DEADPOOL TEAM-UP VOL3【マーベルコミック感想】

マーベルコミックの個人的な感想とおもしろポイントのメモ。
以前の記事に続いて同シリーズの単行本3巻をご紹介。

DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)VOL 3

デッドプール好きならマーベルコミックを読もう。
ライターさんもアーティストさんも、複雑なデッドプールが持ついろいろな魅力を引き出してくれています。
自分は別にデッドプールのファンとかそういうわけじゃないんですけどね、別に、デッドプール大好きとかそういうわけでもないんですけど。

もう読んだ人はもちろん、これから読むところという人、予習してから読んでみたいという人も参考にしてみてね。
話のネタバレ部分は折りたたんであります。

DEADPOOL TEAM-UP(デッドプール・チームアップ)

シリーズ全体の紹介は前の記事をどうぞ。

DEADPOOL TEAM-UP VOL1【マーベルコミック感想】
マーベルコミック「DEADPOOL TEAM-UP」の第1巻を紹介。デッドプールとブラックジョークが好きならたまらないおもしろさ。

VOL 3 BFFs

チームアップキャラとストーリーを1話ずつ紹介していきます。
ストーリーはさわりの部分だけとし、結末のネタバレは折りたたんでありますので、読みたい人だけ開いてください。

この記事では単行本3巻「BFFs(ズッ友たち)」に含まれる第888~883話までを見ていきます。
今回は大物ヒーローたちがようやくお目見え。表紙のソーがゴージャスです。

「Deadpool Team-Up Vol. 3: BFFs(MARVEL)」
※Amazonへのリンク

アメコミの紙の本はB5のペーパーバックが多いですが、A4くらいのハードカバーもあります。
自分の持ってるこの本はハードカバー。本棚に微妙に収まらない縦幅です。

#892 シング(The Thing)

ストーリーはCullen Bunnさん、アーティストはTom Fowlerさん。
お待ちかね、大物ヒーローとの共演。ファンタスティックフォーの岩石野郎とタッグマッチだ。

チームアップキャラクター

シング1ことベン・グリムは、岩のようなボディと見た目通りの怪力・耐久力を持つパワー系ヒーロー。

マーベル最古のヒーローチーム、ファンタスティック・フォー(FF)2の一員であり、つまり大御所。クロスオーバーものでは必ずと言っていいほど登場します。
FFといえば俺様インテリなリード・リチャーズが中心人物ですが、彼らをチームとして・家族としてまとめてるのはまぎれもなくベンの兄貴力だと言えます。

学生時代フットボールもたしなんでいたベンは、体育会系で若干ガラ悪め。
今回の話ではプロレスの元チャンピオンだと判明してますが、ポーカーみたいなカードゲームもかなり強かったりします。

おなじみの決めゼリフは「鉄拳制裁タイムだ!(It’s clobberin’ time!)
今回もちゃんと言ってくれます。

デッドプールとの共演もありますが、邦訳本ではパッと思いつきませんね。
昔の「ケーブル&デッドプール」シリーズの最後の方(未邦訳、ケーブルが出てこなくなった後)で、デッドプールがFFに怒られたり手を貸してもらったりする話がありました。

ストーリー

無差別級レスリングの一大イベント、メガ・マッチが開催される。
前チャンピオンのシングことベン・グリムは解説者として招かれていた。
試合を楽しみに語るベンだが、デッドプール率いるヒールレスラーの登場に渋面を見せる。

一週間前、デッドプールはレスラーになりたいと協会に押しかけ自己アピールをかましていた。
ちょうど居合わせたベンは不審者プールを叩き出そうとしたが、ジェネラル・マネージャーのジムが引きとめる。
マネージャをボコボコにすることで知られるヒールレスラーたちのマネージャにならないか(あんたなら回復するから何されても平気でしょ)とスカウトされ、デッドプールは快諾したのだった。

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試合が始まると、ヒールレスラーたち(デッドプール含む)は、どう考えても反則の暴力行為を次々と繰り出す。
怒ったベンは止めようと身を乗り出すが、ジムは「筋書き通りだから大丈夫」と笑うばかり。
ベンが今のレスリングはシナリオに従う茶番なのだと知ってしょんぼりする一方、デッドプールは自分のチームが勝って大満足。

そこに突如閃光が走り、リングの上に謎のロボットと「マックス・インテンシティ(Max Intensity)」を名乗る宇宙人レスラーが現れた。
自信満々で挑戦を申し出る宇宙人たちに、盛り上がりそうだと喜んだジムがさっそく試合を取り付ける。

マックス・インテンシティは強く、人間のレスラーたちでは歯が立たない。
見かねたベンがタキシードを破り捨てリングに飛びこんだ。

ベンは超重量級のボディを惜しげもなく振るってマックス・インテンシティとやり合う。
追いつめられた宇宙人レスラーは二体に分裂。
デッドプールはタッグマッチの時間だと大喜びでリングに上がり、スーツを破り捨てて観客に吐き気を催させた。

2対2の鉄拳制裁タイム。

結局伸されたデッドプールだが、ロボットがソニック・ディスラプター(つまり兵器)を持っているのを目撃する。
なるほどと思い直し、マックス・インテンシティにピンを抜いた手榴弾をプレゼントした。
派手な爆発とともに試合終了。

ロボットの方は生き残ったものの、ジムたちがにこやかに歩み寄り次の興行の相談を始める。

やるせないベンの隣で、レスラー気分のデッドプールはどこまでもごきげんだった。

感想とメモ

デッドプールが終始楽しそうでうっとうしい。
テレビでベア・アーサー3銘板のCMを探してたらたまたまメガ・マッチを見かけて、参加すべきと天啓を受けたらしい。
もっともらしくプロレスの良さを語ってるけど、暴力振るっても怒られないどころか褒められるってのが魅力的だったようです。

レスラーとしてではなくサンドバックもといマネージャとして採用されたわけだけど、結局あのヒールレスラーたちに八つ裂きにはされませんでした。

今回のチームアップ相手はベン・グリム。重鎮ヒーローとチームアップできてプールもウキウキ。
一方でベンのプールに対する好感度の低さがおもしろいですね。完全にサイコキラー扱い。
つれないベンに対して、プールは「チームアップの様式美だ! 最初は相手を誤解して拳を交えるけど、後に分かり合って共通の敵と戦うのさ」と嬉しそうなメタ発言。的確であります。

