いまやすっかりマーベルを代表する人気キャラ・デッドプール。
他の記事で何度も言及してしまって仕方がないのでちゃんと紹介しておきます。
Deadpool:再生可能で更生も可能だったおしゃべりな傭兵
基本情報
超問題児ヒーロー・デッドプール。
軽口とメタ発言のうっとうしさは「おしゃべりな傭兵(Marc with a Mouth)」と称されます。
破天荒な言動とヒーローと言えるのか怪しい道徳観が独特の存在感を放ち、日本でも圧倒的な人気を誇るキャラクターです。
元々は金で動く傭兵で、お世辞にも信用できるとはいえない危険人物。
X-Menからもアベンジャーズからもうっとうしがられていましたが、今では色んなチームに籍を置きちゃーんとヒーロー活動を行っているようですね。読者人気は絶対!
マーベルデータベースからの情報はこんな感じ。
デッドプール(Deadpool)
- 性別:男
- 身長:6フィート2インチ(≒188cm)
- 体重:210ポンド(≒90kg)
- 瞳 :ブラウン
- 髪 :なし(元はブラウン)
- 能力:近接戦闘、射撃
超回復能力&不死身のボディ
MARVEL公式紹介ページでもプール節全開です。
オリジン:ウェポンX計画の失敗作?
カナダ生まれの傭兵ウェイド・ウィルソンは、体を侵食する悪性ガンを治すため、超人兵士を生むウェポンX計画に自ら参加しました。
超回復細胞・ヒーリングファクター*1を移植され、肉体の超回復能力を得ることで病死を免れました。
やったねと喜びたいところがそうはいかず、ヒーリングファクターによって活発化したガン細胞が全身を覆い、持ち前の男前ボディは表皮がやけただれた醜い姿に変貌してしまいます。苦痛によって頭がトチ狂ってしまい、脳細胞も回復を繰り返すせいでまともな思考もままならないことに。
失敗作とされたウェイドは、誰が最初に死ぬかを賭ける「死の賭け(デッドプール)」の対象とされましたが、なんやかんやで関係者を始末して研究所を脱走。
いかした名前だけいただいて、金さえもらえば何でもする傭兵・デッドプールが誕生したのです。
「ミュータント」と呼ばれることがありますが、正確には後天的に能力を得た「ミューテイト」という分類になります。
ヴィジュアル:赤と黒とグチャグチャの顔面
服が赤いのは返り血が目立たなくてすむからさ。スパイダーマンともデスストロークとも関係ないもんね。
ガンに冒される前はライアン・レイノルズ*2似のハンサムフェイスだったらしいですが、今や見た人がゲロを吐かずにはいられないもんじゃ焼きフェイス。
プール氏自身も顔はコンプレックスらしく、人前ではあんまりマスクを取りたがりません*3。
顔は隠しても体の方は割と見せたがり。ズボンが破れても気にせず、コスプレで生足を披露することも*4。
意外と見た目にはこだわりがあり、衣装はTPOに応じて…というか好きな衣装を好きなように着てます(マスクはしたまま)。きれいな皮膚マスクを被ることも。
マスクの後頭部はちょこんと余り布が出てることが多いです。これがないとプールらしくないね。
たくさんついてるウェストポーチや太ももポーチは、仲良しのケーブル*5とおそろい。弾丸と愛とチリソースが詰まっているんじゃないでしょうか。
能力:ぶっぱなし、切り刻み、再生する
兵士としての戦闘能力は超一流で、様々な武器を使いこなします。
標準装備は拳銃と二本の日本刀*6。近接でのコンバットはお手の物、敵に囲まれても軽口を叩きながらバッタバッタとなぎ倒します。うっとうしい上に強いってのはタチが悪い。
プール氏の強さを支えるのがヒーリング・ファクター。
超強力な自己回復力により、肉体が損なわれてもすぐに再生します。
さらにサノス*7によって「死ねない」呪いをかけられたせいで、首をちょんぎられても細切れにされても死にません*8。うっとうしい上に不死身なんつったらまあタチが悪い。
