【第80話 ライズ】ミラキュラス レディバグ&シャノワール:ストーリーと感想

フランス発の日本風変身ヒーローアニメ・ミラキュラスのストーリーと感想です。
本話までのネタバレを含みますので、視聴予定の方はお気を付けください。

話のナンバリングは日本のディズニーチャンネル準拠。
各エピソードの目次はこちら

第80話 ライズ(Lies)

前回の出来事を含むアドリアン側のエピソード。カガミとの関係はどうなるか。

ストーリー

プロローグ

マリネットティッキーに励まされながら、マスター・フーの翻訳を頼りにミラキュラスの古文書を読み解こうと奮闘していた。
詩やなぞなぞのように意味を隠された文章は、一筋縄では理解できないようになっている。

一方、人気モデルのアドリアンは忙しい生活に嫌気がさしていた。
自室でようやく一息ついたと思ったら、大喜びでシャノワールに変身。
レディバグとパトロールの約束をした場所に赴くも、いつまでたっても待ち人は現れない。
仕方なく一人でパトロールに回るが、残念ながらパリは平和そのものだった。
落ち込んでいたところ、母親と剣術の訓練をするカガミを見かけて笑みを浮かべる。
そんなアドリアンを見て、プラッグ「別のチーズを試してもいいんじゃない」とけしかけた。

ヒーローの日常

アドリアンカガミからフェンシングの稽古が早まったとの連絡を受け、いつもより1時間早く学校に向かう。
ところが稽古の時間は変わっていなかった。カガミが二人で過ごす時間を作ろうとして親たちをだましたのだ。

カガミはアドリアンを美術室に連れて行き、絵を描くのが趣味なのだと打ち明ける。
描かせてほしいと言われたアドリアンはいつものモデルっぽいポーズを撮るが、「あなたらしくない」と却下される。
シャノワールの決めポーズを取ってみても「それはふざけてるだけ」と切り捨てられた。
戸惑うアドリアンに、カガミは本当のあなたは完璧だと微笑みキスを迫る。だが唇が触れる前にフェンシングの稽古の時間が来てしまった。

稽古中もいい雰囲気になる二人だったが、アドリアンは外でアクマが暴れているのに気付き、言い訳をして稽古を抜け出す。
やっとレディバグに会えたシャノワールは、もうパトロールを忘れないと約束してもらってにっこり。

その後もアドリアンは、カガミと過ごそうとするたびにアクマを見つけ、怪しい言い訳をして立ち去ることが続く。

アクマ誕生

キティ・セクションのバンド練習の帰り、アドリアンカガミはアリ王子の誕生日パーティーに出席することになっていた。
カガミはなおも二人の時間を作ろうとしたが、レディバグを見かけたアドリアンは例によって上の空。
落とし物を探してくると言ってどこかに行ってしまった(ここで第79話トゥルースとの戦い)。

カガミはアドリアンがバンド練習のときに落としたチャームを拾っていたのだが、返してあげることもできず、落ち込んで市庁舎の前に座りこむ。
そこにやってきたアドリアンは、落とし物が見つかったなどとテキトーなことをのたまった。
嘘を確信したカガミは、アドリアンは自分と過ごしたくないのだろうと指摘し、一人市庁舎に戻って行った。

傷ついたカガミにシャドウ・モスが目を付けた。
アクマの蝶がチャームに宿り、カガミはライズへとアクマタイズされてしまった。

アドリアンは自分を責めながらもシャノワールに変身。

ヒーローの戦い

ライズはまばゆい光の塊と化し、アリ王子の誕生日パーティー会場に乗り込んだ。
嘘をついたことがあると断じた相手を光の中に飲み込み、動きを止めてしまう。
戦おうとするシャノワールのもとにレディバグも駆けつけた。

レディバグはラッキーチャームでドローンを入手。
ドローンを使って光の中の様子を探り、ライズが手首に付けたアドリアンのチャームにアクマが宿っていると気づいた。
シャノワールが囮となっている間、レディバグは嘘をつかないワニのファングをケーキで釣って、ライズの光の中に送り込もうとする。

ライズの気を逸らすため、シャノワールは自ら光に飛び込んだ。
ミラキュラスを奪おうとするライズの手元に、レディバグの操るドローンがケーキを落とす。ケーキにかぶりつくファングの牙がライズの腕に付けたチャームを破壊。
アクマは放たれ、ミラキュラス・レディバグですべて元通り。

自分を犠牲にしたシャノワールに、レディバグは一人で危険を冒すのはやめてと訴える。
変身を解いたアドリアンは、レディバグが真剣に心配してくれたことに改めて感激するのだった。