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登場ヴィランは謎のロボットと宇宙人レスラーのマックス・インテンシティ(Max Intensity)。
調べてみても情報が出てこないから、この話で初出のちょいキャラかな。
DP「デクスターズ・ラボ4にこんなやつ出てこなかったっけ」

ロボットが持ってるミサイルみたいなやつは、起動するとアリーナ中の生物をジュっと蒸発させちゃう兵器らしい。
DP「スペースモジュレーター3かよwwww」

人間に比べたら圧倒的に強いマックス・インテンシティでしたが、ベンにかかれば赤子の手をひねるようなもの。
なぜか上着を脱いだデッドプールのせいもあって絵面はグロテスクながら、プロレスらしいド派手なアクションが楽しいバトルでしたね。

というかベンって、チャンピオンになったときは人間の体だったのかな。
無差別級だから岩ボディでもいいのか。でもあのギガトンボディとまともにやりあえる一般人なんて……。

今回プロレスの話ってことで、よくある「筋書き問題」が話に出てきました。
ジェネラル・マネージャのジムはエンターテイメント性重視で、ガチの試合かどうかより盛り上がるかどうかを考えてます。
一方のベンは正統派スポーツマンだから、シナリオで決められた茶番じゃなく、ガチのぶつかり合いの方がいいと思ってると。
プールの方もせっかく楽しくラフプレーしてたのに、織り込み済みと言われたらショック……かと思いきや、勝ったからご機嫌みたいでした。

「シナリオ通り」と言われたときのプールが第四の壁認識と葛藤するのがおもしろい。
DP「シナリオ通りなんてそんなわけない! いや、コミックだから全部シナリオがあるのは知ってるけど……でもプロレスは違うんだもん!」

にこやかなジムがいちいち「口を挟んで申し訳ないが(I hate to cut you off, but…)」って口を挟んでくるのはギャグ。

最後にデッドプールがグダグダ言ってるのは、試合後コメントってことでしょうか。
本人が楽しそうだからいいでしょう。
映り込むベンの呆れ顔がいいオチ。

#887 ソー(Thor)

ストーリーはRob Williamsさん、アーティストはMatteo Scaleraさん。キャプテン・ブリテン回と同じコンビです。
ゴージャスなソー(噛ませ犬)とお近づきになってデッドプールも大興奮。

チームアップキャラクター

アスガルドの雷神ソーは、北欧神であるトールその人とされています。
コミックファンはもちろん、マーベル映画がお好きなかたには言わずもがなのヒーローでしょう3

全能の神オーディンの長男で、神の国アスガルドの王位継承者。義弟であるいたずらの神ロキも有名3
ふさわしい者だけが持つことのできる神のハンマー:ミヨネア(ムジョルニアとも言う)を携えています3

ソーはアベンジャーズの「ビッグ3」と言われる中心キャラの一人。
登場シリーズも多く、クロスオーバーものにもよく出てきます5

デッドプールとは、邦訳されているものだと「デッドプールの兵法入門 (ShoPro Books) 」でガッツリ絡んでますね。ソーもロキもプールに振り回されてました。
この本はコメディテイストでめちゃめちゃおもしろいです。

興味があれば紹介記事もご覧ください。自分はソーのファンなので、説明を始めると長くなります。

ストーリー

オクラホマ州ブロクストンにある、神々の国アスガルドの遺跡。
考古学者のノーラン博士は、アスガルドの遺物や金目のものを手に入れようと遺跡に侵入した。
そこには、雇われて盗掘に来ていたデッドプールと操縦士タンの姿が。

兜をかぶってアスガルド人気取りのデッドプールは、博士を捨て置いてあたりを探索する。
何気なく小石を蹴り飛ばしたと思ったら、それはスターク社製のセキュリティセンサーだった。
雷鳴とともに、雷神ソーが盗掘者を捕まえんと現れた。

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タンに置き去りにされたデッドプールのもとにソーが降臨し、拳を振り上げる。
だがデッドプールが無抵抗な様子を見て、ともあれ矛を収めてくれた。

一方、博士は緑に光る宝石の中に奇妙な美女の姿を発見していた。
デン・ヴァクレ(Den Vakre)と名乗るその女は望むものを与えると取引を持ち掛け、博士の体内に侵入した。
悪霊ヴァクレは、自分を封印したオーディンの息子ソーを見つけ襲いかかってきた。
クマの姿に変身し、強大な力でソーを打ち倒してその肉体を乗っ取ろうとする。

カウンセラーに電話していたデッドプールは、ソーに渡された封印のアミュレットを投げつけて悪霊ヴァクレを博士の体から追い出した。
ヴァクレはもがきながら新しい宿主を探すが、デッドプールの醜さにはさすがに耐えかね、脆弱な博士の体に戻った。
再び熊に変身する前に、ソーのハンマーとデッドプールの拳が博士の顔面にヒット。

ヴァクレを再び封印して一件落着。ソーもデッドプールの行いを認めてくれた。
ヘリで戻って来たタンはインド料理を買ってきたらしい。

感想とメモ

雷神ソーが降臨召されるとなったら、デッドプールじゃなくても大喜びです。
仲間が強い分、敵も強力な悪魔でした。デッドプールは通常運転。

「アスガルド」はソーたち北欧神の住む神の国。
いろいろあって滅亡して、ソーが一旦オクラホマの上空に再建して、フィアー・イットセルフという事件でまたぶっ壊れて、その後アスガルド以外の国も含めた連合国アスガルディアとして改めて再建されました。
このエピソード時点ではオクラホマに残骸だけが残ってるみたいです。

飛行機運転手のタン(Tan)は、キャプテン・ブリテン回でデッドプールに憎しみのパラシュートしかくれなかった人。
今回ももちろんデッドプールを置き去りにして逃走。

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悪事を怒られるかと思いきや、第三の敵のおかげでちゃんとチームアップできましたのパターン。
ゴージャスで強そうなソーがすぐやられちゃうのは様式美。
デッドプールが面構えで敵を退けるのも様式美。

ソーがデッドプールに案外優しく接してくれたのが微笑ましいですね。プールのボケはエレガントにスルー。

「あいつ独りでくっちゃべってた(talk to himself)」ってツッコミは汎用性が高い。みんなすぐ一人でしゃべる。

DP「メガネ野郎には手を出せねえ(never sice the major artery of a guy with glasses)」
ノーラン博士ってちょっとウィーゼルに似てるね。