それから第四の壁を超えちゃう能力。いわゆるメタ発言というやつです。
プール氏は公式に自分がコミックのキャラクターであるということを自覚をしています。それにまつわる発言をしては、周りのみんなに「またクレイジー野郎が変なこと言ってるよ」と流されるのが常。
アニメのアルティメット・スパイダーマンやディスクウォーズ・アベンジャーズ*9では番組を乗っ取ってやりたい放題やらかし、そのお陰で日本(特にネット民)での人気をかっさらっていきました。
発言だけならまだしも、ときに危害を加えようとしてくることも。
コミックの演出に振り回されるのに嫌気が差したプール氏が、コミックの登場人物と読者と作者をまとめて全員ぶち殺そうとするシリーズも出ています。
- 作者: カレン・バン,ダリバー・タラジッチ
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
※画像はAmazonへのリンク
おもしろいよ。そんで陽気に見えるプールの絶望が静かに伝わってきて味わい深い。
また、このメタ視点を持つおかげでデッドプールは「誰も知らないことを知っている」可能性もあります。劇中で世界が改変された場合、劇中の人物は皆以前のことを忘れるはずなのですが、メタな存在のデッドプールはバッチリ覚えている節があります*10。
後は黙っていられない口もある意味能力でしょうか。
誰も聞いていなくても気の利いた(?)ジョークを言わずにいられないらしいプール氏。
その内容の多くは映画やら音楽やらのアメリカのポップカルチャーネタなので、意味不明だったら調べてみましょう。知らなくても特に支障はないですが。
プールのインサイド・ヘッド
三大ルナティックヒーローの一人に数えられるプール氏*11。
彼は上述の通り、スーパーパワーを手に入れた経緯において頭がどうかしちゃいました*12。
この「どうかしちゃってる」状態を表現していたのがこの二つでした。
①黄色キャプションと白キャプションの存在
②プールヴィジョン(=幻覚・幻聴)
黄色キャプションと白キャプション
①は近年では見られなくなった設定です。
通常、キャラクターの内心の声は四角いキャプション(吹出し)で表現されるのですが、デッドプールの内心の声はなぜか黄色と白の二つの吹出しに表される。しかも黄色と白がお互いに会話していたりする。
このお陰でデッドプールはイカれちゃってる多重人格なんだと思われてきました*13。
私はこの黄色と白の掛け合いが大好きでしたが、説明しづらいからかいつの間にか自然消滅してしまいました。
ちゃんとコミック的に後付け説明もされてます。気になる方は邦訳されてるので読んで下さい。
- 作者: ジェリー・ダガン,ブライアン・ポゼーン,スコット・コブリッシュ他,高木亮
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2016/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
※画像はAmazonへのリンク
※表紙はキャラクター最多でギネス記録となったそうです。みんなに祝ってもらえてよかったね。
幻聴・幻覚
②もデッドプールのお約束。
彼には現実と違う世界がたびたび見えてしまいます。
映画でもヴァネッサと再会したとき、頭に棒が刺さっていたせいでかわいいユニコーンが見えちゃってましたが、あんな感じのことがコミックでも頻繁に起こります。
何の説明もなくいきなり変なコマが挟まったら、「あ、プールにはこれが見えてるのね」と理解してあげないといけません。
これらのせいでデッドプールの言動はいっそう端から見て訳の分からないものになっています。が、今となっては訳が分からないキャラクターとして確立しているので、「クレイジー」であるという理由付けはなくてもいいのかもしれませんね。
ヒーローなの? ヴィランなの?