エピローグ

フェンシングの練習後、アドリアンカガミを傷つけたことを謝り、友達でいたいという気持ちを伝える。
カガミはアドリアンが誠実な人であることは分かっていると言う。だが嘘をつかれたことは事実であり、気持ちを整理する時間がほしいと言ってアドリアンにチャームを返した。

ヒーローは嘘と秘密を抱えざるをえない。
夜のエッフェル塔を眺めながら、シャノワールとレディバグは信頼のフィストバンプを交わした。

感想とメモ

カガミってマリネットと同じくらいロマンティック。そして大胆だけど繊細。実に人間らしい。

トゥルースの反対は・・・

前回は真実(Truth)を求めるルカの心がアクマタイズされ、今回は嘘(Lies)に傷つけられたカガミの心が狙われた。全体的に前回の話と対比的。
「真」の反対は「偽」1 意味を考えると「真=ありのままの姿」であり「偽=作られた偽り」と言える。すなわち「偽」とは漢字から分かる通り、人の作為によって発生するものであると。
なんとも意味深いですね。人が手を加えたものは真の姿ではないとする考え方は、キリスト教的な創造主信仰が根にありそう。

それはそうと、今回のキーワードは「嘘」。
カガミの嘘は「アドリアンと過ごすため」だった一方、アドリアンの嘘は「カガミと過ごさないようにするため」だと思い込んで、カガミは傷ついてしまった。
カガミが嘘を拒絶する理由は、「友達・恋人ならなんでも話すべき」みたいな価値観でもなければ、「真実を受け入れるって信じてほしい」みたいなものでもない。
問題は嘘そのものではなく、嘘を使って自分を遠ざけようとしたことなのだ。

とすると、たとえアドリアンが見え見えバレバレの嘘をついていたとして、それが自分にとって喜ばしい理由だと思えれば変に追及しなかったんじゃないかなと。

「武人」とか「お嬢様」なキャラクターって愚直なイメージだけど、カガミは案外臨機応変なんですよね。
そしてロマンティックな恋愛脳。マリネットと同じタイプ。

理想を投影するカガミ

カガミは相変わらず、アドリアンを自分にふさわしい「完璧」な相手だと思い込んでしまってる。
自分の理想像を投影するばかりで、彼本人を見てないんだよね。これはアドリアンを崇拝しすぎてるマリネットと同じようなふるまいでもあるんだよね。「らしい」「らしくない」という言葉は相手を傷つけてしまうものだけどね。
シャノワールのポーズを切り捨てられるのは、アドリアンにとって悪い兆しだ。

ところで、同じ恋でも、アドリアンのレディバグに対する恋は違ってる気がする。
アドリアンの理想像はレディバグそのものであり、レディバグのありかたによっていかようにも形を変える。すなわち「そんなのきみじゃない」とは言わず、「そういうきみも受け入れるよ」になりそう。これってルカと似たような態度だなあ。
マリネットとカガミ、アドリアンとルカはそれぞれ似てると言えるのか。

最後、アドリアンから友達でいてくれるかと尋ねられたカガミの返事は、自分に嘘ついた人を信用できる?」
英語だと「How can you trust someone who’s lied to you?」であって、「アドリアンはカガミに嘘をついたから信じられない」という単純な意味にとれる。
でも日本語だと、この自分はアドリアン自身ともとれなくはないよね。そうすると「自分自分に嘘ついた人を信用できる?」になって、もっと含蓄のあるセリフに聞こえる。
「自分への嘘」というのは、絵のシーンで話してた「本当の自分とは何か」にも関わってきそう。
深読みできる日本語のあいまいさっていいよね。

ともあれ、アドリアンとカガミはちょっとぎくしゃくしてしまいそう。
こういうとき、カガミが相談できそうな相手はマリネットくらいかぁ・・・。

ライズの光

上に書いた通り、カガミは今回、嘘そのものについて傷ついてたわけじゃないと解釈してます。
でもライズとして「嘘つきに報いを受けさせる」能力を得たのは、シャドウ・モスの誘導によってでしょうね。だってカガミは自分が嘘をついてたことを悪びれてない(嘘もときには必要と思ってる)はずだもの。
やはりシャドウ・モスが対象者に与える能力は、シャドウ・モスがコントロールできるって考えられるのかな。

しかしシャドウ・モスもこの光にのまれたらやばそう。地下室には光が届かないから大丈夫か。

例によって、ライズの「嘘判定」はいったい誰がやってるのが気になります。
ライズはその人が嘘をついたことがあるのかどうか分からないんだし、そもそも何を嘘と呼ぶのかも判然としない。
とすると、本人が「自分は嘘をついたことがある」と思ったかどうかで判断されると考えられる。
とすると、この光が「嘘をついたか」を問うているということを知らない人間なら自由に動けたかもしれない?
とすると、ボブ・ロスが余計なことを思い出させなければアホのジャゲッドは自由に動けたかもしれない?
ま、動けたからなんなんだってことかな。ライズもきっと戦闘能力高いし。