ソーのセリフは相変わらず古めかしくて難しい。
フォントはいつもの古めかしいやつじゃなくて普通(ちょっとかわいい)なので読みやすい。

DP「ジョック! エンジンかけろ!(Jock! Start the engines!!!)」
プールの説明通り、インディ・ジョーンズネタ。説明するプール。
インディと聞いたタンは「インド料理」を買ってきたそうです。

ソーに痺れるほど殴られて喜ぶプール。

ソーはプールの軽口に、義弟のロキを思い出したみたいです。
ソー「あれもよく冗談を言う。だが冗談は幸福をもたらしはしない。苦悩を覆い隠しもせん」
ロキにはなんだかんだちゃんと愛情を持ってる兄上ですね。
この頃のロキはおそらく子供の姿で、悪事はあんまり働かずソーを助けてくれたりしてました。

DP「あんたってマジ魅力的(I really find you very attractive)」
DP「やべ、口に出してた?(Did I say that out loud?)」
DP「もちろん俺ノンケだけど(I’m heterosexual, really)」
ソーが魅力的なのは仕方ない。

ソーの「アスガルドのために!(For Asgard!!!)」はいつもの決めゼリフ。
プールの「アルバカーキのために!(For Albuquerque!!!)」はたぶんただの語呂。

勇ましく向かって行くソーはすぐやられちゃいます。
敵の強さを物語ってるんですが、面白いのは仕方ない。

DP「邪悪な白熊…。邪悪な白熊ってなんだよ(Why’d it have to be demon polar bears)」
これもインディ・ジョーンズネタ6

ソー「そなたは力を秘めている(You are capable of more)」
デッドプールにこんなこと言って認めてくれるソーが魅力的。自分はすぐボコられてたくせに。

#886 アイアンフィスト(Iron Fist)

ストーリーはShane Mccarthyさん、ペンシラーはNick Dragottaさん。イモータル・アイアンフィストの個人誌も手がけてるアーティストさんです。
カッコよく決めるフィストとふざけたプールがいい表紙。巻末にこの話の表紙デザイン案がたくさん載ってておもしろかったです。

自分はソーのファンで、アイアンフィストのファンでもあります。前話からの流れの嬉しいことと言ったら。

チームアップキャラクター

アイアンフィスト(Iron Fist)は、チベットの秘境クン・ルン(K’un-Lun)にて修行を積んだ伝説の戦士。
武術の達人で、秘境に眠るドラゴン:シャオラオの強大なパワーを拳に宿しています。

マスクの下はニューヨークに住む社長のダニー・ランド
クン・ルンのために戦ったり市井で雇われヒーローをやったり友達の代わりに刑務所に入ったりアベンジャーズに加わったりと、迷走幅広く活動してるヒーローですね。
今回の話ではクン・ルンの守護者として任務を負っているようです。

低迷期もあったアイアンフィストですが、2006年の「イモータル・アイアンフィスト」シリーズが高く評価されて息を吹き返しました。
大物ぞろいの3巻に出てるのもその辺がうかがえます……かね。次の話は牛だけど。

デッドプールとはこのシリーズ以前にもちょこちょこ絡んでます。
ケーブル&デッドプール 桃色の誘惑」で会社に忍び込んだデッドプールをつまみ出したり、「シビル・ウォー」では取り締まりに来たデッドプール相手にデアデビルの恰好でちょっと戦ったり。

アイアンフィストについても紹介記事がありますので、興味があればご覧ください。

ストーリー

殺しの依頼を受けてロッキー山脈にやってきたデッドプール
ターゲットはジン・ゴー(Gin Goh)という男。こいつを見つけ出し、邪魔者を含め抹殺するのが今回の仕事だ。
居場所を見つけたはいいが、大勢の敵に囲まれ、弾切れの上に崖に追いつめられてピンチ状態。

そこにアイアンフィストが現れ、デッドプールと一緒に敵をカンフーでなぎ倒していく。
アイアンフィストもまた、故郷クン・ルンの敵であるジン・ゴーを狙っているらしい。

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ジン・ゴーはかつて中国のある地方を征服した悪党で、牢獄から逃走したという。
殺されても転生する力を持っているジン・ゴーを、アイアンフィストは殺さずに捕らえようとしている。
一方のデッドプールは殺さないと報酬がもらえない。そこで「殺さないよ」とテキトーなことを言ってアイアンフィストと協力することにした。

敵の要塞は崖下にある。密かに侵入しようとするアイアンフィストをよそに、デッドプールは頭から自由落下で突っ込んだ。

二人は派手なアクション(描写は省略)で手下たちをなぎ倒し、広間にジン・ゴーの姿を見つける。
ゴーの持つ呪い剣「ブラック・タン(the Black Tongue)」は、相手を少しでも斬れば即死させてしまうという。
回復能力が自慢のデッドプールは、アイアンフィストの警告を無視して突撃。
呪いの剣にバッサリ斬られ、死にはしなかったものの、いつもなら治るはずの傷が一向に回復しない。

そこに、銃で武装した戦士たちが乱入してきた。先頭に立つのはデッドプールの依頼人だ。
彼ら一族は故郷を征服したジン・ゴーを憎み、何百年も復讐の機会を待っていたという。

発信機として利用されたと悟ったデッドプールは、自分がジン・ゴーを食い止めるとアイアンフィストに申し出る。
アイアンフィストが戦士たちの攻撃をやめさせる間、デッドプールは何度もジン・ゴーの剣に切り裂かれ深い傷を負う。
戦士の一人、依頼人の息子がジン・ゴーに近づき銃口を向けるものの、その巨躯を前に体がすくんでしまう。
デッドプールはジン・ゴーの気を惹き、呪いの剣で胸を刺し貫かれてしまった。
だが死なないデッドプールは頭突きを返し、怯んだジン・ゴーにアイアンフィストの拳が炸裂。
戦いは終わった。