傭兵のデッドプールは殺人も辞さないため、場合によってはヒーローよりヴィラン寄りの扱いをされることもあります。
殺人を辞さないヒーローと言えばパニッシャーことキャッスルおじさん*14。彼の場合は「正義感」に基づく殺しなのですが、プールの場合は「雇われたから」「気に入らないから」「ノリで」という理由なので怒られても仕方ありません。
ところがデッドプールは、人殺しの自分を変えたいと思っています。
X-Menやアベンジャーズ、スパイダーマンのようなヒーローに自分もなりたい。人を殺すんじゃなくて助けたい。自分が生きる価値が欲しい。
そんな思いを胸の内に抱えているようです。
今ではチームに加入したり自分でチームを結成したりして、軽いノリは変わらないまでも、まともなヒーローへの道になんとか向かっているように思われます。
いろいろあって妻と子供も登場したし、生きてる友達も死んでる友達もできたし、公私ともに真人間になりつつあるのかもしれません。
うなぎのぼりの人気
訳の分からないイロモノキャラとして登場したデッドプール。
ところがそのイロモノっぷりが他にない個性となり*15、今ではすっかり人気者となってしまいました。
映画はR指定のくせに大ヒット、コミックシリーズを何冊も抱え、ゲスト出演のオファーも絶えない。
日本での人気はそれ以上と言ってもいいかもしれません。邦訳されているコミックの半分はデッドプールのシリーズと言っても過言でないのではないでしょうか。
この人気はおそらく、テレ東で放送された日本アニメのディスクウォーズ・アベンジャーズが大きな戦犯じゃないかと思われます。
2話しか登場してないゲストキャラのくせにやりたい放題やったあげく、人気キャラ投票ヒーロー部門で1位を取るという無法状態でした。
そんな感じで、どんなメディアミックスでもデッドプールはかなり特別扱いされています。ゲームなら特殊ギミックを使ったり、台詞(原語でも翻訳でも)がわざわざデッドプール節になっていたり。
個性を押し出す扱いをされているお陰で興味を引きやすく、さらに新規ファンを増やすという再生産の仕組み。抜け目のない戦略です。
とはいえその人気っぷりもネタにできちゃうメタキャラなので、キャラクターの根本はぶれずに済んでいるようです。
でも、今デッドプールが素顔で町中歩いてても、たぶんみんなゲロ吐かずに喜んでくれるよね。
はた迷惑なチームアップ
デッドプールといえばナンパでなれなれしくてミーハー。
基本的に他のヒーローからは厄介者扱いされていますが、デッドプールは他のヒーロー達に絡んでいくのが嫌いではないようで、チームアップ話*16が豊富に出てきます。
今となっては人気者のプール氏なので、色んなキャラクターからのチームアップオファー対応に忙しくしているようです。
1話のミニシリーズで共演したのは、ウルヴァリン、ソー、アイアンフィスト、ロケット、アイアンマン、ハーキュリーズ、ゴーストライダー、キャプテン・ブリテン、シング、ギャラクタス、ウォッチャーなど。
単行本1冊分のシリーズで共演したのは、ホークアイ✕2、ガンビット、サノス、カーネイジ、デアデビルとパニッシャーなど。
シリーズとしてバディを組んだのが、ケーブル、そしてスパイダーマン。
味方でライバルのケーブル
元々ケーブルを狙う殺し屋として登場したデッドプール。
その後ケーブルと抱き合わせでシリーズを発足したところ、謎に相性が良く人気が上昇。
この「ケーブル&デッドプール」シリーズは、途中からほぼデッドプールのソロ誌と化します(ケーブルはX-MENの本筋で忙しくなってしまったため)。
ですが、破天荒だけど陰のあるデッドプールの魅力を知るにはこのシリーズは欠かせません。
邦訳は途中までしかされてないですが、ファンであれば原語版を読んでみてほしいです。
- 作者: ファビアン・ニシーザ,パトリック・ジルシャー,小池顕久
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2017/04/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
根っからのヒーローであるケーブルと、人殺しもいとわない傭兵のデッドプール。
気が合わないようでいて、二人は意外と似た者同士でもあります*17。
というのも、二人とも正道からはちょっとズレてるからかもしれません。
荒廃した未来から来たケーブルは世界を平和にしたい強い信念があるものの、未来人である彼は視野を広く持ちすぎるところがあり、「現在をちょっと犠牲にしても未来で最終的に良くなればいい」と考えたりします。
現在に生きるX-MENや他のヒーローにしてみればたまったもんではありません。
一方のデッドプールは倫理観に欠け、誰彼構わず銃をぶっぱなしても平気な顔をしていまいた。他のヒーローと関わっていくことで「自分もヒーローになりたい」という心を抱くようになったものの、いまいち方法が分からずつい過激になってしまいます。
周囲から厄介者扱いされがちな二人が、二人にしか分からない微妙な信頼関係を築いていく様子はなんとも熱いものです。
憧れのスパイディ
