今回もマーベルヒーローの紹介です。
ロキの記事を書いちゃったらもちろんソーの記事も書かないといけないだろうということで、アベンジャーズでもおなじみの雷神ソーを紹介します。
Thor:マイティな雷の王子様
基本情報
ソーは言わずと知れた(?)アベンジャーズの創立メンバー。
北欧神話に登場する雷の神・トール(Thor)本人とされています。
神の国・アスガルドで生まれ育った生粋の神様で、全能の父オーディンの跡継ぎとして生まれた王子様でもあります。
人間を同胞として愛し、地球に生きる人々を守るために自らヒーローとして活動しています。
高貴だけどちょっと脳筋気味な天然っぷりものぞかせる、神様のくせに愛くるしいキャラクターです。
マーベルデータベースからの情報はこんな感じ。
ソー(Thor)
- 性別:男
- 身長:6フィート6インチ(≒198cm)
- 体重:640ポンド(≒290kg)
- 瞳 :ブルー
- 髪 :ブロンド
- 能力:オーディンパワー(全能神の力)
超人的な肉体&寿命&身体能力&スピード
自然を操る力、近接戦闘技術
オリジン
ソーは生粋の神様と言いましたが、人間として地球で暮らしていた経験もあります。
強くて男前でマッチョな王子様であるソーは、傲慢なふるまいを父オーディンに咎められ、ちょっとは苦労を知れということで地球に追放されてしまいました。
地球での仮の身分は、脚が不自由な医者のドナルド・ブレイク*1。
ソーはブレイクの体を間借りし*2 人間として生活する傍ら、町にはびこる悪党を見かければ神の姿に変身して戦います。
地球での生活を通してソーは謙虚さを学ぶとともに人間への敬意を抱き、地球に生きる人間を我が守るべきものとして愛するようになります。
アベンジャーズをはじめとする地球のヒーローとも親交を深め、アスガルドに帰ってからもいつでも地球を気に掛けているのです。
ビジュアル
ゴージャスな金髪に羽の付いたヘルメット、はちきれんばかりの筋肉に真っ赤なマントをはためかせた、神様らしい大仰なスタイルがよく似合っています*3。
- 作者:J・マイケル・ストラジンスキー,オリビア・コワペル,秋友克也
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2015/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
※画像はAmazonへのリンク
髪がやけにさらさらのキューティクルであるとか、バイキング風のヘルメットがダサいとかはよくネタにされるところ。
その一方、たいていの場面でたいへん魅力的な男として扱われています*4。
映画の世界(MCU:Marvel Cinematic Univers)ではヒゲをたくわえたデザインでしたが*5、多くのコミックやアニメでは白髪の歳になるまではノーヒゲで過ごしているようです。
まあ見た目のデザインはシリーズによって変わるところですね。
人目を引く金髪の髪型はシリーズによって様々。前髪があったりなかったりするのを見ていると、「うっとうしいから前髪を作るか」とか考えてるのかなーと想像しておもしろいですね。
服装はほとんどいつも同じで、人間の服は基本的に着ませんが、アベンジャーズタワーで暮らしているときなんかは誰に借りたのか人間の格好もしているようです。
オシャレなロキに対してソーはどちらかというと無骨で、シンプルまたは独特なセンス*6の服装をしていることが多いように思います。
記事の冒頭に載せたイラストのアーティストはOlivier Coipel氏。
私は彼女のアートがかなり好きです。高貴さとゴージャスさとたくましさが共存して神々しい。
口癖
ソーは神様らしく古めかしく厳かな話し方をします。コミックでは読みづらいフォントで書かれることも多い。
特有のセリフや口癖はこのあたり。
- For Asgard!(アスガルドのために!)
:士気向上のためのかけ声。 - By Odin’s Beard!(オーディンの髭にかけて!)
:英語によくある感嘆を表すやつ。特に意味はない。他のキャラクターにもときどきマネされてる。 - Verily!(誠に!)
:「それな」の古めかしい言い方。アベンジャーズ・アカデミーでは完全に口癖でした。アニメとかでもよく言ってる気がします。
能力と武器
雷神パワー
雷神の名の通り自然を操り雷を呼ぶことができるほか、父であるオーディンから受け継いだ主神としての力(=オーディンパワー)を操ります*7。
とはいえソーは魔術師ではなく戦士。「マイティ・ソー」の呼び名の通り、力強さが彼の自慢です。
神の超人的な身体能力と、長年の訓練と実践で培った筋肉*8で、その辺の相手なら軽くひねりつぶしてしまいます。
ただ、何しろ神様ですので一般の人間と戦う機会はあまりなく、スケールの大きい強敵を相手にすることが多いため、威勢良く向かっていったくせに負けている姿もよく見せてくれます。
来い、ムジョルニア!