依頼人は引き金をひけなかった息子を責めるが、アイアンフィストが黙らせる。
復讐の連鎖を断ち切り、次代には希望と赦しを伝えるべきだと息子を勇気づけた。

体中に傷を負ったデッドプールもまた、復讐と殺戮の虚しさを口にする。
依頼人に報酬の一部を払うよう要求すると、雪の中を独り去って行った。

感想とメモ

このシリーズでもっともチームアップしてると言えるエピソードでした。
デッドプールとアイアンフィストの内面的な「らしさ」がよく表れてて、ギャグもありながらシリアスな深みのある良い話です。

今回のデッドプールは格好いいですね。
いつも通りやかましいおしゃべりを振り回しつつ、不死身の体を投げ出す得意の立ち回りでしっかり活躍。
ウザくてクレイジーで孤独で強いデッドプールのヒーローらしさが垣間見えました。

鉄拳先生3は案外デッドプールに自然に接してくれてますね。
プールに対してあからさまに信頼ゼロなヒーローも多いですが、鉄拳先生は割とまともに会話して傷の心配までしてくれました。
もうちょっとカンフーアクションも見たかったですが、話の方が豊かだから仕方ないでしょう。

それにしても鉄拳先生、格好いい!(ファンです)

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殺しの依頼人に謎の正装で挑むプール。正装のつもりかは不明。
チーズの匂いがする(smells of cheese)って言われるのはいつものこと。

敵に何度も「赤いからたぶんスパイダーマン」とか言われるプール。知名度の差が。
DP「スパイディにこんな動きできるか!」
DP「これもスパイディにはできねーぞ!」
DP「雑魚に負けるなんてスパイディにはできないだろ!」
聞いてたらしい鉄拳先生が、後で「行ってこいよ、スパイディ(Go get him, Spidey)」とからかうのが微笑ましい。

IF「デッドプール、お手上げか?(In over your head, Deadpool?)」
チームアップ相手がプールを助けに登場する感じ、なんだか新鮮。
他のエピソードでは先に戦ってからチームアップしてました。

DP「ついでに黄色いスリッパと光る鉄拳も家に置いてきちゃった」
IF「忘れてた、お前ウザいんだっけ」
そうです。

DP「ほんとは殺す気であることをアイアンフィストは知る由もないのだった」
IF「わざと口に出してるんだよな?」
DP「もちろん、ただのジョーク」
黄色キャプション「ほんとは殺す気である」
DP「今の聞こえた?」
IF「何が?」
DP「なんでもない」
キャプション遊び。

ふざけた前半に対して、後半のジン・ゴー戦はいろんな意味で格好いい。

呪いの剣を前にまったく怖じ気づかないデッドプール。
アイアンフィスト含むクン・ルン人も「不死身(immortal)」が特徴ですが、自然な死が訪れないって意味で、どちらかというと「不老」の概念に近い感じ。
対してデッドプールのヒーリングファクターは細胞が復活するもので、だいぶ直接的。
DP「あんたたち”不死身風”(mortal “immortal”)とは違うんだよ」

大口叩いたものの、死なないけど回復もせず出血し続けるというかつてない状態に陥りました。
損傷と回復が相殺し合ったんでしょう。きっと痛みも新鮮に続いたんでしょう。
いつも足を切られても元気にはいずり回るデッドプールが、今回は弱った姿を見せていました。
約束を破ってジン・ゴーを殺そうとしたデッドプールでしたが、フィストはプールに忠告したり傷の心配をしたりでツッコミを入れる暇はありませんでしたね。

デッドプールの得意戦術は自分の体を犠牲にすること。
今回も「心臓ブッスリさせて剣を封じる」作戦によってアイアンフィストがジン・ゴーを倒すことができました。
いつも以上に苦痛が続くことや、戦ったところで大したものは得られないと分かっていたはず。
それでもプールを動かしたのは、依頼人が息子に言った「殺せ」の言葉だったかもしれません。

依頼人とその一族は、遥か昔に自分たちを襲ったジン・ゴーを憎悪していました。
クン・ルンに捕らわれていたジン・ゴーに復讐できる絶好の機会を逃すわけにはいかない。
必死になる依頼人に対し、アイアンフィストは復讐の無意味さを説きます。
復讐の連鎖はフィスト自身が体験したことでもありました3

フィストの言葉を聞いていたデッドプールは、傷をかばいながら復讐についての思いを漏らします。
DP「初めは気持ちいいだろうよ。でも続けていくうちに、殺すことがすべてになる。どうして始めたのかも分からなくなる。止められなくなる。もうそれしかないんだから(It’s all you have)」
デッドプールが自分自身を語っているように聞こえます。
助けた相棒を置いて独り、雪の中を去っていくプールの後姿はまぎれもなくヒーローに見えますね。

DP「俺は火影になるってばよ!(I will be Hokage!)」
アジアの戦士はみんなニンジャ。

#885 ヘル・カウ(Hell Cow)

ストーリーはRick Spearsさん、ペンシラーはPhil Bondさん。
大物ヒーローとの共演が続いたところで、満を持して吸血牛ちゃんが登場。

チームアップキャラクター

ヘル・カウ(Hell Cow)は吸血鬼となった牛。
生前の名前はベッシーといい、コンテストにも入賞した立派な乳牛でした。
何世紀も前に吸血鬼のドラキュラ伯爵に血を吸われて死に、墓場から吸血牛としてよみがえったそうです。

ええ、誰も知りませんよね。
なので本編でちゃんと説明してくれます。

ここまで知名度高めのキャラとのチームアップをやってきて突如登場したヘル・カウちゃん。
当時の読者のインパクトは絶大だったことでしょう。
みるみるうちに人気が出てデッドプールの相棒アニマルとして知られるよう……はなりませんでしたとさ。

2017年の「Spider-man/Deadpool」誌にまさかの再登場。

ストーリー

ネットで殺しの依頼を受け、待ち合わせ場所にやってきたデッドプール
まんまと罠にかかって頭をミンチにされ、気が付くと妙な研究室で檻に捕らわれていた。

犯人はキルゴア博士と名乗る老人で、デッドプールだけでなくヘル・カウも檻に閉じ込めていた。
結核を抱えた博士は不死となるために、吸血乳牛ヘル・カウからしぼったピンクのミルクを飲んでいる。

ヘル・カウはドラキュラに噛まれて死から蘇った乳牛で、吸血鬼のパワーを持っているという。
ハワード・ザ・ダック3によって胸に杭を打たれ埋葬されていたのを、博士が掘り起こして連れてきたらしい。

