ストーリー

パニッシャーことフランク・キャッスルに夫を殺されたと言う美しき未亡人
やつの顔を見てしまったせいで自分も狙われていると涙する彼女を、デッドプールは自分が守ってやると約束した。
が、デッドプールはキャッスルが既に死んだらしいと聞いていた。死んだ証拠を持って行ってあげれば彼女も安心するだろうと思って下水道を探索し、怪物たちのたまり場に行きつく。
そこにいたのはフランケンシュタインと化したキャッスルだった。

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苦しみ出したフランケンキャッスルに、モービウスが薬を与えようとする。
キャッスルを殺したいデッドプールは、薬を横取りして自分でごっくんしてしまう。そして体調を崩しながらも、暴れるキャッスルを押さえ込んだ。

そこに、人の記憶を可視化するイエティがキャッスルの記憶を投射する。
デッドプールを頼ったあの未亡人こそ、キャッスルが狙う悪党軍団のボスだったのだ。彼女は夫を犠牲にして逃走し、デッドプールを利用してパニッシャーを始末しようとしていた。

だまされたと悟ったデッドプールは、フランケンキャッスルと一緒に未亡人のもとへ。
しかしそこには、彼女にだまされたウルヴァリンが待ち構えていた。お前もか。

感想とメモ

今回も美女にデレデレして仕事を引き受けるデッドプール。
下水道に怪物大集合というとおどろおどろしそうですが、みんなお茶目な顔しててなんだか愛らしいです。
デッドプールの軽々しいノリによる捜査と、オチで「ありゃりゃ」と終わるのが楽しいお話。

黄色と白のキャプションたちが元気にしゃべり合ってます。プールを黙らせてもキャプションたちがうるさい。

クリックでネタバレ含む感想

おくちのないイエティくんが愛くるしいですね。
人の記憶を投影する能力があるようで、無駄にデッドプールの子ども時代のトラウマを掘り起こしました。

デッドプール「ママが俺の下着全部洗濯しちゃってたんだもん」
白キャプション『ガーターも付けてたくせに』

モービウスは通称「生けるヴァンパイア(Living Vampire)」。
もともと人間ですが、不治の病の治療を図ったあげくヴァンパイアになってしまった科学者です。
この話の時は魔物ハンターの手から罪のないモンスターたちを守ろうとニューヨークの地下に基地を作っていたようです。
ちょうど近くで殺されたパニッシャーの肉片を集めてつぎはぎし、生き返らせてあげたと。
パニッシャーはダケンが殺したらしいですが、現場には爆発の跡がありましたね。爆殺したのかな。

フランケンキャッスルはしばらくモンスター連合の用心棒として働いた後で、魔法のジェムによって人間に戻ります。

パニッシャーが殺された現場は一種の観光地と化してたんですね。
けっこう派手なニュースになってそうなもんですが、未亡人さんは知らなかったと。
いや、むしろどこかでパニッシャーが生きてることを知ってたのかな。だからわざわざデッドプールと、保険としてもう一人雇ったと。
オチに使われるウルヴァリンがおもしろすぎる。

最後に

殺し屋稼業を楽しむデッドプールのマイペースな日常でした。
意味不明なセリフは飛ばして読んでもいいけど、時間があったら調べてみるとだいたいおもしろいこと言ってます。

アメコミだから、英語だからといってすべてを理解しようとせず、「なんやかんやそうなったのね」と一旦飲み込むのが大事です。
めちゃくちゃ複雑な背景があれば理解するだけで大変ですし、そもそも背景なんてなく、急に設定がぶちこまれてるだけってこともありますので。

軽い気持ちでただ楽しむっていうのにぴったりなのがこのシリーズです。
原語コミックを読んでみたいってかたはぜひ手に取ってみてください。

第二巻もマイナーキャラたちが目白押しでおもしろいよ。