そしてここまで触れてきませんでしたが、
ソーの武器といえば神の力を宿したハンマー:ムジョルニア*9。
ムジョルニアはソーの思うままに呼び出すことができ、雷を呼ぶときも敵をぶん殴るときもこれを愛用しています。ソーが飛行できるのもこのハンマーによる能力です。
ムジョルニアにはオーディンの力が込められており、「ふさわしい(Worthy)」者にしか持ち上げることができません。
ソーはこのハンマーを持てることで、オーディンの正式な後継者すなわち次期アスガルド王であることを示しているのです。
来ない、ムジョルニア…
ところが正史*10では、ソーはあるきっかけにより、ムジョルニアを手にする資格を失って(=Unworthyになって)しまいます。
ムジョルニアと片腕を失ったソーは、アスガルドとミッドガルド(=地球)から姿を消し、新たな武器Jarnbjorn*11を手に異世界の中で戦いを続けていました。
ソーが手放したムジョルニアを代わりに手にしたのは謎の女性。
彼女は雷の女神となり、オーディンの息子ソーに替わって地球のヒーローとして活動を続けました。
その正体は女性であること以外は謎に包まれ、ファンの間でも様々な推測が飛び交っていましたが、もうマーベル公式サイトでもバッチリネタバレしています。でも私は野暮なこと言わないもんね。
彼女は長らく新たな「ソー」として活躍していましたが、肉体に抱えていた爆弾を抑えきれなくなり、再びオーディンの息子に「ソー」としての名前を返そうとしているようです。
神と人間のアイデンティティ
ソーの決めゼリフは「アスガルドのために(For Asgard)!」ですが、アスガルドのために人間を犠牲にしていいとはこれっぽっちも思っていません。
神様であっても、人間のことを自分の「同胞」として大切に思っているのです。
本来、神と人間の関係は、信仰する側とされる側でハッキリ上下に分かれたもの。父のオーディンなどは人間を取るに足らないものとみなしていますが、ソーは地球での生活の中で「自分も人間である」という仲間意識を抱くようになりました。
ソーにとって、アスガルドも地球も同じように大切な故郷。
地球に危機が迫れば、己の力すべてを尽くして守ろうとします。
アベンジャーズというチームの中でも、ソーは飽くまでメンバーの一人という立場を守ります*12。
ソーにとって人間は「神である我々が支配する対象」ではなく、ヒーローとして守るべき「自分の同胞」に他ならないのです。
アスガルドの神々は人間に比べれば遙かに長生きなのですが、単純なソーは「今、このとき」を大切にします。
ケーブルの記事で、「ケーブルは物事を長すぎるスパンで見て解決しようとする」と書きましたが、ソーは高次元の神という存在の割にはこのような俯瞰的な視点をあまり持ちません。
何事かの脅威が迫っているとなれば、「無辜の生き物の死は防がねばならぬ!」「オーディンの息子が今すぐ助けに行くぞ!」という、直接的な対処をせずにはいられません。
広い視野で全宇宙的な結果を見るオーディンからすれば、確かに未熟で感情的な青二才に見えるでしょう。
でもこんな純粋な道徳観と正義感を持つソーは、やはり根っからのヒーローなんですよね。
複雑な家庭事情と父への思い
ソーのフルネーム(?)は「ソー・オーディンソン」で、オーディンソンはオーディンの息子(Son of Odin)の意味。神々の世界ではこんなふうに父親の名前をファミリーネームのように呼びます*13。
神話に出てくる親族関係はややこしいものですが、ソーの家系も例外ではありません。母親は生みの親と育ての親で異なり*14、弟は別種族の義弟*15。さらに腹心と思っていた部下が実は兄弟だったり*16、妹が突然登場したり*17と、だいたいは父オーディンのせいで複雑なことになっています。
オーディンが目にかけている一番の跡取り息子はやはりソー。大切にしている分オーディンはソーに厳しく、試練を投げつけて突き放したかと思えば、強引に自分に従わせようとすることもあります。
ソーは基本的には全能の父であるオーディンのことを畏怖し敬愛しています。自分がオーディンの息子であるということを誇りに思い、それがアイデンティティでもあります。
悪い意味ではお父さんコンプレックス。オーディンには逆らえないし決して敵わない、という意識が心の底に沈んでいます。
とはいえ、理不尽でクソヤローな親父には従えないこともある。
特に地球の同胞を守るヒーローとしてのソーは、地球を取るに足りないものとするオーディンに反発し、たとえ認めてもらえなくても自分の信じる道を突き進みます。
ソーとオーディンの関係は、最近邦訳もされたコミック「フィアー・イットセルフ*18」で密に描かれています。
- 作者: マット・フラクション,スチュアート・インモネン,御代しおり