しかしミルクの効果は一時的なもの。博士は本当の不死を手に入れるため、デッドプールの脳細胞からヒーリングファクターを奪うつもりだ。

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キルゴア博士デッドプールの頭蓋骨をドリルでこじ開けて脳下垂体の細胞を入手。
遠心分離した謎のエキスをためらいもなく足に接種する。
すると博士は盛大に嘔吐し、体が異様に肥大してモンスターと化した。

デッドプールは密かに意気投合していたヘル・カウに合図し、拘束台を倒させて脱出。
ヘル・カウの檻の鍵を壊して解放してやり、暴れるモンスターキルゴアと戦う。
どこから来たのかもう一人のデッドプールがチラチラと映りこみ何か言ってくるが、銃撃の音に紛れてよく聞こえない。

なんやかんや追いつめられたデッドプールが最期にヘル・カウへの愛を伝えると、ヘル・カウはお返しにデッドプールの首筋を一噛み。
あっという間に吸血鬼と化したデッドプールは、立派な牙でモンスターキルゴアをがぶりと味見する。
ついでに火を点けて燃やして酸で溶かして、トイレに流して一件落着。

デッドプールはすっかり仲良くなったヘル・カウを伴い意気揚々と外に出て日の出を眺める。
ヒーリング・ファクターのおかげで吸血鬼化はもう解けていたが、もとから吸血鬼のヘル・カウは日光を浴びてハンバーグになってしまった。

相棒を失い悲しむデッドプール(ハンバーグはおいしくいただいた)は、コマを切り裂いて前のシーンに戻り、「牛に日光はダメ」と警告しようとする。
が、これではうまくいかないと悟り、出口のそばに潜んで待ち伏せする。
別のデッドプールがヘル・カウを連れて来たところに飛び出し、ヘル・カウの心臓に杭を打ち込んだ。

夜になって杭を引き抜くと、ヘル・カウは息を吹き返した。
不満顔のヘル・カウに対し、デッドプールは「助けるにはああするしかなかった」と弁解する。
何度もコマを戻って作戦を練ったおかげで、周りには大量のデッドプールたちが待っていた。手にはハンバーガー(牛肉)を持っている。
機嫌を損ねて立ち去ろうとするヘル・カウをデッドプールは慌ててなだめるのだった。

続かない。

感想とメモ

おふざけ100%のゆかいなエピソード。
ポップで明るい色づかいながら、ブラックジョークと吐き気を催すゴア描写が満載です。

科学者にとっつかまって利用されているヘル・カウちゃんに親身なデッドプール。
モーモー言うだけのヘル・カウと確実に心を通わせていく様がシュールです。
それにしてもヘル・カウはセリフないのに表情豊かで愛らしい。
ドラキュラ風のマントは標準装備のようです。

敵のキルゴア博士は絵に描いたようなマッドサイエンティスト。
DP「キル(Kill:殺)とゴア(Gore:血だまり)なんていい名前」
不死になりたいからって、よりによってデッドプールの細胞入れようなんて思いますかねえ。
ウルヴァリンの細胞の方がマシなような。ウルヴァリンがSNSで釣れたらおもしろい。
博士が吸血鬼にならない理由は「太陽浴びたいから」だそうです。ミルク飲むだけなら吸血鬼にはならないらしい。

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2ページ目がもう出オチ。

プールが脳みそ削られてる間の妙な発言はたぶんただの妙な発言。
DP「俺はプリティ・プリティじゃない!バーバレラだもん!」
DP「俺は征服者アレキサンダー!」
DP「月に気を付けて!」

デッドプール、吸血鬼になる。でもヒーリングファクターのせいですぐ直っちゃうらしいです。
吸血鬼になるしくみはそういうものなのか。
そして吸血プールになるやいなやキルゴア博士をさんざんな目に。まだ生きてるのに…。

今回の話はコマを切り裂いて前に戻るというデッドプールならではの第四の壁破壊能力を発揮。
それも敵を倒すためじゃなくヘル・カウちゃんを助けるために。
文字通りコマを飛び出すのはこのシリーズでは初めてでしたね。

「Mazel tov!」はヘブライ語の「おめでとう」だそうで、ドラキュラがユダヤ人だから?

#884 ウォッチャー(Watcher)

ストーリーはTom Peyerさん、アーティストはJacob Chabotさん。
牛の次に思いがけない重要キャラクターが登場。ひたすら悪ノリです。

チームアップキャラクター

ウォッチャーは文字通り、マーベルユニバースで起こるすべての出来事を「観測(Watch)」する存在。
観測すること自体が彼らの使命、存在意義であり、逆に言えば物事に直接影響を及ぼすことはできない。
言ってみれば我々読者と同じような立場になるわけです。

「ウォッチャー」というのは種族のようなもので、何人ものウォッチャーがそれぞれ担当する並行世界を観測しています。
正史であるアース-616の担当はウアトゥ(Uatu)というウォッチャー。
今回のエピソードに出てくるのも彼ですね。

キャラクターの性質上、物語に直接絡むことはめったにありません3
当然普通なら他キャラと短編でチームアップするなんてありえないんですが、そこはデッドプールということで。
ウォッチャーもデッドプールも超法規的なキャラクター。きっと良いコンビネーションを見せてくれることでしょう。

ストーリー

冒頭にて、ウォッチャー本人が読者に事情を説明してくれる。
彼はこの世のあらゆる出来事を観測するという任務を負っている。
もちろんデッドプールのことも観察していなければならない。どんなに嫌だろうと。

当のデッドプールは金欠に困っていた。
献血センターにゴミを売ろうとして追い返され途方にくれていると、脳内キャプションたちが「先週稼いだ830万ドルがあるじゃないか」と言い出した。
デッドプールは金の隠し場所をすっかり忘れていたが、キャプションたちは覚えているらしい。
キャプションたちの案内に従い、金を探しに出発した。

脳内からの的確な指示によって、デッドプールはバーの汚いトイレに立ち寄る。
そこにはデッドプールを見守るウォッチャーの姿が。

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デッドプールはのぞき魔ウォッチャーからの誘い(誤解)を断り、キャプションの指示に従ってビルの上へ。
エレベーターに乗り込むと、ウォッチャーに先回りされていた。
演出過剰なウォッチャーにびっくりして銃を乱射したところ、エレベーターが壊れ閉じ込められてしまった。
脱出しろとキャプションたちに迫られる一方、ウォッチャーは「干渉できない」と言い張り何もしない。