ところで、レディバグはどうして「嘘つきを固める」って能力を知ってたんだっけ?
マリネットもパーティーをのぞいてたのか、あるいはライズの声があたりに響き渡ってたのかな。

アドリアンとシャノワール

アドリアンは一般人の憧れる「ステキな生活」に何の興味もない。
芸能活動でちやほやされることより、シャノワールになって自由なふるまいをすることが一番の楽しみ。
冒頭、アドリアンが変身するとき「やっと解放された!」って言ってたけど、アドリアンの変身に対する思いがこんなにハッキリ示されるのは初めてな気がしますね。
ヒーローになるというより、自由になるというのが何より大きな意味を持つ。ここがマリネットと違うところ。

プラス、大好きなレディバグと一緒にいられるってことも非常に重要。
そんなシャノワールだからつい「レディバグとアクマ退治をしたい」「アクマが出てくれたらな」って思っちゃうところもあるようだ。
でもこんなふるまいは平和だからこそなんだよね。いつもアドリアンは悪の気配を感じると、自分が犠牲になって周りを守ろうとする。
改めて思い返すと、シャノワールよりアドリアンの方が「ヒーロー」っぽい顔を見せることが多いような。シャノワールはどちらかというと「マイレディ」志向だから。

よく働くシャドウ・モス

冒頭でパリに平和が続いてたのは、きっとガブリエルがピーコックのミラキュラスを修理中だったからだね。
その後アクマ発生が頻発するようになったわけだけど、詳しく語られなかったアクマもシャドウ・モスとして生み出してたのかな。
少なくともレディバグが「シャドウ・モス」の名前を知ったのはトゥルース回が初めて(アクマタイズに抗おうとしたルカが口走ったから)。
かつ、アクマとセンチモンスターが同時に現れたのもトゥルースのときが初めてだったようだ。今まで使ってなかったのかな? いつも両方使うのは疲れるのかな?
ミラキュラスのユニファイは危険を伴うはずだけど、もともと変身時間の制限もなかったガブリエルにとっては特に問題じゃないんだろうか。今回別にマユラの能力使わなかったし。

で、今回はトゥルースを倒されたばかりなのに何事もなかったかのようにカガミをアクマタイズ。
一晩に2アクマって今まであったっけ?
もしなんら大きなコストなくこんなことができるんなら、次々とアクマを生み出し続けてレディバグとシャノワールを消耗させる手はありそうなものだが・・・。

その他ポイントメモ

  • オープニングに見知らぬキャラクターの姿がチラチラ見えてる。
  • 活舌の訓練をしてるアドリアン。やっぱり俳優になるの?
  • シャノワールがラミエルさんのところとホテル・ブルジョワに赴いたのは、アクマ発生頻度が高いからである。かしこい。
  • ああ平常運転のクロエお嬢様だ。やった。
  • カガミは今フェンシングやってるけど、きっと剣道もできるんだろう。
  • 女の子をチーズに例えるプラッグ。いや、チーズ以外に例えたことはなかったか。
  • カガミは絵がうまい!そういえばオニチャン回でも手帳にバラの花を描いてたような、気のせいなような。
  • カガミはトゥールーズ・ロートレックが好き。ムーランルージュのポスターの絵はなんとなく見たことあります。
  • ハトアクマとキャンディアクマは前回も登場。マリネットがルカをごまかしてるタイミングで、アドリアンもカガミをごまかしていた。
  • アドリアン、マリネットのあげたチャームをいつも身に着けてる。
  • ジャゲッドの歌は前回屋上で練習してたやつ。
  • ジャゲッドはいつルカに会いに行ったんだ。パーティーで歌う前?ライズが消えた後?
  • ワニもパーティーに参加させてあげる心の広い王子。
  • ケーキが好きなワニ。
  • ボブ・ロスとミスターXもパーティーに招かれてる。セッティングしたのは誰だ。
  • ジャゲッドは歳をごまかしてるそうです。言動は80年代っぽいよな。
  • 「どのチーズもおいしいけど、結局は本命に戻るんだ」
    プラッグの本命はカマンベール。こやつ、あえてこの結論を導かせたというのか。そんなんじゃないか。

今回の記事はここまで。


 

  1. 英語だと”Truth”のアントニムはなんなんだ?”False”は形容詞だし、”Fault”は意味が違うし、”Falseness”かな?

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