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2017/08/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
※画像はAmazonへのリンク
オーディンによって封じ込められていた邪神の復活により、物語が始まります。
邪神は地球の人間達の恐怖を糧に力を得て、アスガルドを滅ぼそうとします。アスガルドが攻められる前に地球ごと邪神をぶっつぶそうとするオーディンに対し、ソーは地球を救うべきだと反駁。オーディンから「お前は一体神なのか人なのか」と叱責されたソーは、人であるとはっきり言い切ります。
しかし冷酷に見えたオーディンの戦略は、一重に息子のソーを愛するゆえの選択でした。ソーの強い意志をオーディンは認め、戦いに赴くことを許すのでした……という話で、オーディンの極端なツンデレっぷりがよく分かります。
アスガルドの王は誰?
一般的なイメージでは、オーディンがアスガルドの王、ソーは王子という立場が主になります。
アスガルドは一度、ラグナロクといういわば寿命によって滅びました。その後、地獄から蘇ったソーは民を再び現世へ呼び戻してアスガルドを(地球上に)復興させ、死んだまま*19のオーディンに替わって玉座に就きます。
が、女体化したロキにいつも通り策略にかけられたソーは、実はオーディンの息子だったという腹心の部下・ボールダーに王位を譲りました。
元々ソーは自ら出て行きたいプレイング気質かつ上述のように問題解決志向が単純なため、王という管理職にはあまり気が進まなかったのかもしれません。
その後、結局ソーはオーディンを蘇らせ、王座に戻ってもらいます。
上記で紹介した「フィアー・イットセルフ」も、オーディンが再び王になってからの話になるわけです。
映画「マイティ・ソー」シリーズをご覧になった方はオーディンがクソヤローであるというイメージを持たれているかと思いますが、オーディンはまだしばらく現役で活動を続けそうです*20。
遠くの未来ではオーディンそっくりの見た目になったソーがアスガルドを治めているらしいので*21、いずれオーディンも退場するときが来るのでしょう。
お笑い担当の映画ソー
MCU(Marvel Cinematic Universe:映画世界)で親しみやすいイメージがついたのは、ロキだけでなくソーも同じです。
王子らしく堅苦しい高貴なふるまいをするイメージのあったソーですが、映画では豪放磊落で脳筋、お茶目な印象に変わっています*22。
それというのも、実写で表現する上で「魔法」「神様」の世界は、真面目に描こうとしてもギャグに見えてしまうせいではないかと思います。
映画「マイティ・ソー」を観た方なら分かると思いますが、でっかいハンマーを持ったマント男がアメリカの町中を歩いている光景というのは、ギャグ以外の何でもありません。どんなにシリアスな顔をさせたとしても、シュールな画にならざるを得ないのです。
だからこそ、ソーとアスガルドの世界は最初からコメディタッチで扱うことにしたのではないでしょうか*23。それに合わせてソーのキャラクターも、話し方こそ古めかしいものの人なつこいお兄ちゃんになったと思われます。クリス・ヘムズワースのキュートな笑顔があまりになじんでいますね。
ソーの映画シリーズでは最新の「マイティ・ソー:ラグナロク」(邦題:バトルロイヤル)では、特に陽気なコメディ色が強く出ています。
映画本編はもとより、特筆すべきは映画に先だってタイカ・ワイティティ監督が公開した公式ミニ動画の「チーム・ソー」。
Team Thor – Official Marvel | HD
シビルウォーでアイアンマンにもキャップにもチームに入れてもらえなかったソーが、オーストラリアで一般人のダリルと同居(居候)し、ソー流の生活でダリルを振り回しつつ「ダリルと俺でチームソーだもんね」とはしゃぐ衝撃的な動画です*24。
雷神としての最終兵器的強さを秘めたソーですが、映画シリーズではコールソンと並んで空気和ませ担当としても活躍してくれるのではないかと期待します。インフィニティ・ウォーはまだ観てないけど。
ロキとの関係:カエルの王子様
ロキの記事にも書いたからもういいか。
ロキが兄上にちょっかいを出して怒られる、というのが基本パターン。
海外アニメのアルティメット・スパイダーマン第10話では、ロキの魔法でカエルに変えられちゃったソー*25が頑張っていました。ソーが邪魔なら殺すとかなんとかすればいいのに、カエルにして笑ってやろうというのがロキらしい。
ソーとロキはお互いに「チョロいな」と思ってる節があり、実際その通りなんじゃないでしょうか。
ソーはロキが何かしでかすと分かっていてまんまと欺されるし、ロキは性格を把握されているせいでソーにうまく操られたりします。
敵になることも多い二人ですが、憎からず思っていることも確か。
まあ理不尽なお父さんには協力して立ち向かって下さい。
帰還はいつ?