仕方なくエレベーター内に爆弾を設置してドアを破壊したが、爆発のせいでデッドプール自身もボロボロに。

そこに、恐ろしいモンスターが迫ってくるとキャプションたちが忠告する。
斬り刻め、殺せと命じられた相手は、なんともキュートな子犬だった。
子犬に容赦なく刀を振ろうとするデッドプールを、ウォッチャーが思わず制止(顔面パンチ)する。

ところが子犬の正体はとんでもなくキモグロイモンスターだった。
ウォッチャーはデッドプールを殴ったことを謝り、既に干渉したからと開き直って自らモンスターと戦う。
大切な目を攻撃されたウォッチャーは怒りに我を忘れ、デッドプールもドン引きするレベルでモンスターをグチョグチョに叩きのめした。

このことは秘密にしてほしいと頼んでくるウォッチャーに、デッドプールはその代わりもう自分を見張るなと要求する。
ウォッチャーは二度と会うことはないと約束し、立ち去った。

モンスターはかつて地球を侵略しようとしたエイリアンで、デッドプールの脳内キャプションはそのテレパシーに影響されてなんやかんやいつもと違う感じになっていたらしい。
830万ドルはブーツの中に入っていた。

ドル札の布団で眠るデッドプールに、何者かが忍び寄る。
目を覚ましたデッドプールの前にいたのは、ウォッチャーの助手だった。ウォッチャー自身はもう来ないと約束したが、助手が来ないとは言っていない。

再び自爆して話を終わらせるデッドプールであった。

感想とメモ

なんだこの話は(いい意味で)。
とにかく趣味の悪いおふざけ満載。セリフが全部ネタなので紹介しきれません。

830万ドルってのはアイアンフィスト回での報酬だそうです。
あのときはダーク格好いいデッドプールでしたが、今回はゴアポップ下ネタコメディアンなデッドプールです。

W「諸君ら読者と同じく、私にも善を貴び悪を憎む気持ちはある。……こんなデッドプール誌など読む諸君とは違うかもしれんが」
読者をディスッていくウォッチャーさん。

W「やつは色々なシリーズに登場しすぎだ!」
今はもっと増えてますよ、ウォッチャーさん。

W「助手に押し付けよう。やつには貸しがある」
嬉々として電話するウォッチャーさん。

DP「ミュータントで癌持ちだから血は売れないと思って。代わりに空き缶持ってきた」
さすが、中途半端な常識。

脳内キャプションと会話して、町ゆく人々から不審な顔で見られるデッドプール(当然)。
刀二本とアサルトライフまで持ち歩いてるのに、おまわりさんには素通りされる。
キャプション同士はいつも会話してるけど、キャプションとプール本人が会話することはそんなになかったっけ。

DP「脳内で聞こえる声に従うお仕事? 最高!」
そうだね。

クリックでネタバレ含む感想

トイレの個室で「ウォッチャー」を名乗るのは、誤解を招くのでやめましょう。
干渉しないはずのウォッチャーさんがなぜわざわざ話しかけたのかは謎。

黄「デッドプール、その窓から入れ」
DP(パリーン!)
白「開けて入れ」
いちいち小ネタがおもしろい。

今回デッドプールは自爆しただけで、珍しくほぼ戦闘なし。
共闘じゃなく完全に助けてもらうっていうのはデッドプールにしては珍しいね。

子犬には絆されるけど強いウォッチャーさん。何も噛み千切らなくても。

プールに事細かく指示してきた脳内ボイスさんたちの思惑も結局謎。説明は退屈だから仕方ない。
寝入ったデッドプールに対して何か仕掛けようとしてたもよう?

DP「で、俺の830万ドルはどこ?」
黄「ブーツの中」
DP「そんなとこに入ってたら分かるだろ!なんの感触もしないし……」
白「もう片方のブーツ」
DP「あっ」
突っ込んではいけない。

助手のウォッチャーさんはメガネ&ヒゲスタイル。
嫌な仕事を押し付けてくる上司に不満たらたら。見るんならスパイダーマンがいいよね。

で、安心の爆発オチで終幕。

#883 ギャラクタス(Garactus)

ストーリーはSkottie Youngさん、アーティストはRamon Perezさん。
トリを飾るのは惑星食べちゃうおじさん。

この話は小学館から邦訳されている「ガーディアンズ:チームアップ2」にも収録されてます。

チームアップキャラクター

“世界を喰らう者”ことギャラクタスは、マーベルユニバース屈指の大物ヴィランの一人。
宇宙に生きる巨大な存在であり、途方もない飢餓を抱えているがゆえ、惑星を丸ごと食べてしまいます。
つまり惑星を滅ぼしてしまうというわけで、住民にとってはたまったものじゃありません。
ギャラクタス自身は、悪意のある「ヴィラン」というより、人物という概念を超えた「災い」みたいな扱いをされています。

「この惑星にギャラクタスが来るって! どうしよう!」
これでエピソードが一本できます。隕石が落ちてくるのと同じような感覚。

ギャラクタスはただお腹が空いてるだけであり、惑星の住民たちを苦しめようというつもりはありません。
目についた惑星を無差別にむしゃむしゃしちゃうような獣でもありません。
彼は使者(ヘラルド)を使ってめぼしい惑星を探させるとともに、「これから食べに行くからね。覚悟しといてね」という予告を住民にちゃんと伝えるようにしています。

この使者の役割を長らく果たしてきたのがシルバーサーファーと呼ばれる一人の宇宙人なんですが、いろいろあって任を離れたこともあります。
今回の話ではまさに、使者のポストが空いちゃってるようですね。

ストーリー

デッドプールはまたしても金欠。モルモットを買ったせいでクレジットカードも止められてしまった。
仕方なく仕事を求めてヴィラン達に連絡するが、誰も相手にしてくれない。

ネットで暗殺以外の仕事を探してみると、「使者募集」という妙な広告が目に入った。
長時間労働でスキルも必要だが、計り知れない力が得られるとの触書。
「使者(ヘラルド)」と口に出して言えばすぐに面接するとのこと。