ミーハーで善人好きのデッドプールはスパイディのファンを公言しています。
また赤いコスチュームと、おしゃべり好きでジョーク好きなノリだけは共通している二人。
そのせいなのかなんなのか、ファンの間ではスパイディプール*18が大人気。
あまりにも人気なので、とうとう公式でチームアップシリーズを始めてしまったのが「スパイダーマン/デッドプール」です。
- 作者: ジョー・ケリー,エド・マクギネス,高木亮
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2017/09/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
ヒーローに憧れるデッドプールはスパイディの聖人君子っぷりを尊敬しています。
スパイディの方は傭兵でおちゃらけたデッドプールになんか関わりあいになりたくありません。
よってプール氏がスパイディにちょっかいを出しまくるような構図が主になっています。
とはいえスパイディの方も、プールがただのちゃらんぽらんではなく、ちゃんとヒーローになろうとしている気持ちを感じ取って多少は歩み寄ってくれるのかどうか……。
ただいま続々と邦訳本出版中です。
短編集もあり、今のところ軽いノリの明るい話ばかりなので安心して読めるんじゃないでしょうか。
親友のウィーゼルとペットのボブ
ヒーローじゃないけど、デッドプールの相棒といえば忘れちゃいけない二人。
上述の「ケーブル&デッドプール」誌でケーブルが退場してからは、この二人が一番信頼(?)のおける仲間となりました。コレクション版を読み終わったので追記。
ウィーゼルはデッドプールの悪友であり、いわば「椅子の男」。
丸メガネのひょろっとした男で、非常に腕の立つメカニックです。
考え方はデッドプールとよく似て倫理観はあまりなく、金で雇われて悪党のために働いたり、悪の秘密結社ヒドラの構成員になって技術を盗んだり、かなり自由な男。
ボブはデッドプールの犬。またはマスコットキャラクター。
ヒドラの構成員(30代既婚)でしたが、デッドプールに人質としてさらわれ、それ以降なぜか行動をともにするように。
悪党の手下とは思えないほど素直で能天気でビビりのボブは、デッドプールのいじめっ子心を心地よく満たしてくれるようでした。ボブはボブでデッドプールにすっかり懐いて楽しそうにしてるし、シリーズのなごませ役をまっとうしてくれたといえます。
仕方ないけど面白い
癪なんですがデッドプールは面白いんです。
表面的にも面白いですし、クールでセクシーなヴィランらしさと、深い孤独を抱えて明るくふるまうヒーローらしさを併せ持っている。
本屋でマーベルの邦訳新刊を買ってるとデッドプール好きだと思われちゃうかもしれませんので、嫌な方はAmazonでこっそり買うといいでしょう。
今回の記事はここまで。
*1:両手の爪でガルルと戦うウルヴァリンに移植されたもののさらなる強化版。
*2:グリーンランタンでおなじみのイケメン俳優。
*3:かと思いきや素顔全開で平気で歩いてることもあるので、この設定は絶対ではなさそう。素顔を平気で見せるかどうかによって、プール氏の相手に対する信頼度を測れるという説もあります。
*4:フリルメイド服とか、X-Menのみんなの嫁フェニックスとか。
*5:目がぴかぴかのミスター救世主。別記事で紹介してます。
*6:ポップカルチャー好きのプール氏は日本文化も大好きなようです。お手入れしてるところ見たことないけど。
*7:映画アベンジャーズ・インフィニティウォーにも満を持して登場。強大な力を持つタイタン人の支配者。ケーブルとはそれほど関係ありません。
*8:のちに呪いを解いてもらって晴れて死ねるようになったみたいです。
*9:フューチャー・アベンジャーズの方では比較的大人しく番組演出に収まっていたようです。
*10:スパイダーマンの正体とか。
*11:私が勝手に言ってるだけです。後の二人はムーンナイトとセントリー。
*12:映画やアニメではこの「クレイジー」である設定は基本的に明言されません。私としては、クレイジーであることがデッドプールというキャラクターのコアであり魅力であると思っています。
*13:デッドプールの通常吹出しも黄色です。これもトチ狂っちゃってるからという理由で使われていたらしいですが、今は「デッドプールだから」というただのお約束になっているような。
*14:本名フランク・キャッスル。ニューヨークで活動する私刑執行人。家族をマフィアに殺されたことから復讐の鬼となり、悪党と見れば容赦なくぶっ殺す危険な男。キャプテン・アメリカのことは敬愛しておられる様子。
*15:アウトローなところも人気の秘密な気がします。カリスマ殺人鬼だって人気ありますもんね。
*16:クロスオーバー(=ヒーロー全体を巻き込んでストーリー展開するもの)ではないもの。
*17:ウエストポーチ好きだけじゃなく。
*18:英語では名前を組み合わせることでカップルを表現します。シクラーとデッドプールで「シクラープール」とか。
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