私は最新のコミック情報を追っているわけではありませんが、ムジョルニアを持てなくなっちゃってホームレス化したソーの姿はなかなかに痛ましいものでした。
早いところ、再びムジョルニアを手にする栄光を見せてほしいものです。
今回の記事はここまで。
*1:映画「マイティ・ソー」でジェーンがソーに付けた偽名もこれでしたね。
*2:元々、ソーの世を忍ぶ仮の姿がブレイクであるという同一人物設定でしたが、現在ではブレイクはまったくの別の人格として扱われています。冷静で穏やかなドクター・ブレイクが雷光と共にガチムチなソーに変身するのはなかなかのインパクト。
*3:最初期のデザインではそこまで体格の良さは目立ちませんでしたが、今はすっかり肉体派です。
*4:デッドプールも面と向かって言っていました。
*5:映画の元となったコミック「アルティメッツ」シリーズでのソーは神を自称するヒッピーで、ヒゲを含めそれっぽい服装をしていました。
*6:後述の「チーム・ソー」動画ではとんでもないファッションセンスが暴露されました。
*7:オーディンが元気に生きているときはオーディンがその力を持っています。
*8:戦闘スタイル的には技巧派ではなくパワー系。高い攻撃力と勢いで押し切るタイプです。
*9:つづりは”Mjolnir”。「ミヨネア」や「ミョルニル」など、カタカナでの表記は様々ですが同じものを指しています。
*10:「616」と呼ばれる正式なストーリーラインの世界。ミニシリーズや映画やアニメではソーはずっとソーとしてハンマー持ってますね。
*11:「ヤーンブヨーン」と発音するようです。でも「ムジョルニア」的に英語発音をするなら「ジャーンブジョーン?」
*12:アイアンマン・キャプテンアメリカと並んで「ビッグ3」と目されるものの、ソーがアベンジャーズを代表することはあまりありませんね。
*13:ソーがコールソンのことを「コールの息子」と呼ぶのもこのせい。
*14:産みの親である地球の女神ガイアのことはよく知らず、育ての親フリッガとの関係の方が親密なようです。
*15:おなじみ「邪悪な義弟ロキ」。
*16:「勇敢なるボールダー」は、ソーに代わってアスガルドの王位に就いたことも。
*17:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとも仲良しの凶暴な妹・アンジェラ。
*18:話の軸となるのはアスガルドとソーなのですが、なぜか表紙はキャップオンリー。
*19:蘇らせるリストからあえてソーが除外したようです。
*20:ときどき寝ちゃって役立たずになるけど。
*21:邦訳されてませんが「God of Thunder」コミックシリーズの最初の方で、キング・ソーが登場します。
*22:一人称が「俺」というのも映画から生まれたイメージですね。コミックでは古風なしゃべりなので「我」とか訳されてることが多いです。アニメとかでは「私」。ちなみにロキは元々「俺」「我」なイメージでしたが、映画ではヒドルストン氏の神経質そうなお顔に似合う「私」になってましたね。
*23:「ドクター・ストレンジ」の映画も同じ理由でコメディテイストにしているように思われます。アニメやコミックならいくら魔法使ってもいいのですが、現実の俳優さんが魔法を使うのはなかなか自然には描けないものでしょう。
*24:パート3まであるけど3にはソー出てこないし。
*25:昔のコミックでもロキがソーをカエルにしちゃう話があり、「ソーを動物化するならカエル」という様式美がいまや一般的です。カエル版ソーであるスロッグ(Throg)というのは別のキャラクターですが。
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