デッドプールが「使者ってなんだよ」と呟くと、突如天井に穴が開き、空の上に吸い上げられる。
大気圏外で待っていたのは巨大なギャラクタスであった。

面接の結果(?)、デッドプールは使者として採用された。
ギャラクタスのコズミックパワーを分け与えられ、ハードなエンジンを搭載したプール印のボードを入手。
空腹のギャラクタスのため、食事となる惑星を探しに出発する。

クリックでネタバレ含む続き

ひとまず最初の仕事にて、デッドプールは手ごろな惑星を見つけ、滅亡の先触れとしての役割をしっかり果たした。
ギャラクタスにも仕事ぶりを評価してもらい、引き続きコズミックパワー全開で宇宙を駆け巡る。

いくつもの惑星を訪ね、抵抗する現地住民をパワーでねじ伏せ、ボスの食事の支度を整える。
デッドプールはいつも通りルンルンおしゃべりしながら仕事に励んでいたが、あまりのやかましさにギャラクタスがしびれを切らした。
「黙れ。どっか行け」とシンプルに怒られ、デッドプールはとりあえずその場を立ち去る。

ぶつくさ言いながら宇宙をうろつくデッドプールに、何者かが攻撃してきた。
相手はシルバーサーファー。ギャラクタスの元使者であり、今は弱きを守るヒーローだ。
これまでデッドプールが気軽にやってきた惑星破壊を見かねて、止めに来たと言う。

コズミックパワーで応戦するデッドプールだが、シルバーサーファーにはかなわなかった。
結局フリーランスが一番だと思い直し、使者の務めは辞めることにした。クールなボードもしぶしぶ返却。

3か月後、「元ギャラクタスの使者」の自助会に顔を出すデッドプールであった。

感想とメモ

スケールの大きいコズミックなアートが美しいですね。

今回は完全にヴィランモードですね。罪悪感のなさがすがすがしい。
ギャラクタスにまでウザがられるおしゃべりは平常運転。

25万ドル分のモルモット(guinea pigs)を何のために買ったのか。たぶん誰かへの嫌がらせ。

ナチュラルにヴィランから仕事をもらおうとするデッドプール。しかも指折りの大物たち。
マグニートー、レッドスカル、キングピン、メフィスト、ドゥーム、オクトパス、アポカリプス。
アイアンマンには間違えただけ。

メフィスト「誰に番号聞いた?」
サターナじゃない?

外でスパイディがゴブリンと追いかけっこしてる中、求人を探すプール。マーベル編集者にちょっと迷う。
バスローブにうさちゃんスリッパでくつろぎモードでもマスクは脱がない。
壁には「No.1 Villain」として自分が書かれた記事の切り抜きが。

クリックでネタバレ含む感想

ギャラクタスがエージェントにネット広告依頼してるところを想像するとおもしろいですね。
たぶん電話やPCはお持ちでないので、「使者」と口に出せば連絡になると。
何をどう面接したのかは謎。話の早さが気に入られたのかな。あるいは会話できれば誰でもよかったとか。

使者にはギャラクタスの持つ強大なコズミックパワーが与えられる。ボードのデザインも自由らしい。
ウエストポーチなしでスーツ着たデッドプールってなんだか新鮮。

DP「一緒にファンタジーフットボールやらん?」
DP「バーで水曜日にクイズ大会やるんだけどどう?」
DP「バクスタービルにいたずらしてやったんだけどさ」
DP「そこでフィービーが♪くちゃ~い猫、くちゃ~い猫♪つって
DP「コズミックパワーってさ~いこ~う!」
うるさい。

ギャラクタス「ええい、やかましい、黙れ!(Shut up! Shut up! Shut up!)」
三回言うくらい。

ギャラクタスのジト目が見られるのはデッドプール誌だけ!

そしてヒーローになったシルバーサーファーがゲストで登場。
チームアップはしてくれません。プールにお仕置きしただけ。
どっかの惑星の民家が巻き込まれてそうです。

最後は元使者(Herald Of Galactus)の自助会ギャグ。コズミックパワー依存症かぁ。

おまけ:ウルヴァリン&デッドプール ザ・デコイ

ストーリーはStuart Mooreさん、アーティストはShawn Crystalさん。USエース回と同じコンビですね。
大親友のローガンが巻末に登場。プールは安心してクレイジーに振り切ってます。

チームアップキャラクター

ご存じX-MENの暴れ玉、ウルヴァリンの登場です。通称ローガン。
野性的で毛がもじゃもじゃ、アダマンチウムの爪で悪を切り裂くミュータント。
デッドプールと同じウェポンX計画の被検体で、ヒーリングファクターによる超回復能力を持ってます。

デッドプールはもともとX-MEN畑のキャラクターのため、X-MENとは対抗したり協力したり多くの場面で関わってきました。
ウルヴァリンとはウェポンXの共通点もあり、もちろんふかーい交流があります。

このチームアップシリーズの頃のX-MENは、デッドプールと関わり合いになりたくないスタンスだったことでしょう。後にはデッドプールの手を積極的に借りにいくことになるわけですが。

ウルヴァリンといえばX-MENのアイドル:ジーン・グレイのことが大好き。
サイキックのジーン・グレイはフェニックスフォースという破滅的な力を宿してしまったがため、犠牲となって命を落としました。
今回の話でもウルヴァリンのジーン・グレイへの想いが強く表れてます。

ストーリー

ニューメキシコの砂漠にて、ウルヴァリンはロボットと戦っていた。
宇宙帝国シーア製のロボットは突如地球に降り立った。半ば壊れかけながらも、ある獲物を探して侵攻しては通りがかった人々を攻撃している。
ウルヴァリンは一人ロボットに挑むが、敵の強力なブラストと短距離テレポート能力は手に負えない。

倒れたウルヴァリンを尻目に、ロボットは本来の獲物――ジーン・グレイを探して歩き去って行く。
ジーンは既にこの世にいない。このままでは地球上のすべてを侵攻してもロボットは止まらないだろう。

ロボットの足を止めるためのタフな囮が必要だ。
ウルヴァリンは囮に最適な味方を探すため、一時退却した。

その頃、デッドプールは隠れ家でシャワータイムを楽しんでいた。
そこにウルヴァリンが現れて、ロボットと共闘してほしいと平和的に依頼してくる。

クリックでネタバレ含む続き

ウルヴァリンが事情を説明して協力を仰ぐが、デッドプールはのらりくらりとはぐらかす。
報酬を払うだの評判が良くなるだの人助けになるだのとなだめすかしてみるものの、やはり気が進まない様子。
しかしデッドプールの「その任務って痛い?」との質問にイエスと答えてみたところ、なぜか「じゃあやる!」との元気な返事が。

ヘリコプターで件のロボットを見つけ、例によってデッドプールが合図を待たずにいきなり飛びかかる。
ロボットが気を取られているうちにウルヴァリンも襲いかかろうとするが、ジーン・グレイがいないことを検知したロボットはテレポートで逃げてしまう。
デッドプールお得意の軽口と、ブラストを喰らっても平気なボディでロボットの注意を惹きつけるものの、倒すまでには間に合わない。

ロボットの狙いはジーン・グレイだ。つまり、ジーン・グレイが見つかればロボットが逃げることはない。
ウルヴァリンは気が進まないながらも、効果がありそうな作戦を試してみることにした。

デッドプールにジーン・グレイのカツラとコスチュームを着せるのだ。

センサーが壊れかけたロボットは、まんまとデッドプールをジーン・グレイだと思い込み攻撃してきた。
デッドプールにブラストを浴びせるロボットをウルヴァリンが襲う。
ロボットはターゲットへの攻撃を優先して、反撃も逃走もしてこない。

デッドプールも銃を抜き、ウルヴァリンと二人でロボットを破壊することに成功した。

さんざんブラストに焼かれたデッドプールはさすがに体力の限界。
バッタリ倒れたデッドプールを引きずって帰るウルヴァリンだった。

感想とメモ

今回のデッドプールは端から尻までクレイジー。完全に躁状態のヤバイ奴でした。
いっちゃってるプールに対し、引き気味に面倒見てあげつつ、自分のためにちゃんと利用もするウルヴァリンのふるまいが情緒深い。
一応共闘って意味でしっかりチームアップはしてましたね。

ウルヴァリンはジーン・グレイへの想いをずるずる引きずっていることでおなじみ。
今回の敵であるロボットも、今は亡きジーン・グレイを抹殺せんと無為な目的を目指し続けています。
象徴的ですねえ。

ハードボイルドなウルヴァリンのシーンから、プールの出オチがすごい。

DP「この野郎、宿敵とまた戦いに来たってわけだな!(You have returned to resume our endless battle!)」
WV「別に宿敵じゃないだろ(What endless battle?)」
DP「宿敵じゃないっけ?(We don’t have an endless battle?)」
WV「ああ(Nope)」
DP「そう(Oh)」
宿敵じゃないです。

クリックでネタバレ含む感想

今回ウルヴァリンが求めるのは囮(デコイ)役。
注意を引くのが得意で、いくらボコられても平気なやつといえば、デッドプールがまさしく適任。
今回はデッドプールの自傷行為なしでしたが、代わりに嬉々としてボコられてましたね。

頑なに服を着ないデッドプール。でもマスクは脱がない。
WV「知りたくもねえが、なんでマスクのままシャワー浴びてんだ」
DP「だって髪が濡れちゃうじゃん。今夜デートなの」
突っ込まないローガン。

DP「その仕事ってさ、ほら、痛いの?」
WV「いや――ああ、そりゃ、すげえ痛いだろうぜ」
DP「やる!」
WV「は? ああ……そうか」
自分で言っといて引いてるウルヴァリン。

申告通り、それはそれは楽しそうにブラストに焼かれるデッドプール。こわい。
楽しそうなのはいいが、ロボットを破壊する目的は果たせそうにない。

DP「宿敵との再会だぜ!(Now we resume our endless battle!)」
ロボット「メモリドライブ検索……”宿敵”?(Searching memory drive. “Endless battle”??)」
口車に乗るロボット。

で、たくさんのモノローグでどれだけ嫌かを読者に語ったローガンさんだが、結局その嫌な作戦をやることに。

コスプレに大喜びのプール。
DP「私は炎! 生命の化身! フェニックス!(I am fire! I am life incarnate! I am Phenix!)」
フェニックス化したときのジーン・グレイのセリフ。
DP「やられっぱなしのフェニックスじゃないわよ!(And Phenix ain’t that kind of girl!)」
急にかっこいいプール。

DP「お前このコスチュームいつも持ち歩いてんの?」
ここに来て常識的なツッコミ。

ジーンのコスチュームをプールなぞに着せちゃったローガンさん。
しかしそのおかげでロボットを倒すことができ、彼女への想いをふっきることもできたようです。
象徴的ですねえ。

DP「ローガン……俺たちまた……一緒にやれるかな?(Can we… do it again?)」
WV「心の底から思うぜ、ウィルソン……絶対に嫌だ(I sure hope not)」
でもめちゃめちゃ役に立ってくれたね、デッドプール。

最後に

第三巻は急に有名どころのヒーローが出てきます。
ウォッチャーやらギャラクタスやら、違う意味で大物過ぎるキャラクターとも謎の共演を果たしました。
次元の違うキャラと平気でチームアップできるのは、やっぱりデッドプールならではという感じですね。

豊富な解説付きの邦訳コミックがすばらしいことは言うまでもないですが、今やKindleで手軽に買える原書もぜひ試してみてほしいです。
気軽に試しすぎると自分のように読んでないシリーズが溜まっていきますけどね。

デッドプールが好きならコミックを読もう(念押し)。


 

  1. 日本語だと「ザ・シング」と書かれてることもある気がしますが、固有名詞っぽくただの「シング」と呼ぶ方が多いでしょう。ハルクも英語だと「The Hulk」だし。
  2. 体が伸びるミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズ、体が透明になるインビジブルウーマンことスー・リチャーズ・ストーム(リードの妻)、体が炎になるヒューマントーチことジョニー・ストーム(スーの弟)、体が岩になるシングごとベン・グリムのチーム。4人のうちベンだけが変身を自分の意思で制御できず、岩の姿をコンプレックスに思うこともありました。
  3. デッドプールの大好きなベテラン女優さん。プールはことあるごとに推してきます。
  4. SF系カートゥーンアニメのこと。
  5. 一時期は死んでおったため、その期間のシリーズには登場しません。シビル・ウォーとかハウス・オブ・Mとか。
  6. 関係ないですが、ベヨネッタ1でもこのセリフのネタがありました。誰か気付きましたかね。自分は神谷監督の解説動画で知りました。